巫女
「ドラゴンがどこからやってきたのか、はわかっていない。伝える人間もいないから、多分このままわからんままなんだろう。それこそ王冠の中のドラゴン本人にインタビューでもしない限りな」
すごい興味あるけど絶対成立しないインタビューじゃないですか。
「ドラゴンが最初に降り立ったのは、今のシクス侯爵家領のあたりと伝えられている。ドラゴンはその地で神の如き扱いを受けていた、とな」
シクス侯爵領……
かつての本拠地だから、サンルナ団なんて物騒な連中がシクス侯爵領を跋扈しているのかもしれない。
「ドラゴンは降り立った当初から暴虐の存在だったと伝えられている。地元の連中をもぐもぐごっくんしてたらしいな。しかしその中でドラゴンと意思疎通がはかれるものが現れた。名前は伝わっていないが『竜巫女』と呼ばれている」
絶対美少女じゃないですか、竜巫女。名前の響きが絶対美少女。
「竜巫女がどんな考えを持っていたのかは知らん。しかし人口の多い場所にドラゴンを導き暴れさせた。帝国は3年で壊滅したと言われている」
3年……
この国土を3年か。
「帝国が3年、辺境の国が1年。これで人間の国は一時途絶えることになる」
歴史の年表の空白期間か……
「そこからサンルナ竜国の時代だ。竜巫女の一族が支配する国だったらしい。ドラゴンもなぜか竜巫女の言葉を聞いていたらしいな竜巫女自身は人間だから寿命があるが、その血族の命令をドラゴンが聞き続けていたらしい。竜巫女の一族による恐怖政治の時代だったと当時の大司教が書き記している」
竜巫女はなにを考えていたんだろう……
まぁ、そのあたりは私が考えることでもないだろう。
「サンルナ竜国の組織は竜巫女を頂点としている。竜巫女の一族に睨まれたらドラゴンの餌だ……そんな組織ともいえないような国が200年ももったんだからドラゴンがいかに強大かって想像もできるな」
想像できないくらい強かったということですね。
そして200年前……英雄王の登場に至るわけか。
「英雄王は3人の部下と、当時のジェルミ教の大司教の手助けによりドラゴンを討伐した。ジェルミ教はその功績が認められて国教としての地位を確立したわけだ」
ジェルミ教が国教になった歴史も、それほど長くはないということか。
「3人の部下はそれぞれ要地を与えられた。ドラゴンが最初に降り立った竜巫女がいた土地にはシクス侯爵。帝国の首都があった場所にはディガール侯爵。辺境の国との最前線の城があった場所にはガスティン侯爵。それぞれ歴史上の要地を守るよう言われた。そして王都は……初代英雄王の出身地とされている」
はぁん。
「なるほど。つまり辺境の国との争いの象徴の地を封地とされたガスティン侯爵家は、うちにとって歴史的に考えてもいけすかないってことですね」
「そうともいうな」
やっぱりガスティン侯爵家嫌い!
「先生ー、気になったことがありまぁす」
「誰が先生だよ」
大司教は苦笑しながら、のろのろと手を挙げる私を指さした。
「竜巫女の血族はドラゴンと意思疎通がはかれた……間違いないでしょうか」
「知らね。当時の大司教の所感だ。ただ、実際に当時を見ている人間の所感だからそれなりの根拠はあるんじゃねぇか?」
ふぅん……
「サンルナ竜国ができてから200年のうちにどれだけ増えたかわからないですけど……竜巫女の血族って根絶やしにできてるんですかね」
「いや、傍流も含めて考えたら常識的に考えて無理だろう。主流は壊滅できても、目立たないところまではなかなかだろうな」
ですよねー。
「つまり、竜巫女の血族は今も残ってる可能性があって、今後、大変なことが起こる可能性もゼロではないってことですよね」
「いやー、はっはっは。その通りだなー!」
大司教が笑ったから私も笑った。
「猊下ってば! うふふふ!」
そして同時にため息をついた。
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん