表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/240

不信

「……」

「……」

結局、マリウスは話し合いの結果男爵位を受けてくれることになったわけで、そのマリウスをお父様に引き合わせている。なお、オリーブの単価についてはシャルルに任せておいた。任せたは任せたが、あまりシュヴァリエの損にならないようにと指示してあるので悪くはなっていないことだろう。

「……よいのか?」

「うむ」

なんか意思疎通は取れてるし、まぁ、いっかー。

「シュヴァリエ男爵、これでよろしいでしょうか」

「……うむ、今まで通りマリウスと呼んでほしい。そして君の尽力に感謝ししよう」

さすがにいきなり男爵と呼ばれるのはくすぐったいらしい。ちょっと照れ臭そうな顔をしている。

「……」

不機嫌そうに眉をひそめているのはマリウスの息子のアドリアンだ。

私はそんな必要はないと言ったのだが、マリウスからペドレッティ家に取り立ててほしいという要請があったのだ。

要するに人質というやつだ。

別にそのようなものは必要ないのだが、向こうがそれで安心できるというのなら……まぁ、致し方ないと言ったところだろう。


息子と言っても私とそれほど変わらない程度の年齢なのだが。




結局、シュヴァリエの一族の会議は2日で終わっていた。

伯爵家の勢力に加わることは、かなり早い段階で決まっており、一族での話し合いで時間が使われたのは、条件面の話だったらしい。

ありがたいことだと思う。シュヴァリエ一族の中ではベルナールお兄様はそれほど意味のある人物であるらしい。

その会議の中でアドリアンは本人の意思に関わらず、昨日まで仇敵だった勢力への助力が求められるわけで……とても申し訳ないと思った。

ちなみにアドリアンは私が一番最初にシュヴァリエ一族の館に入ったときに用件を伝えた青年だった。

つくづくこっちの勝手を申し付けてごめんねぇ……


ちなみにベルナールお兄様本人はまだ出かけたまま帰ってきてはいない。



マリウスはベルナールお兄様が戻ってくるまでここに止まることになった。

お父様に引き合わせ、無事、ペドレッティ伯爵の臣下であるシュヴァリエ男爵が誕生したところで、私はマリウス親子の部屋を訪れた。


「どうですか。お父様を信用していただけたでしょうか」

「ふはは、信用するする」

マリウスはペドレッティ伯爵領のワインに酔っているようで上機嫌に答える。

同時にアドリアンは冷静に答えた。

「信用できない」

なるほど。

マリウスは考えなしではなく、恐らくマリウス・シュヴァリエとして、武門に生きるものとしての直感を重視して発言したのだろう。それはそれで理解できる。

アドリアンは直感によってではなく、恐らく今までの歴史を鑑みて評価したのだろう。それはそれで理解できた。


アドリアンは私を睨み付ける。

マリウスが苦笑してこっちを見ているので、これは私が始末するようにということなのだろう。

はいはい、やりますやります。

「アドリアン様には申し訳ないとは思っているのですよ。それはもう心から」

ため息をつく。

「吐き気がするほど嫌いな相手に頭を下げなきゃいけないなんて屈辱ですものね。心から同情します」

「……それだけじゃない」

アドリアンはぼそりと呟く。

「こんな紙が、俺達を守ってくれるなんて信用できない」

こんな紙……ん? お父様がシュヴァリエに領地を渡すことを書いた書面のこと? あれ? んー……

「あなた、文字が……?」

私の言葉にアドリアンは悔しそうに俯く。

「シュヴァリエで文字が読めるものなどおらんさ」

マリウスが笑い飛ばしたが、これはアドリアンに酷なことをしてしまった。

嫌いな相手に自分の弱みは見せたくないもんね。ごめんね。


設定資料集にも識字率のことは書かれていなかったから、当たり前のように考えていたが、これはあとでチェックしなければいけない。

ユーリお兄様もベルナールお兄様も学園に通っていたのだから文字は問題ないだろう。お父様も書面を書いている……あとはどの程度なのだろうか。


「わかりました。明日からアドリアン様には午前中の間、勉強をしていただきます」

私の言葉にアドリアンは驚いたように顔をあげる。

「契約は文字で交わされます。あなたがその内容を理解できれば……例えば私がマリウス様に、マリウス様が損をする取引を持ちかけたら、あなたはそれを理解して止めることができるようになります」

自分の胸を叩く。


「私を利用なさい。それはシュヴァリエ一族のためにもなるはずです」

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ