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別離

しばらくの間はペラン子爵領に滞在していた。


美の女神とお茶をしたり、エルザ達と買い物をしたり……

ちなみにエルザはサリウ氏の看病のために、まだしばらくの間はペドレッティ伯爵家領にとどまる予定のため、私と一緒に帰ることになっているし、もちろんマリオンは私付きなので私と一緒に行動するし、ロランスも学園に戻るときに一緒に戻るつもりだ。

しかしそれ以外の学友達はすでに残っていない。

そして美の女神は結婚して、もうこの土地で生きていくことになる。

これから一生会えないわけではないけど、今までよりもずっと会いにくくなることは確かだった。

寂しいからずっとここにいたい。


しかし、それでも時間は流れる。

ずっとここにはいられないことなどわかっていた。

すでに結婚式で招かれていた客はほとんど帰途につき、残っているのは私達くらいなものだった。


「また、必ずくるわね。あと手紙も書くわ。大司教猊下が遠方の人に鏡を使って周囲の風景も含めて伝える魔法を考案されてたから……マリオンに覚えてもらうわ」

「私ですかぁ」

テレワーク魔法、あったら便利だしぜひ覚えてもらわねば。

「だから、一生のお別れじゃないんだから、そんな顔をしないで、ね?」

美の女神ことドゥイス男爵夫人は泣きそうになり、目にいっぱいの涙を溜め込みながら、笑って見送ってくれた。

「マリオンさんがそんな魔法を覚えてくれるのなら心強いわ。本当は子爵領はもっと風光明媚な場所なの。いっぱいご案内したいところもあるから、また、必ず、いらしてね」

涙声になりながらも、笑ってくれた。

これは前に本人からお茶会のときに聞いていたことだった。

「今の世の中は、悲しいことだけどいつ戦争に巻き込まれるかわからないわ。非戦闘員だからといって命の保証がされる時代じゃないことは私にもわかっているの。だから、もし自分になにかあったとしても最後に見た表情は涙じゃなく、笑顔でありたいって、そう思うの。別れのときには絶対に涙は見せないわね」……そう言っていたのだ。

いい子だなぁ。持ち帰りたいなぁ。

これは絶対にマリオンに魔法を覚えてもらわなければ。

こんなことなら聖女に前もってお願いしておけばよかったなぁ。


この地でいろんなことがあった。

斬られたのは初体験だった。初体験なのに優しくしてもらえなかった。モツが出ちゃうかと思った。


べシェさんの話は頭に留めておく必要があることだ。

サリウ氏を狙った犯人がわかったというだけでも十分だが、討伐計画が練られている……もちろん勝算もあることなのだろう。もちろん組織としては大きそうな敵ではあるので、討伐したからといって根っこの部分まですべてというのは難しいと思うし、そうなるとまた新たに恨みを買って狙われる人も出るのかもしれない。

しかし、組織は毒を扱うことはすでに知れ渡ったし、組織がパスカル・シクスを狙おうとしたら完治して武力が大幅に上がったサリウ氏本人が大きな壁として立ち塞がることになる。

仮面のことは……

……知らん知らん。あれは私の担当じゃない。

とはいえ、ジャンさんからヘルプが来る可能性もあるので、いつでも動けるように情報収集だけはしておこう。


ナシムさんと話ができたのもよかった。

特にナシムさんのご子息を学園に招くことができたのは本当によかった。

これは別にクープ家とつながりができたことがよかったんじゃない。

ジル少年と友達になれるかもしれない子ができたのが嬉しい。

もちろん性格的に合わない子である可能性はある。

でも最初の段階で敵対しようと思ってやってこられるよりははるかにマシな導入になるはずだ。

ジル少年は今まで、ずっと、しなくてもいい苦労をしてきた。

だからまだ若いのに、早く一人前になりたくて入学を決意したのだろう。

だったら私はジル少年の学園生活が楽しいものであるように整える必要がある。

その第一歩として、クープ家のご子息を招くことができたのは……よかった。




「そういえば、帰る前に港の様子を見てから帰りたいんだけど」

「ダメです」

ロランスに止められた。

なぜ君が答えるの?

「……ジェルメーヌ様は1年前の時以上に影響力のある要人となっているんです。そんなあなたがベルナール様もセリーヌ様もおられないのにペラン子爵領にこられたのは私が護衛を命じられたからなんですよ」

え、そうだったの?

「港はまだ海賊に襲われたばかりで防衛体制の見直し中です。私もなにかあったときにジェルメーヌ様を守る自信はありません。ですからダメです」

しょんぼりだ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん

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― 新着の感想 ―
[一言] きつねさんはいつの間にか要人扱いである まあ重要な行動の立案指揮してるから当たり前だけどね 戦乱が集結したら仲良しクラブ間の街道の整備を進めれば多少は気軽に行き来出来るようになるさ
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