佳人
私達がペラン子爵領ユルグに到着して、さらに5日後にアルテレサ伯爵……フランク・アルテレサ伯爵がユルグに到着した。
その間、ずっとイワシ食べてた。
アルテレサ伯爵は朗らかな笑みを浮かべている人である。
お父様と、それからペラン子爵とそれぞれ抱擁を交わしている。なんだこのあつぅい友情。辺境仲良しクラブはこの戦乱の時代をなんとか生き延びさせないといけないなぁ。
でも、なんだろう……
ちょっと気になることがあった。
私達の伯爵領とユルグとの距離は、アルテレサ伯爵領とそれとの間よりも遠い。
遠いはずなのにアルテレサ伯爵はなぜここまで到着に時間がかかったのか。
アルテレサ伯爵は自分の息子を伴っていた。お父さんに似てとても柔和な表情のイケメンですこと。この世はイケメンばっかりだ! 万歳だよ、万歳!
「ジェルメーヌと申します」
「ロニーです。あなたとは学園ではちょうど僕が卒業してから入学されたから、こうしてお話しすることもできませんでしたが、お会いできて嬉しいです」
なんだよ、このイケメン攻略対象かー?
まぁ、王冠の野望は戦略シミュレーションゲームなので攻略対象なんてものはないんだが。
さっそく会議になったのだが……
「ティボー・ガスティンは当家に仕えるカンデラ将軍を金にものを言わせて引き抜いていきおった」
アルテレサ伯爵は眉間にシワを寄せて報告した。
……なるほどね。その後始末でユルグ到着が遅れたのか。
それは仕方ない。そして、ガスティン家の動きが思っていたよりも早い。
カンデラ将軍、彼は王冠の野望に登場する武将である。
アルテレサ伯爵は登場しないのに彼だけは登場しているのだ。
北方から侵略してくる亜人退治のエキスパートとして名高い人物だったらしく、その能力値も統率力82、武力76とトップクラスでこそないものの非常に使いやすいものとなっていた。
アルテレサ伯爵領はゲーム内では空白地だったのでカンデラ将軍は在野の武将として、あの土地を捜索したら登場する人物だったのだが……
「そんな重要人物がいなくなってしまって、防衛は大丈夫なのですか?」
小声でロニーに尋ねてみる。
「カンデラ将軍は兵達を鍛えに鍛えてから出て行ってくれましたから、すぐに影響が出ることはないはずです。でも彼は亜人対策の専門家でした。今、亜人の襲来があったら……少し厳しいかもしれません。後任のココ将軍は才能がある人ではありますが、経験という意味でカンデラ将軍に劣ります」
ココ将軍も王冠の野望に登場していて武力は73と、カンデラ将軍とほぼ同水準だが、統率力41なので、ちょっと厳しい……
亜人の防衛でいっぱいいっぱいになるようだったら王家との戦いに出陣はもっと難しいだろうなぁ。
「父も僕も、武将としてはカンデラ将軍には及びません。人材の大切さを思い知りました」
やっぱり教育だなー、大事なのは。
ペドレッティ伯爵家も武将3人……私を含めても4人のこじんまりとした、アットホームな家なのでこの件でアルテレサ伯爵に支援は難しそうだ。
今後ということであればアルテレサ家の武将をペドレッティ家の学園で教育することもできるだろうが、それにはどうしても時間がかかる。
「ペドレッティ伯爵もペラン子爵もシクス侯爵につくと伺いました。当家もそれに歩調を合わせたいと考えております……我が家の事情をよく知っているはずのガスティン侯に我が腹心を引き抜かれたとなれば、それにつくなどという気も失せますな」
ガスティン侯爵は1人の歴戦の勇将と引き換えに、アルテレサ伯をシクス家側に追いやった。
人材を取るか、勢力を取るか……
ティボー・ガスティンは難しい選択肢であったとは思う。
これからの一番の理想形はカンデラ将軍が大活躍して、ティボー・ガスティンがメンディ大司教の領地であるアジャク攻略に成功。ガスティン家が海を手に入れること。
そうなればガスティン家の目が辺境仲良しクラブのほうを向くことなく、北の大地は平和なまま戦後を迎えることができるだろう。
でも私は、きっとそうならないことも理解していた。
まぁ、それはそれとして甲相駿三国同盟っぽい感じだ。ユルグは善得寺だったか。
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科
フランク・アルテレサ:アントニオ・ディ・ナターレ
カンデラ将軍:ヴィンツェンツォ・イアクインタ
ココ将軍:ケビン・ラザーニャ