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領主

「ちっすちっすー! 聖女でーす!」

「えぇ……?」

はじめてうちに来たときもいきなりだったけど、聖女ってそういうのが伝統なの?

聖女って偉い人だし、先々の予定とか決まってるんじゃないの? それなのにうちにくるの、なんなの?


学園での執務を終えて家に帰宅したら聖女がいた。

意味がわからない。

護衛はエモン団長じゃなくて知らない人だった。ガッチガチに緊張してる様子だった。緊張するのはこっちだ。


「じぇ、ジェルメーヌ様、この方は……?」

一緒に帰ってきたジル少年がパリピの明るさに恐れ慄いて私の影に隠れてしまった。

「この人はただの聖女猊下です」

「ただの! ウケるー!」

ウケる要素あったか?

「聖女ってジェルミ教のですか……!」

そういえばジェルミ教以外の宗教ってあるのかどうか知らないなぁ。あったとしても聖女っているんだろうか。

「まぁ……悪い人ではありません」

「そうそう、あーしは悪い人じゃないからー!」

聖女はニコニコとジル少年を見つめる。

「ジル君だよね、ウヴェナー伯爵家の! ジェっちゃんの婚約者の!?」

「違うぞ?」

聖女情報違うぞ。

「えっ、ウヴェナー伯爵家の子じゃなかったの?」

「そっちは合ってます」

婚約者の弟さんな。さらに正確にいうと婚約者候補。まだ決まってませんでした。

「こっ、婚約者なんて、僕にはまだ早くてっ……!」

ジル少年が真っ赤になってしまった。

「……ジルさん、挨拶も終わりましたしもういいでしょう。お部屋に戻っておいてください。今日は美味しいシチューを作りますから」

基本的には料理長が料理をしているが、今日は不在なので、そういうときはいつも私がご飯の準備をしている。家族分だけだけど。

「えっ? あーしの分も作ってくれるぅ?」

うっせぇわ、聖女。




ジル少年は結局顔を赤くしたまま退室してしまった。

「猊下の冗談に怒ってましたよ。顔真っ赤でしたもの」

「……えっ、そーゆーんじゃないとおもーけど。ジェっちゃんって残念な人?」

誰が残念だよ、誰が。

「……で、シチューを食べにうちにきたわけでもないでしょう? どうかなさったんですか、猊下」

「はーい、聖女の神託シリーズ」

軽率にシリーズ化するな。

神託って、もっと大事なもので、荘厳な雰囲気とか必要なんじゃないの? ……いや、この聖女に荘厳な雰囲気は無理だったわ。

「実はさ、あーしらはこのあとノルカップ島に行く予定があんのよ。そこにジェっちゃんをつれていったらいいことがあるらしいよ」

「のるかっぷとう……」

それは遠いところまでご苦労様である……私も行かなきゃダメ? ほんとぉ?


ノルカップ島はこの国の南端。海賊サンディ・アンツが根城にしている島である。

ペドレッティ伯爵家は王国の北端なので、ここから移動すると大変な距離だ。

教団領からだったら距離は縮まるとはいえ知れたものである。遠距離には変わりない。

移動は……船か。神聖騎士団の海軍力は高いから、海上ルートの移動なら聖女の身の安全はほぼ確保できるのだろう。

「え、なんです? 人形使いさんの里帰りとかですか?」

「なんでよ」

それくらいしか思い浮かばなかったが、聖女はケラケラ笑った。

「バイヨ伯爵家って知ってる?」

「あっ!」

思わず声を上げた。


バイヨ伯爵家は原作ゲーム、王冠の野望には登場しない家である。

しかし、ある意味でプレイヤーにはとても人気のある家だった。

なぜなら設定資料集の中に「現在は海賊サンディ・アンツが支配するノルカップ島の本来の領主であり、海賊に抵抗しながら最終的には滅ぼされてしまうバイヨ伯爵家」を主人公とした小説が掲載されていたからだ。


バイヨ伯爵家の嫡男は年齢がベルナールお兄様の1つ上であり、学園での交流もあったそうだ。

お互い、南北と距離は離れているが、同じように「辺境」とか「田舎者」とかと呼ばれシンパシーを感じていたのかもしれない。


そして小説の後書きでこのようなことが書いてあった。


「最後までバイヨ伯爵家に尽くした忠臣ソフィアはゲーム内には登場しない上に生かすところもなかったものの実質政治力97……うーん、やっぱ99!」と。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん

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― 新着の感想 ―
[一言] このノリで聖女に来訪されてもみんな困るだろうがそのうち聖女様特有の礼儀とか勘違いされて慣れて行くのです
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