表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/240

渓谷

私達が戦場の近くに到着したのは、両軍がどこに布陣するんだろうというころだった。


「どこに布陣しますかね?」

「このあたりじゃないか?」


というわけでベルナールお兄様の予測に従ってやってきたのがムウィ渓谷という場所だった。

断崖絶壁に挟まれたメンディ大司教の神聖騎士団が8000人。対するティボー・ガスティンも8000人。

ティボー・ガスティンは妹セリーヌと弟リシャールを参陣させていて、まさに一家勢揃いといったところである。ちなみにセリーヌ・ガスティンは武力92と、ガスティン家最高値を誇っている。


人数的に互角といえる両軍はベルナールお兄様の予測通りムウィ渓谷で睨み合っていた。

戦場の予測もできるとか、この人、本当に軍事に関しては洒落にならないな。

「ん、なんだ?」

「……ベルナールお兄様を改めて尊敬していたところですよ」

視線を向けたら不思議そうな顔をされたのでごまかしておいた。

いや、少なくとも尊敬しているのは嘘じゃないのだけど。


近くに馬を隠し、村男と村娘のコスプレをして……でけぇな、この村男。

「ベルナールお兄様、大きすぎですよ……」

そういえば、この人、狂乱の夜に王都から脱出するときも「んー、でかい! 怪しい!」って言われてたね。また身長からばれちゃうのいやぁんだわ。

「お前だってでかいぞ」

……おっぱいを見て言うなや。

「そんなでかい村娘がいるか」

いるわ、普通に。お? なんだこのベルナールお兄様、やるか? おぉ?


やらなかった。

やる前に両軍が動きはじめた。

動かなかったらベルナールお兄様の命運はここまでだったので、ベルナールお兄様は運がよかったと思う。




渓谷の崖の上が森になっていたので、物陰に隠れて伏せながら観察日記をつける。

神聖騎士団は重装歩兵が中心。対するガスティン侯爵家軍は軽装歩兵と……あれは軽騎兵だ。


原作ゲーム、王冠の野望には傭兵を雇って戦場に参加させるシステムがある。

その中で一部地域を支配していないと雇えない特殊傭兵が存在し、費用が高いかわりに強いという特徴があった。

ペドレッティ家におけるシュヴァリエのピルムスがそれであり、ガスティン家の軽騎兵がそれだった。


軽騎兵は重装歩兵を近づけないように馬上で弓を放つが、ことごとく盾に阻まれ、あまり効果的ではないようだ。


戦場という場所はとにかく迫力がある。

迫力があるから数も間違えてしまう。

偵察にいって、迫力に呑まれて兵力を間違えてしまっては元も子もない。

だから私は軍旗の数を数えていた。

「……あれ?」

「どうした?」

首を捻って数え直す。

「……ガスティン侯爵家軍はおよそ7000人。8000という数字は多少盛っているのでしょう。理解ができる数字です」

「ふむ」

ベルナールお兄様が片眉を上げてドゥウェイン・ジョンソンみたいな顔をする。

「神聖騎士団は……5000人くらいしかいませんよ。盛るにしてはちょっと厳しいかと」

ならば、別働隊、だろうか……

不意にベルナールお兄様が上を見上げる……あっ、この表情、見たことある!


「軍の臭いだ」

で、出たー! ベルナールお兄様の気持ち悪いやつー!


ベルナールお兄様はきょろきょろと対岸になっている断崖絶壁を見回す。

「あそこだ!」

ベルナールお兄様が視線を止めた場所。

そこはガスティン軍の後方の直上にあたる崖の上だった。




そこに現れたのは、骨だった。いわゆるスケルトンと呼ばれるファンタジーもののロールプレイングゲームの常連雑魚モンスターだ。それが崖の上に現れはじめる。100……200……まだ増えていく。え、ちょっと待って。多いぞ、これ。

「ちっ」

ベルナールお兄様が舌打ちをする。

私がベルナールお兄様を見ると、苦々しそうな顔でスケルトンを睨みつけていた。

ガスティン軍もスケルトンの存在に気づき、後方が慌ただしく動きはじめている。

スケルトンはなんの感情も見せず、ただ、崖を飛び降りはじめ……飛び降り……飛び……えっ、本当に多い! なにこれ!

「覚えておけ。メンディ大司教は魔法使いとして有名だが……一番得意としているのは召喚魔法だ」

召喚魔法!? え、それでスケルトンを……

スケルトンは飛び降り続け、崖に骨の階段が作られた。

あいつ、聖職者だろ!? なんだこの禍々しい状況!?


仕上げとばかりに崖の上に姿を見せたのは身長5メートルほどの巨人が3体。




前方には神聖騎士団。

後方には巨人。


ガスティン侯爵家軍は渓谷に閉じ込められた。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ