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「ベルナール殿とジェルメーヌ嬢があの狂乱の日の王城から見事脱出し、生き残ることができたことにまずは祝辞を」


ガスティン侯爵の使者はまず、そう口を開いた。


背はそれほど高くはない。

しかし名門の生まれであるという自負を全身から漂わせた若者だ。いや、私の方が若いんだが。

鍛え込んだ体は叩いたらカンカン音がしそう……するかなぁ?


「しかし、ご存知の通り、我が父、先代ガスティン侯は帰らぬ人となりました。もちろん我が父以外にも亡き者になった貴族は多い。王が人道を外れた以上、なにをもってしても正すのが国のためでしょう」

ごもっとも。

熱く語る使者から目を離し、お父様を見る。

お父様は私をちらっと見る。どうするか決めかねているようだ。まぁ、そりゃそうかもなぁ。私が口出ししていいのかな? ……えぇい、出しちゃえ。

「まさしく『民のため』となりましょうね」

「君らとはちょっと考え方が違うんだよ」アピールをしておく。実際に民のためになるかどうかは不明。そもそも戦乱が民のためにならないことが多いからスタートラインがマイナスだ。

使者は目を細めて私を見た。気に入らなかったらしい。

「民の平穏は国が安定してこそでしょう」

「そうですね」

それは否定しません。

で、どう安定させるのかという話です。


別に私はペドレッティ伯爵家が、次代の権力者レースに勝ち上がるとかそういうことは考えていない。

原作ゲームの王冠の野望ではガスティン家も、王家も、なんもかんも武力100パンチで滅ぼして国家統一をしていたが、実際のところこんな北の辺境の、領土だけは広いけど人口密度がすっかすかな勢力が権力者レースに勝ち残れるとは思わなかった。

私としては戦後、うまいことこの辺境の地を確保したまま生き残ることができればそれでいい。

そのために学園も作りたいし、文化的な都市にしたいし、繁栄のための政策も出していきたいと思っていた。


じゃあどこが権力者レースで勝利するのを応援するかという話である。

まずこの国で最大戦力にして都市の規模も人口も、すべて圧倒しているのが王家である。

この状況下で王家なんて応援できるわけがない。却下却下。

つまり諸侯の誰かが王家を打ち倒すというのが規定路線となる。

サヴィダン公爵。ここは戦力的にも粒揃いで、実際に王家と今後いい勝負をすることになる……が、いかんせん位置が悪すぎた。

今後北上してくる海賊サンディ・アンツは一時王家と同盟を結びサヴィダン公爵家領を切り取っていくことになるのだ。

サヴィダン公爵家はそれが原因で衰退していくことになる。かわいそう。かわいそうだけど仕方ない。

そしてゲームの主人公格の二家、シクス侯爵家とガスティン侯爵家。

ここは主人公だけあって人材もかなりのものである。勢力は王家が圧倒的とはいえ二家ともそれに次ぐほどの実力は持っている。


そしてこの二家は致命的に仲が悪い。


ゲーム内でも外交コマンドでこの二家は絶対に同盟相手になれない設定になっている。あと王家も。

では、シクス侯爵家とガスティン侯爵家、どちらかを応援するという話ではあるのだが……


「これから我々はガスティン侯爵の名の下に挙兵し、国王配下として暴虐の限りを尽くす悪の大司教を討つべく、アジャクに攻め込むつもりです。なにとぞ共に兵をあげ、助力してほしい」

あー、なるほど、アジャク攻めね。

アジャクは宗教都市であると同時に経済都市であり、港湾都市だ。抑えればいいこといっぱいである。

「なるほど。お話は承りました。しかしご存知のようにペドレッティ伯爵家は北の田舎者。あのような政変が起きてしまえば、どうしてもそちらにリソースを取られてしまいます。私達はお力にはなれないと存じますわ」

この拒絶はうまい手ではないかもしれない。ガスティン家に恨みを買うかもしれない。でも……


使者は肩をすくめた。

「突然でしたから仕方がありませんね。しかし次の機会には是が非でもお願いしたいものです」

目は笑っていない。

「今回は許してやる。次はないぞ」ということか。




私はどうしても権力者レースにおいてガスティン家を応援することはできなかった。

なぜなら王冠の野望のゲーム内でペドレッティ家を滅亡させたのがガスティン家だったからだ。


そして、ペドレッティ家に攻め込んだガスティン家の総大将が、今、目の前にいる使者……ティボー・ガスティンの弟、ガスティン家の若き将軍、リシャール・ガスティンだったからだ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

リシャール・ガスティン:ニコロ・ファジョーリ

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