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才人

「はい、お土産」


そう、ユーリお兄様が持ち帰ったお土産は生ハムの原木だった。それが12本。多くない? いや、そもそもなんで生ハム? いや、幸せだよ、生ハムの原木のある家庭。

幸せだからいいのか、そうか。


お父様と私は先にペドレッティ伯爵領に帰還し、4日遅れてユーリお兄様と……んー、アメリーさん? ……現時点でどう呼べばいいか、距離感がわからない。2人が帰ってきた。

アメリーさんは小柄な、可愛い人だ。

私は17歳でそこまで大柄ってわけじゃない、平均的な身長だが、私よりもさらにちっちゃい。

緊張しているのか、私達に少し鋭い視線を向けている……いや、これ、私達にじゃなくて私にか? えっ、なんで?

「アメリー、さん? これから仲良くしていただけると嬉しいですわ?」

「はいっ、お願いしますっ!」

なんか口調が怒ってるもん。えっ、なんだろう……



「パスカル、困ったことがあったら助けてくれるってさ!」

ユーリお兄様の報告、以上。

「そうか、それはよかった」

ベルナールお兄様の感想、以上。

「……で?」

お父様と私が突っ込まざるを得ないじゃないか。

「それだけ?」

「うん」

……ユーリお兄様が満足そうだからいいんだけどさぁ。

「あのっ!」

ユーリお兄様からお父様にも雑に紹介されていたアメリーさんが声を上げる。

「僭越ながら私が条件をまとめさせてもらいましたっ!」

おー、すごい!

「ほう、そうかね」

お父様は優しい笑みを彼女に向ける。

「これです!」

そう言って、彼女は書類の束をお父様に渡した。

横から覗き込む。

「これは……アメリーさんが?」

お父様がめくる書類から目が離せない。

「……そうですけど!」

睨まれた。しばらく考える。


「お義姉様 、好きぃ」


私の言葉にアメリーお義姉様は真っ赤になってへたり込んだ。




シクス侯爵家との同盟についてまとめられた、その書類の文字はとても読みやすく、とてもわかりやすく、そして綺麗な文字だった。もしかしたら85年の歴史があって先生方も超一流の美文字を学んだのかもしれない。

これはユーリお兄様は惚れるわ、仕方がない。


ちなみにあとでアメリーお義姉様になぜ私にきつい態度だったか聞いたところ、ユーリお兄様に「うちの妹も才女なんだー」とか無神経に言われて対抗心がメラメラと燃えちゃってたらしい。私は才女じゃないし、私のことを話すよりもお嫁さんを気遣ってあげなさいな、新婚。

あとでアメリーお義姉様から謝罪された。

謝罪とかはいいから、仲良くしてほしいと思う。


あと、アメリーお義姉様は学園に通っていたころにユーリお兄様の詩集を読んでいたらしく、そのころからの熱烈なファンだったらしい。

ユーリお兄様はアメリーお義姉様の文字にベタ惚れだし、相思相愛じゃーん。


でもこんなアメリーお義姉様も原作ゲーム、王冠の野望に登場してないけど、明らかに政治力高そうな感じである。

護衛さんに聞いたところ、シクス侯爵家との同盟についてはユーリお兄様はいつも通りほぼなんの役にも立たず、アメリーお義姉様主導でまとめられたらしい……結婚したばかりなのに。

これは……最低でも政治力70代……もしかしたら80代。

そんな人が市井にいるのは油断できない……いや、「市井」ではないんだけど、原作に登場しないという意味で。もしかしたらゲームに登場していない中にすっげぇ人がバンバンいるのかもしれないとか……うーん、ありえる。


「ところで、アメリーお義姉様、少しお願いがあるのですが……」

「えっ、なにかしら?」

アメリーお義姉様は睨んでこなければとても可愛らしい人だ。

顔は整っているわ、髪は綺麗だわ、完璧超人に見える。理知的だし、普段の会話からわかるくらいとても頭のいい、いい人なのである。

「私が文字を教えてる子がいるんですけど……」

「えぇ……」

アメリーお義姉様は首を傾げた。




「さて、アドリアン様、お喜びください」

「えっ、なんだ?」

私の言葉に明らかに警戒した顔のアドリアン。アドリアンにアメリーお義姉様を引き合わせたからだ。

「私に教わるというのも、ほら、正直なところストレスが溜まるでしょう? ですからこれからアメリーお義姉様にアドリアン様の勉強を見ていただこうと思いまして……」

アメリーお義姉様はにこにこと笑っている。

「ん、んん……お、お前は俺を教えると最初に言ったのだから最後まで責任を取ってお前が教えるべきだ」

しばらく考えてからアドリアンが言う。あれ、まさか拒絶されるとは思わなかった。えっ、私でいいの? ほんとに? ほんと?

「ジェルメーヌ様、ご本人がそう仰っているのだから仕方ありませんわね」

アメリーお義姉様がにこにこと笑う。

いや、私でいいならいいけどさぁ……いいの? 本人はなぜか少し顔を赤くしていた。


あ、でも私が忙しいときは自習ね。それは今まで通り。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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