看病
ギョームが使った針を探して学園の薬学の教授に渡す。
ギョームは口に含んで使ったわけだから恐らくは経口しても無害な毒が使われているのだろう。血管に入ることで有害になるとか、そういうようなものではないだろうか。まぁ、どちらにしても危険であることは間違いないけど。口の中で誤って刺しちゃったらどうするつもりなんだろう。口の中に袋を仕込んでるとかなのかなぁ。訓練とかなのかなぁ。
これはギョームを尋問しなければなりませんね。
この毒を分析した結果、産地とか、よく使う人々とかがわかれば御の字だ。
魔具も実際使ってみる前にロタン教授に渡しておく。
ロタン教授はさっきまでギョームの耳がついてたことにドン引きしてたけど口に出しては何も言わなかった。さすがだ。
まさか、慣れてる!? ……いや、さすがにそんなわけはないか。
これも作った人物がわかればいいんだけど、ロタン教授曰く「恐らく作成者の割り出しは難しいでしょう」とのことなので、とりあえず、といったところだ。
あとは毎日決まった時間になんらかの儀式をしないと爆発する機能付きとか言われても困るし。
ギョームしか使えないアイテムの可能性を考慮して、ということだ。
サリウ氏がようやく目が覚めたので、エルザとサリウ氏に現状をを伝えておく。
2人ともさすがに驚いていた。
特にサリウ氏はギョームのことをかなり信頼していたらしく動揺させてしまった。ごめんねー。
「ギョームに、会わせてもらえないだろうか」
「えぇ、もちろんですわ。ただし……」
同席していたファンニ医師に顔を向けると、彼は静かに首を振る。
「……今はファンニ先生の許可が下りないからダメです。そもそもサリウ様は働きすぎなのです。まずは当家に滞在し、じっくりと体をお休めくださいませ。先生の許可がおりましたらギョームにでもなんでもお引き合わせ致しますし、それまで彼には処罰は与えないと誓いましょう」
私の言葉にサリウ氏は難しい顔をする。あぁ、でも……難しい顔ではあるけど、顔色は随分よくなったなぁ。うちにきたとき、この人絶対このまま死ぬって思ったもんなぁ。まぁ、ギョームももう毒は致死量与えたと思ったからサリウ氏から離れたのかもしれない。その意味では運がよかった、のかなぁ?
運がいい人は服毒しないと言われたらそれまでだけど。
「……こちらの家で大変よくしてもらっているが、私にも仕事が……」
このっ、ワーカホリックめー!
「お父様!」
怒ったような声を出すエルザ。いい子だなぁ。
……あ、そうだ!
「そういえばエルザ様もあと数ヶ月で学園を卒業です。当家に滞在していただければ……そこでファンニ先生の許可が出れば卒業式に出ていただけると思うのですが……」
大丈夫かな、と思ってファンに医師の方を向いたら、力強く頷いてくれた。
「じぇ、じぇ、じぇ、ジェルメーヌ様のおっしゃるとおり、い、今からなら、ちゃ、ちゃんと治す気力があれば、そ、そ、卒業式までには、ま、間に合い、ま、ます。が、が、がんばりましょう!」
名医かよ、この人!
「むぅ……」
「勝手ながらジャン子爵と連絡を取らせていただいております。ジャン子爵からもエリウ様は働きすぎであると……」
サリウ氏は余計に難しい顔をした。むぅ……
しかし睨み付けるエルザに逆らうことはできないらしく、渋々とうちへの逗留を了承した。
サリウ氏の病室となった客室を出る前にエルザを手招きして耳打ちする。
「まず一つ……サリウ様がこの部屋に仕事を持ち込んで働き出しかねませんから、ちゃんと見張っていてください」
エルザは親指を立てた。
ぐっじゃないよ。
「二つ目……これはできれば、なんですけど、卒業してもエリウ様が完治するまではうちにいてくださらないかしら」
「え、いいの?」
うちで看病してもいいんだけど、エルザも心配だろうからねー。
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん