盟友
「ようこそいらっしゃいました、聖女猊下」
「ちっすちっすー! メンディちゃんもバイヨの家が助けれるってテンションあげみざわだったよぉ」
伯爵の歓迎を受けたが、同時に伯爵は聖女の洗礼を受け「あげみ、ざわ?」となっていた。
屋敷までの道のりは非常に遠く……なんというか防衛のためのギミックが盛りだくさんでセリーヌお義姉様は興奮していた。セリーヌお義姉様はもしかしたら異常性壁なのかもしれないけど、それでも私はセリーヌお義姉様のこと、大好きです。
そしてようやく到着した屋敷の本館で出迎えてくれたのが当代のバイヨ伯爵であるアモス・バイヨ伯爵だった。
ジュニオールさんのお父さんだからそれほど若くはない。40歳くらいだろうか。
小説では取り立てて有能な人として描かれているわけではない。
しかしサンディ・アンツと野戦で戦い、完膚なきまでに打ちのめされて撤退していた最中も、領民に救われていた。
きっと領民にとってはいい領主なのだろう。
私はその意味でお父様と重ね合わせてシンパシーを感じていた。
アモスさんは聖女、クレールさんと紹介されたあと、セリーヌお義姉様と私が名乗ると「おや?」という顔をした。
「ペドレッティ……北方のペドレッティ伯爵家の関係者の方ですか」
関係者? ……うーん。まぁ、関係者といえましょうね。
「父上、私の学園で後輩だった現ペドレッティ伯爵のご夫人と妹様です」
ジュニオールさんがフォローしてくれた。
「……お前の後輩? ペドレッティ伯爵はそのような若さなのか? 私よりも年上と聞いていたが」
「あぁ、最近代替わりをいたしましてー」
どうやらアモスさんが持っている情報は若干古いようだ。
「ご夫人……妹……聞いてないな」などとぶつぶつ呟いている。
「どなたかに当家の話を聞いておられたのですか?」
セリーヌお義姉様の問いかけにアモスさんははっと顔を上げた。
「え、えぇ……私の曽祖父は博識だった人でして、それぞれの勢力の人物についても詳しい人でした。ペドレッティ伯爵家の軍神殿についてもよく話を聞いておりましたから」
曽祖父……というと、この屋敷を設計したジュニオールさんの高祖父さんのことかな。軍神のことを知っているということは相当最近まで生きていたのだなぁ……
まぁ、情報の古さについてはベルナールお兄様は学園に入る前から評判の指揮官だったらしいから、そのころからアップデートされていないのだろう。
私の存在は知らなくても当然だし、セリーヌお義姉様のことは「ガスティン侯爵家の戦乙女」と思われているのだろうから同一人物と認識されていないのだろう。
聖女とアモスさんの間に交渉はすぐに終わった。
バイヨ伯爵家は今後、教団の支援を受けることになる。実質的にシクス侯爵家の勢力が増えたといえる。
ある程度バイヨ伯爵家が持ち直すことができたら、サヴィダン鉄壁公と連携して、サンディ・アンツを挟撃することも可能かもしれない。
まぁ、小説内のバイヨ伯爵家は滅亡してしまうような家だったし、そこまで持ち直すまでは大変な時間がかかるだろうけど。
私達はそのまま宴席に招かれ、丁重にもてなされた。
「ジェルメーヌ様の業績はこの地にも伝わっておりました」
教団との盟約が無事に結ぶことができてほっとしたのか、ソフィアさんが少し酔ったように私に声をかけてきた。
「あら、お恥ずかしいですわ」
きつねさんだから頬を染められませんけど。
「学園を作って人を育成するなど、とても羨ましいです」
あぁ、学園が私の業績として伝わっているんなら、あれはアメリーお義姉様の協力あってこそだしなぁ……
そんな会話をしていると家宰が何事かをアモスさんに耳打ちし、アモスさんがこちらを見た。
「ジェルメーヌ嬢、申し訳ないが先々々代伯爵にあたる私の曽祖父があなたにお会いしたいということなのだが……」
先々々代……えっ? 例の高祖父?
どう考えても王国の平均年齢軽くブッチしてるけど、生きてんの?
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん