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焦燥

パスカル・シクスはマリュー平原で王軍を打ち破った。

これは快挙である。

暴虐の王を打ち倒すことがこの戦乱に終止符を打つ状況と思われていたからだ。


三国志で董卓が死んでも戦乱は終わってない? それを望んでるのはティボー・ガスティンとサンディ・アンツくらいだろう。


そこからも乱世が続くにしろ、終わるにしろ、まずは王を打ち倒して、王冠の中のドラゴンを治めることが大事だった。


もう一度言うがパスカル・シクスは王軍を打ち破った。

王を打ち倒せる英雄の器であることを実力で示した。




だから、おもしろくないのはティボー・ガスティンである。

ガスティン侯爵家はまだ軍を出していなかった。

ガスティン侯爵家が王と戦うためには港町をとるか、シクス侯爵家領を切り取って王家直轄領への道を開くか、のどちらかだ。

港町ならすぐ南にある。王家の勢力下でジェルミ教の総本山であるアジャクだ。ここを攻めとることができれば海軍を編成して王都に進軍することができる。

ティボー・ガスティンはずっとアジャクを攻めとることに集中していたはずだ。軍備を整え、なるべく早く出陣することを考えていたのだと思う。軍こそ動かしてはいないが、裏では暗闘もしていたかもしれない。

そして、恐らくはペドレッティ伯爵家が助力していたら、もっと早くに進軍することができていただろう。


しかし、先に動いたのは王家であり、シクス家はそれを迎撃することに成功した。


ティボー・ガスティンは焦っているはずだ。

自分が先に進撃するはずだったと思っているはずだ。




だから、ガスティン家が兵をあげるのは、彼のプラン通りではなく、恐らくはシクス家が勝ってしまったことから来るものなのだと思う。

これ、勝てるのかなぁ。




「ベルナールお兄様、お願いがあります」

「ん?」

ベルナールお兄様は石鹸で手をぶくぶくにしながら顔だけこっちを見た。いや、手洗いしてるのは大事だけど。

「ガスティン侯爵のアジャク攻めを間近で見たいです」


この世界には観戦武官なんて制度はない。

あったら申し込んで逐一観察したいところだけど、まぁ、ないものねだりしても仕方がない。

だから戦況が見たいとなったら魔法の力に頼るか、実際に現地に行くかのどちらかしかなかった。魔法に関しては上空から俯瞰するような魔法があるらしいけど、リアルタイムではなく、半日ほど遅れての状況になるらしい。その上、そもそもかなりの魔力がないと扱えない魔法らしくて、うちでは使える人はいないそうだ。

まぁ、この魔法が使えてたらマリュー平原のときのベルナールお兄様を観察できていただろう……多分、そしたらもっと心配してたかもしれないが。

だから、私としては変装でもなんでもして、戦場近くに潜り込んで観察するくらいしか手段がなかった。


「ふぅむ、見にいってみるか?」

「ヤッター」

すげぇ簡単に言われたわ。言ってみるもんだなぁ。


そういえばベルナールお兄様はマリュー平原から帰ってきたばかりなのに酷使して申し訳ないなぁ……


「今回は危険なことはないのですよね?」

「いやー、大丈夫でしょ。お土産はワインでいいからね」

アメリーお義姉様は心配していたが、ユーリお兄様はリラックスしすぎだろう。いや、そこまで危険があるようなことはしないつもりだけど。

今回の侵入はベルナールお兄様と私の2人だけだ。

2人で騎馬で近郊までいって、そこで村人のコスプレをして観察日記をつけていくプランである。

なにかあったら、武力100パンチで切り抜ければいい。


本当はユーリお兄様も連れていって遠話の魔法で連絡を取り合うのがいいのだけど、新婚さんを引き離すのはどうよ、というところと、そもそもユーリお兄様、村人のコスプレをしても、多分悪目立ちするからなぁ……


私はベルナールお兄様の馬に一緒に乗せてもらいながら家族の方に手を振った。

「じゃあ、いってきまーす!」

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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