親交
「いつもうちの娘がお世話になっているね!」
「もぉー、お父様ったらー」
エルザが甘えている。ふむ……
エルザの父親、サリウ・シクス氏は爵位こそ持っていないものの、パスカル・シクスの叔父であり、シクス侯爵家の分家筆頭という重鎮の中の重鎮だ。
すごいいいお父さんっぽい外見の人だけど、戦場では最前線に立つ、パスカル・シクスの盾である。
その実力は過日のモンソローでの戦いで負傷しても生きて帰ってきたことからもわかる。
というわけで、エルザのお父さんが手紙でルイーズ殿下ちゃんが私に会いたいと言っているらしいと知らせてきてくれたので、シクス侯爵家領に伺ったら、エルザのお父さんとお喋りすることになったのである。
まぁ、いろいろ親交を深めておきたい人ではある。
「君とはモンソローの折に話をする機会がなかったからね」
「勇将サリウ・シクス様とお話しできるなど、光栄なことですわ。それに私のお友達でもある、エルザ様のお父様でもありますから……お怪我の具合はもうよろしいのですか?」
モンソローで怪我をしたと聞いていたけど元気そうだ。
「いや、なに。撤退行動中を敵将クルビスに襲われてしまってね……なんとか逃げ出したが」
ん、クルビス? クルビス将軍?
「それは……命が助かってよろしゅうございました。サリウ様になにかあればパスカル・シクス閣下にとっても損失ですし、なにより友人の悲しむ顔は見たくありませんもの」
いや、ほんとよかった。
クルビス将軍といえば国王軍でもかなり高い武力の将軍である。なんと武力89だ。ベルナールお兄様やドゥトゥルエル氏が化け物じみているだけで十分に高い。
ゲーム内のサリウ・シクス氏の能力値は武力はそこまで高くなく、32だ。ただし統率力は高いタイプだった……本当によく生き延びてくれたなぁ。
ちなみに実は設定資料集の話ではサリウ・シクス氏の武力は74になっている。
これはサリウ・シクス氏が「病気」のステータス異常を持っていることによっている。
病気が治ったら32が74になるというわけだ。
しかし実際のところは彼はシナリオ3で病没している。シナリオ1から3まで10年間なので、10年の闘病の末、亡くなったというわけだ。
まぁ、病気が完治してもクルビス将軍と打ち合うにはちょっと物足りないけど。それでも統率力は高いので戦場で中心人物になるには十分な実力を持っているといえる。
「ところでお父様、ルイーズ殿下もこちらに?」
「いや、さすがに呼びつけるわけにはいかんからな。今日はここにジェルメーヌ殿に宿泊していただいて、明日にでも、屋敷に案内させようと思っているよ」
シクス侯爵家領の中心地であるノーランにルイーズ殿下ちゃんが住むにあたり、屋敷が建てられたらしい。
ルイーズ殿下ちゃんの人柄を示すような白一色のシンプルに綺麗な屋敷であり、白鷺宮と呼ばれているとかなんとか、エルザが教えてくれた。
「うふふ、じゃあ今日はジェルメーヌとお泊まりね」
……獣人の国のとき以来のパジャマパーティだな。結構短いスパンになってしまった。
「今日は心ばかりの料理ではあるがもてなしをさせてもらおう……どうした?」
なんのことかと不思議に思ったら、ここの家の使用人がなにか報告したそうにしていた。
「あっ、失礼します……旦那様、パスカル・シクス閣下とクリステル・シクス様がお見えです。その……お客様にお話があるとかで」
お客……私か。え、なにぃ?
「おいおい」
サリウ氏がぼそっと呟いた。
甥と叔父の関係なだけにおいおい……いや、私はなにも言わなかった。
「よぉ、ジェルメーヌ嬢! ひさしぶ……」
「どーん」
私を見て、笑顔で手をあげるパスカル・シクスは開幕クリステルさんに突き飛ばされた。
「よ、嫁ぇ……」
あんた、本当にお嫁さんに弱いなぁ……
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん
サリウ・シクス:ステファノ・ピオリ