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戦場

早朝、両軍が動きはじめていた。

黎明作戦というやつだろう。夕方は「黄昏時」と呼ばれる。これは「誰ぞ彼時」であり、隣にいる人物が誰かすらわからない、一般的に一番見えづらい時間と言われていた。

それと同時に夜明け前を「かわたれどき(彼は誰時)」と呼び、同じくらい人物確認がしにくい……つまり奇襲のチャンスとされていた。


ゆうて、両軍がほぼ同時に動き出したら奇襲もなんもないわけだけど。


それに昨日からの雨による悪天候はただでさえ戦場の視界を悪くしていたから、もう黎明とか、そういう話でもなかったんだけど。


「はじまったようだな……」

視界の悪い中、ピノー将軍は戦場の気配に耳をすませた。

王軍は中軍に最精鋭部隊である黒騎兵を配置して、クルビス将軍の指揮で一気にシクス侯爵軍の中央を突破し蹂躙する作戦を取っていた。

黒騎兵が突破したあと、傷口をどんどん広げるために兵を送り込むのが左翼に配置されたピノー将軍の役割であった。

シクス侯爵が中央に配置していたのは、ニコラ・シクス……侯爵の弟だったか。クルビス将軍のお手並み拝見といこうじゃないか。

クルビス将軍が作戦失敗で失脚するのなら、その分、俺が成り上がるチャンスも増えるだろう……

そんなことを考えながら、口を開く。

「そろそろ前進をはじめるか……ん?」

クルビス将軍は不意に顔を上げた。騎馬の足音が近くから聞こえたからだ。

「伝令ー! 伝令ーっ!」

騎馬がトップスピードで陣に駆け寄ってくる。確かに伝令旗も背負っている。寒いのかマフラーで口元まで覆っていた。

なんだ、早く動くようにとクルビス将軍の催促か? 貸しを作るのも悪くはないが。

「どうしたぁ!?」

叫ぶと伝令は少しスピードを落としてこちらへ向かってくる。

「一大事です!」

ん? なんだ?

「ピノー将軍、討ち死!」

えっ……?




……と、ピノー将軍が呆けた顔をしたときにはすでに彼の首と胴が離れ離れになっていた。

「しょ、しょ、しょ、しょ、将軍っ!?」

状況が理解できていない参謀の脳天に一撃。マフラーを外してから、寄ってくる兵に一撃。腕を振り回して後ろの兵に一撃。

「鍛錬がなっておらんな」


不快そうにびしょ濡れのマフラーを捨て、返り血に染まりながらそう呟くのが、ご存知、ベルナール・ペドレッティお兄様だった。




王軍の左翼は混乱に陥り、崩壊するように戦線が崩れた。

あとは、もう、殲滅するだけだけの簡単なお仕事だった。




「田舎者は戦略を理解できんと見える。我らの隊が先陣であったにも関わらず勝手な真似をして敵陣に討ち入るとは、それほどまでに武勲がほしかったのか?」

そんなベルナールお兄様はすげぇこと嫌味を言われていた。言っていたのはパスカル・シクスの弟であり、中軍で王軍の最精鋭部隊を押さえつけたニコラである。

「求めなくとも武勲はついてくるものだ。ほしがれば遠ざかるぞ」

お兄様の言葉にニコラの額に青筋が浮く。

「俺の言葉が理解できんようだな! 貴様はスタンドプレーに走って戦略を無視した戦犯に過ぎん! そのようなものは軍功として認められん!」

「戦は水物だ。動くべきときに動くべき人間が動かねばならん。そもそも作戦とは勝つために立てるものだ。作戦にこだわって時期を逃しては本末転倒だろう……貴殿も敵陣に討ち入ってクルビス将軍の首をとってくればよかったではないか」

……ごめんね。うちの武力100が無茶なことを言ってごめんね。

ひくっと唇を震わせてから、またベルナールお兄様に怒鳴ろうとしたニコラにパスカル・シクスが口を開く。

「もうやめよ。ベルナール殿に自由を与えたのはこの俺だ。それとも俺を弾劾するか?」

パスカル・シクスを睨み付けていたニコラは、やがて立ち上がると荒々しい足音を響かせて退出していった。

パスカル・シクスはため息をついた。


ニコラ・シクスは原作ゲーム、王冠の野望のキーパーソンの1人である。


シクス侯爵家やガスティン侯爵家が勢力を伸ばし、その分、王家がじょじょに力をすり減らすシナリオ3で、突然シクス侯爵家から王家に裏切ったからだ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

ピノー将軍:ブライアン・クリスタンテ

ニコラ・シクス:ガエターノ・カストロヴィッリ

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