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血風

結局、メンディ大司教はガスティン侯爵を無事に逃げさせる選択をした。

逃げさせるゆうたところで、しっかり残党狩りはやっているわけで……




「お前、ひっどい顔になってるなぁ」

そりゃ、ベルナールお兄様の前に騎乗してますからね。返り血バンバン浴びますわ、そんなもん。

もはやハンカチで拭くとかいうレベルじゃなく血でどろどろである。勘弁していただきたい。私は無言で顔を擦った。

これで残党狩り集団に出会ったのが2回目である。武力100って5人くらいだったら余裕な計算みたい。

「でも、ここまで勝負にならないとは思いませんでした」

「お前……俺をバカにしているのか?」

ベルナールお兄様はむきゃっと腕の筋肉を誇示してみせる。きれてる。肩にちっちゃい攻城兵器のっけてんのかーい?

そっちじゃない。ベルナールお兄様イズ最強。そんなことわかってるわ。

「……ガスティン侯爵のほうです。あの方は国内でも屈指の知恵者だと思っていましたから」

「あー」

ベルナールお兄様は、おそらく言葉を選んでいたのだろう、しばらく考えた。

「……経験の少なさだろうな」

「けいけん、ですか」

ベルナールお兄様は説明が面倒くさそうに頭をかいてから、ゆっくり答える。

「ガスティン侯爵は、ここ10年にわたってずっと平和を享受してきた。2年前の亜人の侵攻のときもガスティン侯爵領には1人たりとも被害が出なかった。それはすごいことだとは思うけどな」

また襲ってきた残党狩りを右手で斬る。

私の顔面にびちゃっと。あぁ、また……

私の目からハイライトが消えていく。

「ガスティン侯爵は知恵者かもしれん。その妹も弟も指揮官として優秀なのかもしれん……だが、軍には経験がない。戦った経験が圧倒的に『ない』。文官の一族だからな、戦争を起こさないことを考えてきたから……もう一度言うけど、それはすごいことだとは思うけどな」

あっ……

私に向かって放たれた矢が……あっ、あっ!

身動きできない私の目の前で長巻を振るい、矢を落とすベルナールお兄様。矢もダメなのか。しかも私を守りながら。この人、どうやったら死ぬの?

「ペドレッティ家と他の二家は2年前の亜人の侵攻や、それ以外にもちょくちょく亜人の討伐をしている、軍としての経験がある」

また矢を払った、そのままの流れで今度は左側からやってきてた方をズンバラリ。

ずびゃっと私の左側が血で染まる。あっ、血が耳に入った。中耳炎になったらどうしよう。

「サヴィダン公爵は、あのあたりは海賊が出るからな。よく討伐軍を出している。メンディ大司教もそうだ。神聖騎士団は……お前にとっては意外かもしれんがかなり実戦経験は豊富だぞ」

なにかが目の前に飛んできたので思わず手を伸ばす。誰かの手が切り離されて飛んできていた。「ぴゃーっ」と短く悲鳴を上げて投げ捨てる。

これが本当のロケットパンチーってやかましいわ。

「シクス侯爵はこの国最大の武門だ。自分の領地が平和であっても各地に援軍を出している。もちろん2年前にも世話になった」

あぁ、40年前のことがあってもパスカル・シクスに対してお父様が好意的なのはそのへんのことがあったからかなぁ。

ベルナールお兄様は馬を自由自在に操り、斬り、殴り、踏み潰す。残党狩りさんたちかわいそう。あと私もかわいそう。怪我なんてしてないのに全身血みどろで……

「ガスティン侯爵家軍は兵力だけならかなりの規模だ。今日だって総動員ってわけじゃない。余力を残していたからな」

そうだ。ガスティン侯爵家軍が辺境仲良しクラブに攻め込むことがあったら5000の兵力が動員されると予想していた。予測を修正しなければならない。

「しかし、戦った経験のない兵力だ。だから、こうなった……ガスティン侯爵は撤退の必要などなかった。ポイズンジャイアントは、お前も見たようにとても弱い。死体に触れなければいい……後衛の軍でポイズンジャイアントを討ち取って、前衛はひたすら神聖騎士団相手をすればよかった」

「つまり撤退したガスティン侯爵は判断を誤ったということですか?」

私の質問にベルナールお兄様は首を振る。首を振りながら矢を切り払うのはやめてほしい。本当に人間やめてんなー。

「ガスティン侯爵は前進したかったはずだ。しかし兵達は後ろを塞がれたことに恐怖した。その恐怖を感じ取って、これでは戦えないと判断したのだと思う。あの判断は、素晴らしく早かった。その決断の早さはガスティン侯爵の武器になる」

ようやく残党狩りさんとのレクリエーションが終わり、ベルナールお兄様が馬を走らせる。


夜の帳が降りようとしている中、少し向こうに村の明かりが見えた。またコスプレの準備をしよう。




血を洗い流したい……

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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