聴取
「エルザ様、ちょっといいかしら?」
エルザが意識を取り戻したという連絡を受けて、エルザに寝てもらってた客間に行く。
別の客間ではエリウ氏が寝てるし、今日は客間大活躍だなぁ……
ファンニ医師も伴ってエルザのところに行ったから、病状の説明であると予想されたのだろう、エルザはベッドから起き上がろうとする。
「あー、そのままでいいです。あなたも疲れているでしょう」
「でも……」
なにか言いたそうだが、とりあえず無理やり寝かしておく。
「で、ちょっと言いにくいことがあって、申し訳ないのだけど人払いをお願いできないかしら。護衛の方々はあなたの家の家士で、あなたは信頼しているだろうことは重々承知の上でお願いしたいのだけど……」
護衛の兵士は2人いたが、私の言葉に顔を見合わせる。
「……では我々はサリウ様の様子を見て参ります」
「どうぞごゆっくり」
特に不機嫌になることもなく護衛の方々は外に出て行こうとする。できた人々だ。
「で、で、では、僕も、そ、外に出ていますので」
なんでや。
「ファンニ先生は今からエルザ様にエリウ様の病状説明という大役がございます」
「あっ……そ、そ、そうでした」
なんで本気で出ていこうとしてるんだ、この人。
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、ちょ、ちょっとショッキングな内容かも、し、しれませんけど……」
ファンニ医師の話にエルザが耳を傾ける中、私は違うことを考えていた。
「じゃじゃじゃじゃじゃあ……」って北海道のバラエティ番組のディレクターかよ。腹を割って話すことなんかなにもないよ。
「そんな……お父様が、そんな……」
エルザは絶句してしまった。そりゃそうだよね。
いや、ほんとにそりゃそうだ。
「あの護衛の人達のことを私はよく知りません。ですから犯人の可能性が……どんなに低くてもある以上、この話を聞かせるわけにはいかなかったから出ていってもらったの」
「彼らは違うわ! 彼らは私が子供のころから……!」
あー、ごめんごめん。落ち着いて。
「私も彼らが第一容疑者であると言ってるわけじゃないの。誤解しないでくださいね」
ただ、ピルケースを持ってたのが護衛の人なんだよねぇ。
もし犯人だったらそれを私……というよりファンニ医師に見せるかどうか、っていうのは別として、ピルケースを持っていた分、疑わざるを得ないところはある。
まぁ、本当に一番疑わしいのは……
「薬を処方したのは誰か……?」
「家人の方々も現時点で疑いを外すことはできません。しかしながら、普通に考えると作った人が一番疑わしいのは自明です」
エルザは首を傾けて考える。
「近所のお医者様だったと思うわ。私は会ったことはないけど……えっ? その医者が!?」
「確定はしませんけど……その医者が薬を処方して、薬から毒が確認されたのなら疑わしいことこの上ないのは確かですね」
私の言葉にエルザがベッドから飛び降りようとする。
「絶対に許さないんだから!」
あー、落ち着いてください、ほんと。
「……なにやってんの、ジェルメーヌ?」
あれ? 背中ポンポンしたら寝るって聞いたんだけどなぁ。実際ジュリアンはすぐ寝て、寝顔が可愛かったんだけどなぁ。
「この件はエルザ様が動くより、パスカル・シクス閣下にお任せしましょう。うちの領地にそのお医者様がいるわけでもないですから、こちらは身動きが取れません」
「うっ、確かに……」
まぁ、パスカル・シクスに任せるというよりジャンさんだな。
最近、ジャンさんの便利さに気づいてばんばん利用しつつあります。
遠話の魔法でジャンさんと連絡を取る。
遠話の魔法ってダイレクトで会話できるわけじゃなくて、魔力持ちを介して会話するわけだから不便よねー。
大司教はあの鏡を使ってのテレワーク魔法を一般的に使えるようになるまで研究してほしい。
その日の夜、ジャンさんから連絡が来た。
事情聴取のために、件の医者のところにいった兵士達は、その医者が殺されているのを発見したそうだ。
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん