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天才

「俺の持論だがな、歴史上のほんの一握りを除いて、軍事に天才はいない」


ベルナールお兄様が私にそう語った。




ベルナールお兄様がお父様の後を継いでペドレッティ伯爵となった、その直後の会話である。


「ベルナールお兄様が伯爵になったからには、戦場に出ることは許しませんからね」

「えぇ……?」

なんでドン引きするような声を出したんだ。

当たり前である。ペドレッティ家の当主としてホイホイ最前線に行っちゃうような存在では困るのだ。

いや、頼りになるんだよ。最前線でこれほど頼りになる人はいないんだよ。

でもダメー。貴族だからね。

「いや、俺じゃなきゃダメってこともあるだろう?」

「はい。伯爵じゃなきゃ後方から安心感を送ることはできません」

私の言葉にベルナールお兄様は「はぁん」とため息のような声を漏らした。なんだその声。


「でも、そうなると現実的に手駒が少なくなりますからね。どこかに優秀な指揮官はいないもんでしょうか」

ベルナールお兄様に並ぶくらいなんて高望みはしない。

セリーヌお義姉様と並ぶくらいなんて高望みもしない。

そこまでじゃなくても、ある程度信用できる指揮官……誰かいるかなぁ。

「セリーヌほどじゃなくていいなら……ある程度の計算ができる程度でいいのなら、何人かは心当たりがあるぞ」

はっとしてベルナールお兄様の方を向く。

ベルナールお兄様は「これを提案することでご褒美に戦場に出る許可がもらえるかも!」みたいな目をキラキラさせた顔をしていた。

「ダメです」

目に見えて落ち込んだ。ベルナールお兄様だってお父様が伯爵だったときに戦場に出るのを大反対してたでしょ! 因果応報である。

「で、心当たりとは?」

「……お、おう。俺は今でこそ軍神と呼ばれてるけどな、学園に入る前、本当に子供のころから父上について戦場に出ていたんだ。あのころは失敗も多くしたもんだ」

学園の入学前からでしたか。それは……まだベルナールお兄様自身若いというのに軍神と呼ばれ、認められるだけの実力と経験値があるわけだ。

しかしベルナールお兄様の失敗なんて想像がつかない。

「ペドレッティの家は……今はこの国の戦乱で、シクス侯爵の支援を含めて逆に潤いつつあるが、本来のペドレッティ家はそれほど裕福じゃないのはわかるな」

「はい。所詮は田舎者です」

裕福にさせてくれてたのがアメリーお義姉様だったりお父様だったりする。あとは金鉱脈。

「裕福じゃないからな、戦場では1人何役もやってたもんだ。貧乏だからやらざるを得んのだがな」

ベルナールお兄様は手を組んで私を見つめてきた。

「いいか、ジェルメーヌ。俺の持論だがな、歴史上のほんの一握りを除いて、軍事に天才はいない」

ふむ……

「メンディ大司教猊下はご自分を天才と言ってらっしゃいましたが」

「あいつは俺が学園にいたころ、酒飲んで全裸になってゲラゲラ笑いながら魔法について教えてくれたおっさんだぞ。どこが天才だ」

なんで全裸なんだよ……

なんでゲラゲラ笑ってんだよ……

ほんと、仲いいな、ベルナールお兄様とメンディ大司教。


「いいか。俺だって子供のころに戦場で数多くの失敗をした。失敗が指揮官を作るんだ。軍事に天才はいない。俺だって天才じゃない。失敗が優秀な指揮官を作るんだ」

……あぁ、そういえば三国志の登山家、馬謖をもし諸葛亮が斬らなかったら優秀な指揮官になったかもしれないという話はどこかで読んだような記憶がある。

馬謖は街亭の戦いで諸葛亮の命令に背いて戦い敗北した。諸葛亮は規律違反として馬謖を処罰したわけだけど、「こんな大敗北なんていう得難い経験をした馬謖はこのまま育てれば、名将になったのではないか」ということだった。

「負けたことがあるということがいつか大きな財産になる」とか山王工業のヒゲのおっさんも言ってた。そういうことなんだろうと思う。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、そうか 最強夫婦が伯爵様とその婦人になって気楽に鉄火場に送り込めなくなったのか というか政治力皆無、武力最強を後方に置くとか能力の浪費だよね
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