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巨人

ちょうどそのころの話だと聞いた。


ユーリお兄様がアメリーお義姉様のお腹に耳を当てていたそうだ。

いや、その人、まだ妊娠してないです。っていうかアメリーお義姉様も幸せそうな顔してないでツッコんでほしい。あっ、アメリーお義姉様はツッコミじゃなくて突っ込まれる方だった! ……いや、今のはさすがに下品だった。忘れてほしい。

「あっ、今、蹴った」

お? なんだ? ナイマンキックくれてやろうか、このやろう。

なんなんだよ、この茶番は……


ユーリお兄様とアメリーお義姉様には茶番が続けられるくらい平和を享受していただきたい。本当に。心から。




さて、こっちである。ユーリお兄様とアメリーお義姉様の平和を分けていただきたい。


「ガスティン侯爵の弱点なのだろうな。俺は王都の学園にいたころにメンディの魔法を目にする機会があった。しかしガスティン侯爵は頭では知っていても、動いているのを見たことがなかったのだろう」

ベルナールお兄様が興味深そうに言う。

いやー、見ててもスケルトンをフリーフォールさせて崖に階段を作るってのはちょっと……想定外というか。

「お前が見たいと言ったのはそんな想定外のやつらの戦争だぞ」

……おっしゃる通り。私も少し甘く考えていたのかもしれないと思い知らされた。

「それに、ほら……」

ベルナールお兄様が指を差す。

ガスティン侯爵家軍は急激に動きはじめていた。そう、後ろに向かって。進撃速度だけなら軽装歩兵主体のガスティン侯爵家軍は重装歩兵主体の神聖騎士団に比べてかなり早い。

前方は神聖騎士団に塞がれてしまっている。

後方の巨人をなんとかしなければガスティン侯爵家軍は殲滅されるしかなかった。

ティボー・ガスティンは前進を諦め、後ろの巨人を打ち倒すことを選んだのだ。

「行動が早い。ティボー・ガスティンやるなぁ」

ベルナールお兄様が感心したように言う。

「でも巨人が3匹って、あれ、大丈夫なんですか?」

「撤退だけなら大丈夫だろう」

当たり前そうに言うベルナールお兄様の方を見る。

「……あぁ、お前は知らないんだな。あの巨人、実はすごい弱い」

そうなのぉ? ……と思った瞬間に3匹のうちの1匹が地響きを立てて倒れた。

……え、よっわ。ほんとによっわ。

しかし、それを見たベルナールお兄様は無言で自分と私の口を押さえる。

「むがっ?」

「あれはな、10人もいれば簡単に倒せる程度の巨人だ。しかしな……」

巨人が倒れた場所にばしゃあっと音を立てて、緑色の、粘り気のある、なにか不快な、液体のようなものが跳ね散った。

「あれは、ポイズンジャイアントだ。あの汁や飛沫に触れたら病にかかるぞ」

汁って言うな。

っていうか、あれ召喚したのってメンディなんよね? え、スケルトンといいポイズンジャイアントといい、禍々しすぎない? ジェルミ教大丈夫?

「むがむがむがががが、むがむがむががぁ」

「うん、そうだ」

……適当に答えるのやめて。

なんとか首を振って、ベルナールお兄様が口を押さえる状態から脱出する。

「……ベルナールお兄様、お詳しいですね」

「うん? あぁ、王都の学園時代にな」

学園時代有能だな。

「一発芸大会をな」

おい、聖職者。

「まぁ、ガスティン侯爵家軍はまず大丈夫だろう……今日のところはな」

ベルナールお兄様が戦場を見下ろす。巨人はすでに3匹とも倒れていた。ガスティン侯爵家軍は毒汁の中を撤退する。

神聖騎士団は深追いすることなく、それを見ていた。

「追わないんですね、神聖騎士団」

「そうだな。メンディ大司教としては追い払っていれば当面の勝利ということなのだろう」

メンディ大司教はいずれ国王の勢力から離脱するという考えはすでにこの時点で持っているのだろう。そのときに王軍から自分を守るものとしてガスティン侯爵を選んだのかもしれない。

「ガスティン侯爵家軍はほぼ毒にかかった。これでガスティン侯爵家の動きがしばらく止められるわけだ」

はぁー、なるほど。

「あのポイズンジャイアントってなにか対策はありますか?」

「今まではなかった。しかしお前の作った石鹸が対抗策になるかもしれんな」

あー、なるほどね。ポイズンジャイアントに石鹸。覚えておこう。


「ちなみにベルナールお兄様なら、この戦い、どうやってメンディ大司教に勝ちますか?」

「精鋭部隊を組織して、本陣に切り込みメンディ大司教を暗殺する」

……なかなかレベルの高いことを言われたわ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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