聖女
聖女。
900年前、王国の建国よりもさらに前にジェルミ教団の開祖となり、聖なる奇跡を幾度も起こしたと言われるアント・ジェルミの母親、ジゼール・ジェルミを起源としている。
聖女は1代に1人であり、先代の聖女が亡くなるのと同時刻に新しい聖女が生まれると言われていた。
彼女らは奇跡の力を使いこなし、人々に恵みを与えていたという。
聖女は生まれてから15年間は教団で厳しい聖女教育を受け、当代のベアトリス・ロビネも3年前に人々の前に姿をあらわすようになったばかりだ……15年の教育で3年前から、か。本当に私と同い年なのか。
この聖女、ベアトリス・ロビネは原作ゲーム、王冠の野望にも登場する。
ゲーム内で武将列伝と呼ばれる武将の一言紹介には「魔法の力を駆使して神の威光を示す」と書かれているのだが実際の能力値は魔力38だ。
魔法は使えるけど「使いこなす」というには弱すぎる。
しかし、実は統率力が99なのだ。これはゲーム内第2位の高評価であり、シナリオ1開始時点で彼女以上の統率力100の武将は登場していないので、現時点でナンバー1なのである。武力は23なので、こっちは、まぁ、という感じだけど。
「実は武闘派」という、この能力値はゲームの開発スタッフが統率力と魔力を間違えて設定したと評判だった。実際にゲーム内ではエモン団長とコンビを組んで周囲を荒らし回るのが仕事みたいなところがあったし。
で、なんだ?
「あーしさぁー、なかなか外出させてもらえないからさぁー。こーやって喋れるだけで感動案件よ! 3150」
んー? ……いけないいけない。真面目に考えれば考えるほど脳がバグる。
「これでいいの? あってるの?」という顔をエモン団長に向けたが、エモン団長からは「なにかおかしいことあった?」というイノセントな目を向けられた。これ、普通? マジで?
あれ? おかしいなぁ。いや、原作ゲーム、王冠の野望は特に武将が喋るような機能はないから実際どんな口調であってもいいんだけどなぁー。
んー、じゃあいいのか……いいのかぁー?
いや、待てよ……
私は前世のことを覚えている。転生前の記憶もちゃんと持っている……「この世界で私だけが特別」という方がおかしいだろう。
私以外に誰かが転生していてもおかしくない。その誰かがギャルでもおかしく……んー、おかしくないと断言していいのかなぁ。
とりあえずカマをかけてみよう。
「喉が乾きませんか? タピる?」
「え、なにそれ? ジェっちゃん難しいこと知ってんねー」
ケラケラ笑われた。
タピオカすら知らないってことは多分転生ギャルじゃないよねぇ……え、天然なの、これ? 逆にすごくない?
っていうかジェっちゃんって私か?
「あーしさぁ、ずっとジェっちゃんに会いたかったんだよー! ウェーイ!」
「うぇ、うぇーい……?」
不思議そうにセリーヌお義姉様が聖女の言葉を繰り返した。セリーヌお義姉様、貴女は染まっちゃダメです。
「でもさー、ジェっちゃんに会いたかったのもそうなんだけどさー」
うーん、明るい子であるのは確かだし、口調以外に好感度を下げるところはないし、こういうところは聖女なのかもしれないけど。
「あーしさぁ、ずっと、ずっと、ユーリっちに会いたかったんだよねー。せーじょきょーいくの一環でユーリっちの詩も学んでてさ、ユーリっちって世俗の詩だけじゃなくて、宗教的なやつもキメてっから。つかユーリっちって語彙力やばくない? あの詩って奇跡レベルっしょー。やべーわ」
やばいのはお前だ、と思っておく。転生前は大人だから口には出さない。っていうか……やっぱりユーリお兄様はすごい人だ。すごい人だけどユーリっちはやめろ。
「それでさぁー、ちょっとジェっちゃんに相談したいことがあるんだけどさー。教団の一部でユーリっちを聖人認定しようって動きがあるんよー」
……なんだと?
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:きつねさん