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惜別

ついにこの日がきてしまった。


「さ、さ、サリウ様、か、完治とはいえませんが、ひとまずはも、問題ありません。あ、朝夕の2回、こちらの薬をふ、服用するようにしてください」

「ファンニ先生、ありがとう! 先生はまだ若いのに名医と呼ぶにふさわしい!」

サリウ氏の言葉にファンニ医師は照れ笑いを浮かべた。

ついに、サリウ氏の帰宅許可が出てしまった。

いや、サリウ氏の病気が治るのはいいことだ。非常にいいことだ。

けど……

「これでジェルメーヌやマリオンともお別れね」

「エルザさん……」

寂しい。

たった1年間の付き合いだったけど、美の女神と一緒に本当に仲良くしてくれた。

美の女神と違って、彼女は結婚はまだだから会おうと思ったらまだ会いやすいけど……でも寂しい。

「近いうちに会いに行くわ。どうせシクス侯爵閣下にもお会いしないといけないこともあるし」

「えぇ、楽しみにしているわね」


そうしてエルザはシクス侯爵家領に帰っていった。


サリウ氏とエルザが使っていた客室は、そのままジル少年が使うことになり、彼女達がこの屋敷にいた痕跡もなくなっていく。


春がくる前に去年火事で焼失し、建て直していた新しい屋敷が完成した。

ジル少年の部屋もあるし、その騎士であるジョゼフの部屋もある。

とても広くていいお屋敷だ。


まだ冬の寒さの残る、春とはいえない日のことだった。

私の部屋にノックの音が響く。

「はぁい?」

「マリオンです! 入りまーす!」

許可を出す前から入りますとか言われた。

まぁ、マリオンはそういう子だって知ってるからいいんだけど、お客様がいるときとかはやめてね、本当に。

「ジョゼフさんがジェルメーヌ様にお会いしたいとのことなんですがいかがしましょうか」

「ジョゼフ様が? なにかあったのかしら?」

ジョゼフさんってことだからジル少年関連であることは間違いないけど。

「ジル様にお客様がきておられますから、そのことだと思いますが」

ジル少年に個人的なお客さん? 珍しいが、いいことだ。

特にウヴェナー伯爵家の生存者を探しているから、そっちの方の人だとありがたい。ウヴェナー家直系の人々はすでにジル少年以外は死亡が確認されているけど、家臣団は……かなりの人数が死亡しているとはいえ、全滅ということはないはずだ。ないよね?

「わかったわ。じゃあジョゼフ様を呼んでちょうだい」

「はーい」

マリオンは走って出ていき、すぐにジョゼフさんを連れて戻ってきた。

「ジェルメーヌ様、急に訪れて申し訳ありません」

「いえ、かまいませんよ……あぁ、今、テキストを作っていたんですけど、ジョゼフさんから見てもわかりやすいかチェックしてもらえませんか」

教授と呼ばれる立場にはならないけど、一応簿記を教えるのをサポートする立場のため、教科書を作っていたのだ。

「はぁ……」

ジョゼフさんは微妙な表情でテキストをめくるが、すぐに苦笑して閉じた。

「私は学がありませんので、正直に申し上げてよくわかりません」

あらま。

「実は今、お坊っちゃまにお客様がきておられまして……このテキストはその方々に見ていただいた方がよろしいかと」

「方々」……複数形か。お客さんは2人以上らしい。

「簿記に興味のある方なのかしら」

「そうですね。学園への入学が決まっている、クープ家の御曹司と番頭さんのお嬢様のお2人です」

あら、それはぜひご挨拶しないと。


ノックをして、ジル少年の許可が出たので部屋に入る。

「ごきげんよう。お客様と伺いましたから、お邪魔させていただきますわ」

「ジェルメーヌ様!」

ジル少年が顔を輝かせてくれる。相変わらずジル少年は可愛いねぇ。


部屋の中にはそれ以外に少年と少女とおっさんの姿があった。あれ、2人って聞いてたけど……

「きつねだ」

「きつねね」

小声だったけどしっかり聞こえてるからね、それ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際きつねだし ついに教師あるいは教授的な称号もゲットするのか
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