其々
原作ゲーム、王冠の野望におけるお父様の政治力は71だ。
国内トップレベルに高いわけではないが十分に高い数値である。
しかし、忙しい人なので一つの仕事に関わっていられない。
アメリーお義姉様はゲームに登場する人ではないが、その話を聞く限り政治力70から80はあると思われた。
私は自分の政治力はわからないけど、王都の学園を卒業していないので、少なくとも学園を卒業した中ではペドレッティ家最高政治力である。
「え、学園をこの伯爵領に作るのですか?」
アメリーお義姉様は私がこの地に学園を作ることを話すと、一番話に食いついてくれた。
「そうなんですけど、お父様の人脈にも限りがありますし、私は結局卒業できていない身ですし、教授の招聘がなかなか進まず、このままだとどうしようかと思っていたんです……」
実際のところ「疎開」の名目で誘っても、なかなかといったところで、教授の招聘はなかなか進んでいなかった。
「それだったら手伝えるかもしれません……いいえ、手伝わせてください!」
手を握られた。
アメリーお義姉様が数通の書簡を出すことで、何名かの王都の学園の教授を招聘することに成功した。
ユーリお兄様はもちろん幸せになってほしいのだが、それ以上にこのお義姉様が有能すぎてやばい。才女やべぇ。こういう人を本物の才女と呼ぶんよ。
アメリーお義姉様の実家のヤヒア子爵家とシクス侯爵家の名前はフル活用したらしいが、状況を使いこなせるのって才能だしね。
とりあえず来春から学園の開校ができそうである。私も入学していいかなぁ、これ。今のままだと王都の学園中退が最終学歴になっちゃうし。
ある日の昼下がり、私はぼーっとベルナールお兄様の訓練を見ていた。
「お前はやらないのか?」
アドリアン君に聞かれる。
「やるって……訓練ですか? 人には向き不向きがありますからね」
いや、前に訓練に参加させてもらったことはあるんだけど、ベルナールお兄様から「お前、ほんとに才能ないなぁ……」とか、感心されたんだ。いや、感心じゃない。
剣とか槍とかも一通りやった上で、弓もやってみた。
弓。あれは地獄の武器だ。
引いたらおっぱいに当たる。すげー痛かった。「死ぬ! 殺せ!」って言いながらのたうちまわったわ、あんなもん。
「アドリアン様は体を動かされないのですか?」
私の言葉に彼は少し考える。
「俺は子供のころから戦うことを教えられてきた。でもお前にいろいろ教えてもらって、文字だけの場所でも戦いってあるんだなって、前線で体を張ることだけが戦じゃないんじゃないかって思いはじめてる。契約ってのも戦いなんだよな?」
彼もいろいろと思うところがあるらしい。
「兵站とかやってみます?」
誰か兵站担当はほしいと思ってたから、育てられるとなるとありがたい話だ。
「兵站って食料調達とかだろう?」
「なにを言ってるんですか。食料調達も『含め』ですよ。兵站というのは簡単にいえば『実際に戦う以外のすべてのお仕事』です。前線に砦を築くことになったら場所の確保や資材の調達をしなきゃいけません。食事だってお鍋が壊れたら直さないといけないでしょう? 壊れるのはお鍋だけじゃないですよね。武器だって鎧だって壊れます」
アドリアンはひくっと頬を引きつらせる。
「そ、それを全部やるのか?」
「まぁ、兵站については私は教えられませんから、誰かについて学んでもらうことになりますね」
彼は小さく「善処する」と言った。
さて、お兄様の使っている武器はちょっと特殊だ。
大きな曲刀……なのだが、それに長柄がついているのだ。両手持ちのポールウエポンである。
ちなみに前世の記憶で、私はこの武器は日本の長巻として知っていた。南北朝時代に開発された武器で野太刀を扱いやすくするために柄を長くしたのが起源とされている。
今はベルナールお兄様の象徴的な存在だ。
象徴……ふむ。
「ベルナールお兄様、その武器って使いやすいですか?」
私の言葉に、ベルナールお兄様は動きを止めて考える。
「俺は使いやすいとは思うが……慣れだろうな」
「じゃあ一目見ただけで『その武器を持ってるのはベルナールお兄様だー!』ってわかっちゃう武器を、部隊のみんなが持ってたら、相手は驚くでしょうか?」
ベルナールお兄様はにやっと笑って私の方を見た。
「おもしろそうだな。50本ほど用意してみるか」
蒼天航路の荀彧さんのパクリだけどねー!
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科