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詩想

大広間にはパスカル・シクス以外にもいっぱいいたそうだ。

……多分武将とか、シクス侯爵家の要人なんだよなぁ、それ。

誰がいたとか知りたい情報なんだよなぁ……


しかしユーリお兄様はそんなことは覚えていない。ユーリお兄様だからね。


「きゃーっ」

ユーリお兄様が広間を見渡すと女性達の黄色い声が聞こえた。

よくわからないが、とりあえずユーリお兄様は手を振っておいたそうだ。まぁ、ユーリお兄様、基本的にイケメンだしね。

「ははは、相変わらず女にモテるな」

パスカル・シクスは楽しそうだ。

「家柄も伯爵家と悪くなく、俺ほどじゃないにしろ顔もいい。そしてなにより歴史に名前を残す大詩人だ。女にモテないわけがなかろうよ」

あっ、そんなもんかー。あと、お前よりユーリお兄様のほうがイケメンだからな。覚えとけ、パスカル・シクス。

「実家の方じゃあんまりモテなかったけどなぁ」

「戦争が終わったらこっちに住め。お前だったら女に困ることはなかろうよ」

ユーリお兄様ってすごい人だったのかもしれない。

「盟約の話は明日だ。今日は宴だ!」

でも、ユーリお兄様が大事に扱われるのは妹としても嬉しい。




ユーリお兄様もパスカル・シクスもザルのように……いや、もう筒のように飲んでいた。

「こいつは俺の弟のなんとかでー、なんとかかんとかがすごいやつなんだ」

「おっほー」

おっほーじゃねぇよ、ユーリお兄様。大事なところだから覚えとけよ。

「ねぇねぇ、ユーリ様ぁ! 私にも詩を贈ってくださいませんかぁ?」

何人かの女性にこれを言われて即興で詩を作ったらしい。こういうところはさすがだよねぇ。っていうか、もってもてじゃぁん。

ユーリお兄様は現状、30過ぎても独身なんだけど、これ、都会生まれだったら大変なことになってたんだろうなぁ。




夜が更けても飲み続ける中でユーリお兄様はメニューが気になったらしい。

「この……今日の宴のメニューを書いたのは女性だよね?」

「お前、よくわかるなぁ、そんなの……ジャンの妹が書いたんだ。名前はアメリーっていう。綺麗な字だろう?」

ジャン……ジャン・ヤヒア子爵。パスカル・シクスの腹心中の腹心で、魔力以外の全能力値が80を超えている完璧超人。よくゲームで捕虜にしてたわ。その節はお世話になりました。

なお、親子2代にわたってのシクス家の重臣である。父親にあたるグレッグ・ヤヒアさんはあの舞踏会の日にお亡くなりになりました。

パスカル・シクスはそう言いながらユーリお兄様の方を見て「ぴぁ」と言った。なんだその鳴き声。


ユーリお兄様は滝のような涙を流していた。


「あぁ……美しい文字だ。俺がここにくるのを心から歓迎してくれている。喜びに満ち溢れている……俺は、今、この文字に恋に落ちた」

パスカル・シクスは「マジかー」って顔で見ていた。そんな顔でユーリお兄様を見るな! 私もそう思うけど!

「んっ……そうだな。アメリーは縁談のないまま20を超えてしまった。いや、性格に難があるとかじゃないぞ。頭がよすぎて男の方が引いてしまうんだ。お前とは多少歳の差はあるが……なぁ?」

パスカル・シクスは横に座っていた男に声をかける。

「……もし、ユーリ様が妹をもらってくださるのであれば、否はありません」

男っていうか、明らかにジャン・ヤヒア子爵だった。

「妹は男達を議論で言い負かすほど頭の回転が速いのですが、いかんせんそれがゆえに敬遠されておりました。本人もそれを気にして色気もなく……」

「色気がないとはなんだ!」

ユーリお兄様は立ち上がって、メニューを指差した。

「この、文字から溢れ出る、隠すことのできない気品! その中にもいたずら心を感じさせる色気! 気高く美しい、まったく無駄のないこれらの文字から、俺はこの人の内面の美しさを心から讃えることができる! ……俺は確信した。この人に出逢うために、俺はずっと独身だったのだと」

ヤヒア子爵は驚いたような顔でユーリお兄様を見つめたあと、後ろを向いた。

「……だそうだよ」

ヤヒア子爵が見る先に、黒髪の小柄な女性が耳まで真っ赤にしてもじもじとしながら立っていた。




本人、すぐ側にいたんかーい。こんだけ褒められたら恥ずかしいよね、確かに。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

ジャン・ヤヒア:フェデリコ・キエーザ

グレッグ・ヤヒア:エンリコ・キエーザ

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― 新着の感想 ―
[一言] 仕方ないのはわかりますが主人公の影の薄さがw
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