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沈思

ガスティン家の要請はすでに断った。


……断ってしまった。


お父様は理解して笑ってくれたが、これ、まずったかなぁー。




この国の地図を見る。

ガスティン侯爵の考えは明らかだった。

国王派の大司教を打ち倒す……それだけじゃない。


ガスティン侯爵家領は王家直轄地と隣接していない。

王家直轄地と隣接し、直接戦端を開くことができるのはシクス侯爵家とサヴィダン公爵家だ。


次代の権力者レースを考えると、これはガスティン侯爵にとって非常にまずい状態である。

言い方は悪いが「血を流さずにレースに参加」などと言われてしまえば大きなディスアドバンテージになる。王がすでに兵を挙げている以上、その討伐に活躍した者が次の国の支配者として求められるのは非常にわかりやすいことだった。

わかりやすいシナリオとは民衆にも受け入れられやすいものだ。「見ればわかる英雄」というやつである。


ガスティン侯爵は戦いたいのだ。

わかりやすい武勲がほしいのだ。

「王の配下の大司教」と戦いたいのではない。王と戦いたいのだ。


サヴィダン公爵は粘り強い用兵で王軍の南進を阻んでいる。

シクス侯爵は王軍との緒戦で撤退しながら王軍を殲滅するという、非常に優れた戦術を見せた。

ガスティン侯爵にはまだ、それがない。

その意味では「王都から脱出してみせた」ベルナールお兄様と私を擁するペドレッティ家のほうがまだ評価されているのかもしれない。


次代の権力者レースでシクス侯爵が勝利するのはガスティン侯爵には絶対に許せるものではないだろう。

それほどに二家はお互いを嫌いあっていた。


ガスティン侯爵領は王家直轄地と接していない。

だから王家に攻め込むための、わかりやすい道は2つ。

南東のシクス侯爵領を切り取る……それはガスティン侯爵の名声を地の底まで落とす道だ。その上、シクス侯爵の戦場での手腕はすでにわかりやすく見せつけられている。ガスティン侯爵が勝てるとは限らなかった。

南の海岸線すべてを抑えるジェルミ教の領地、特に港湾都市アジャクを支配して海軍を組織した上で王家に攻め込む……これがガスティン侯爵にとってのベストプランである。成功するなら……


しかし知恵者、国王の軍師デュマ大公がそれを警戒していないはずはない。

恐らく、ガスティン侯爵のアジャク攻略は相当に骨が折れるものになるだろう。




地図の中のペドレッティ伯爵領を見る。

ペドレッティ伯爵領は南にシクス侯爵領、西にガスティン侯爵領と接している。なお、ペドレッティ伯爵領にも海はない。

そして、「田舎者」と呼ばれるペドレッティ伯爵領のさらに東、この国の北東部には大きな貴族の領地が2つあった。


……ちなみにこの二家は原作ゲーム王冠の野望には登場しない。

いわば空白地になっていた地域である。

領地も広いのは広いが基本的には不毛の地であり、相当に内政を頑張らないと赤字が出ちゃったりする場所である。

武将が少なく、内政ができる人数が絶対的に足りないペドレッティ伯爵家は「ここを支配しないことがセオリー」とまで言われていた。


私達とこの二家を併せて、社交界で辺境御三家などと呼ばれているらしい。

ペドレッティ伯爵領のすぐ東に接するペラン子爵。

さらにその東に領地を持つアルテレサ伯爵。

この二家の領地には海があり、それぞれ小規模ながら港を持っていた。


ガスティン侯爵がアジャクの攻略に失敗したら……

すぐ南に広がる海を手に入れることができなかったら……

……別の海を目指すことは十分に考えられた。


ペドレッティ家を蹂躙し、ペラン家を壊滅させ、アルテレサ家を踏みにじって、それで手に入れたものも港には違いない。

そしてゲームの中では5年後のシナリオ2でも、さらにその5年後のシナリオ3でもメンディ大司教の勢力は残っており……ペドレッティ家はガスティン侯爵に滅ぼされていた。

ガスティン侯爵は10年かけて念願の港を手に入れるのだ。ちっくしょー。

これはガスティン侯爵はかなり早い段階でアジャク攻略を断念する可能性が高いということを示唆していた。


ガスティン侯爵がこっちに注視する前に対応しなければいけない。

……心情的にガスティン侯爵と結ぶ判断はどうしてもできなかったしなぁ。




と、なれば……ペドレッティ家が盟約を結ぶのはもう一方の主人公、王軍を鎧袖一触に蹴散らしてみせた乱世の英雄、シクス侯爵だろうか。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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