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関所

「はい、私達は旅の商人でございます。商いのために北部より王都へ向かうところでございます」

私の言葉に関所の兵は薄気味悪そうに眉をしかめた。私の両脇にはジャンさんとセリーヌお義姉様が立っている。

ベルナールお兄様とエモン団長は体格がよすぎて、圧が強すぎる。

「……そうか。では税を払っていってもらおう」

「かしこまりました」


この国での城は徴税のための関所という役割を持っている。もちろん戦争になった場合は防衛施設としての役割もあるため、要所に築かれるのが常だ。

だからこの城も、一般的に「いい場所」に建っているのだとは思う。私にはそういうことはよくわからないけど。


「……その、なんだ。お前のその顔はなんだ」

言いづらそうに兵士が私に声をかけてきた。

ここに私が普段、狐の仮面をつけていた理由があった。

今、私は仮面を外して、火傷の痕をそのまま晒している。

ペドレッティ伯爵家のジェルメーヌ・ペドレッティという人間はなにやら国内で有名になっているらしい。

「狐の仮面」といえばジェルメーヌ・ペドレッティがイコールで示されるくらいに。

私も火傷以降、ずっと狐面で活動をしていたし、それをアピールするように動いていた。

狐の仮面がジェルメーヌ・ペドレッティとイコールになっているのなら、仮面を外してしまえば、イコールが消えるというのはわかりやすい理屈だ。

「子供のころの火傷の痕でございます。お見苦しいものをお見せして申し訳ございません」

微笑んでみせたが兵には引かれた。

私自身、火傷痕を好んで見せびらかしたいとは思わないが、別に見せても減るものでもない。火傷を見せておっぱいが減るのなら多少は考える。

「お嬢様はこのようなお顔でございますので、あとの手続きは私が担当させていただきましょう」

慣れた様子でジャンさんが兵士に声をかける。っていうか慣れてるなぁ……もしかしたらジャンさん自身、何度かこういう潜入をしているのかもしれない。パスカル・シクスが「俺が潜入すりゅー!」とか言い出して、ジャンさんがそれを諫めて、その結果、ジャンさんが潜入することになって……

うん、ありそうな話だ。

商材について説明しているジャンさんを横目にセリーヌお義姉様と水を飲む。

「……ここは抜けられそうですね」

「えぇ、なにもなければ大丈夫でしょう」


「この2人は万が一の際に雇っております護衛でございます」

「お、おぉ……」

やっぱりベルナールお兄様とエモン団長は一般的な兵士には圧が強すぎたようだ。完全に飲まれてしまっている。

「す、すごく強そうな護衛だな。名のある人物なのか?」

「さぁ? ……縁があって雇っておりますが私も彼らの出自は存じ上げません」

ジャンさんが2人に目を向けると、2人はなぜか上着を脱いで、ベルナールお兄様は背筋を、エモン団長は腕の筋肉を見せつけるポーズをした。シャツが筋肉で盛り上がる。なんでそんなの打ち合わせなしでやってんだ。君ら仲いいかよ。

「お、おぉ……」

そりゃ関所勤めの一般兵にはそれしか言えないだろうよ。

「私も腹筋を見せつけてきましょうか……」

セリーヌお義姉様は対抗心をださないでほしいし、腹筋を見せるとかはさすがにはしたないです。淑女ですので。


大体の検査が終わる。通行税も支払い、あとは出発、というところで止められた。

「あの女はなんだ?」

兵士が目に止めたのは聖女だった。

それまで一言も喋っていなかったから、逆に目立ってしまったか……

「あぁ、彼女はクープ家の娘さんです。王都への用事があるということで我々とともに行動することになりました」

クープ家はシクス侯爵家領を本拠地とする商人だが、全国に規模を広げている。アルテレサ伯爵家領とペラン子爵家領に港を整備するにあたって、アメリーお義姉様が紹介してくれたのもクープ家の人々だ。

あ、でもこの兵士が聖女の言葉遣いのことを知っていたら……聖女がなにか話して口調から聖女だとバレたら面倒だな。


「ごきげんよう。マチルダ・クープでございます。兵士の皆様が職務に励んでおられるおかげで私達も健やかに過ごすことができますわ。ありがとうございます」

完璧に頭を下げてみせる聖女にみんなの動きが止まった。

誰だ!? こいつ誰だ!?

「わ、わかった。ではいっていいぞ」

ようやく通行の許可が出た……で、でもこいつ、誰だ?




「あーしだってさぁー、TPOわきまえてっからー。ひつよーなときはひつよーな言葉遣いできっからー」

関所から離れた場所でケラケラ笑った。

聖女が帰ってきた。おかえり、聖女。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん

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― 新着の感想 ―
[一言] もとがギャル語でご令嬢な喋りが後付なのかもとがご令嬢でギャルが後付なのか 狐面のお姫様は有名人になってしまったのか
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