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躍動

用意したのは長巻50本。

ベルナールお兄様の使ってるやつは飾りとかもしっかり入ってるけど、この50本は「遠くから見たらちょっと、どうかなぁ」というくらいのもの。えぇんよ、遠くから見てちょっとだけびびってくれれば。

この世界では曲刀自体が珍しいらしいので、みんなには使い慣れてほしいところである。


私達、ペドレッティ家にそれなりにゆったりとした、贅沢な時間が流れる中、国はどんどんと戦乱の色を濃くしていった。

南方の海賊、サンディ・アンツが王の勢力下となり、南方の諸侯とぶつかり合ったらしい。サンディ・アンツは原作ゲームの王冠の野望の中でシナリオごとに勢力を変えて節操なく生き残ってるタイプなので然もありなんといったところ。

ただし、海軍力はかなり高いものがあるので、王の勢力下のままでいられるとアジャクを海上から支援されまくって、ガスティン侯爵家のアジャク攻略が難しくなるだろう。

ガスティン侯爵家にはアジャクを攻略してもらった方が私達の平和のためになるのだけどなぁ……

王は現時点でも各地に侵略し、ロッド・サヴィダン……サヴィダン鉄壁公がついに敗れた。

敗れたといっても局地戦であり、サヴィダン公爵もちゃんと生き延びているし、王軍も追撃できるほどの余力はなく、ほぼ痛み分けに近い形だったようだが……それでも、今まで王軍の数の暴力に耐えていたサヴィダン公爵が敗れたことはそれなりに驚きをもって全国を駆け回るニュースだった。


それから季節が流れ、秋になって、王軍が10000の兵力で本格的にシクス侯爵領についに攻め込んだというニュースが飛び込んできた。


「……」

ある昼の、家族そろっての食事、アメリーお義姉様はかわいそうなほど真っ青になっていた。

そりゃそうだ。アメリーお義姉様の実家はシクス侯爵の臣下。もしかしたらなにかあるかもしれない。もちろん私達にとっても……

パスカル・シクスからの連絡はきていた。


「ペドレッティ家は頼もしい盟友である。10人でいいから援軍を遣してほしい」


10人の部隊というのは、つまり軍旗だけを持って参陣するということ。

実際に戦う必要はなく、シクス侯爵の勢力であることを国内に見せつけてほしいという要請だった。

これにベルナールお兄様は応え、ベルナールお兄様自ら50人の部隊を率いて参陣していた。あとアドリアンも連れていってもらった。アドリアンは兵站担当にくっついて、お勉強だけをしてもらうつもりだった。

「10人でいい」というこれは、ペドレッティ伯爵家がシクス侯爵家の勢力であることを国内にアピールするためのものだ。

同様の要請は辺境仲良しクラブの他の二家にも届いており、それぞれ十数人を派遣しているらしい。

……シクス侯爵家の軍は6000人。援軍や傭兵を含めても8000人に届くかどうかというところ。

王軍に比べて小勢だが、パスカル・シクスは「10人でいい」などと、援軍なしで勝つつもりでいるし……ペドレッティ家と辺境仲良しクラブを味方にしていると国内にアピールするということはつまり、戦後のことをある程度考えているといえた。

もしかしたらパスカル・シクスって私が思ってた以上にすごいのかもしれない。

でも……

「アメリーお義姉様……」

「大丈夫です。私はもう、ヤヒア家の人間ではなく、ペドレッティ家の人間ですから。兄よりも今はベルナール様のご無事を心配しております」

パスカル・シクスがいかに戦上手であり、ベルナールお兄様がいかに軍神と呼ばれていようが、王軍より少数であることは間違いない。私達には心配することしかできなかった。

お父様もユーリお兄様も口数が減っている。


ベルナールお兄様から昨日の夜、フレデリックを通して遠話の魔法で連絡が届いていた。

マリュー平原という場所で今、両軍が睨み合っている。明日の早朝にでも開戦しそうだ、と。


今は昼、を少し過ぎたくらい、

もうすでに両軍はぶつかり合っているだろう。

まだ戦っているのだろうか。それとも……


もちろんベルナールお兄様の強さは信じているけど……私には胸騒ぎがしていた。


「失礼いたします。遠話の魔法によりマリュー平原の戦いが終わったとの連絡がございました」

シャルルの言葉に、家族全員が顔を上げる。

朝にはじまって、もう終わったのか……


「シクス侯爵は、王軍を完全に制圧なさいました。王軍主将のクルビス将軍こそ戦場を脱出したようではございますが、捕虜多数とのことでございます。そして、ベルナール様は単騎にて王軍のピノー将軍を討ち取られる武勲をあげられました……もちろんお怪我もなくご無事とのことでございます」

シャルルは平静を装ってはいたが、確実に感情を昂らせていた。

圧倒的かよ、ベルナールお兄様。


私は安堵の息を吐きながら椅子に深くもたれかかる。そして思った。


私の「胸騒ぎ」役に立たねーな。




本当によかった。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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