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訪問

お兄様は私への護衛ということでデニスとヨアンとローランを貸してくれた。

アルノーとフレデリックは情報収集で王都近郊に残っていたため、まだ帰ってきていない。

恐らくは各地で情報を集めながら帰ってくると思われるのでゆっくり動いているのだろう。

馬に乗れない私のために馬車でセリーヌ湖へ向かう。

ヨアンが御者を務め、デニスとローランは私と同じく馬車に乗り込んだ。ゆうて貴族ですから。高級ですよ、馬車。あー、貴族でよかった。座り心地ふっかふか。


「ベルナールお兄様から2年前にシュバリエの……んっ、シュヴァリエの一族と組んで亜人から領地を守ったと聞いたのだけど、デニスとローランもそのときは亜人狩りしたの?」

噛んじゃった。ヴァっていう発音慣れないなぁ……ヴァッヴァッ。

デニスは私の問いに苦笑しながら答える。

「ジェルメーヌ様は我々をなんだと思っていらっしゃるのですか。亜人狩りなんてできませんよ……我々は狩られる側です」

えっ、そんななの?

「あのときは確か、ベルナール様から『必ず3人一組で亜人1人に対するように』という指示が出ていたはずですね」

3人がかりでやっと有利がつくようなやつらかぁ……

「やっばいじゃん……」

「やっばいんですよ」

それなー。


スタッド山脈にはそんなやつらがうようよらしい。なんて領地だ。

シュヴァリエ一族のご先祖ちゃんもよく抜けられたなぁ、そんなとこ。


「亜人って周期的に攻めてきたりする?」

「周期……?」

首を捻って考えるデニスとローラン。

「そう、ですね……何十年かに一度、大規模な襲撃があるようですが……2年前の襲撃のさらに前のものは俺達もまだ生まれる前のことで」

「あぁ、じゃあきっと亜人達の繁殖がピークを迎える周期なのね。人口が増えすぎて山の中だけじゃ追いつかなくなって、やってくるってことなんでしょう。2年前にそれがあったのなら……しばらくは大規模な襲撃に対する備えというのはいらないのかもね。そのあたりは推測でしかないからあとで歴史を調べてみましょう」

私の言葉に首を傾げるデニスとローラン。

「数人の亜人が村を襲うことはちょくちょくありますが」

「数人っていうくらいだったら、迷子なんてどこにでもいるってことなんじゃない?」

私の言葉にデニスが笑い、ローランはおどけて肩をすくめた。




窓から外を見ると風光明媚な湖畔の光景が広がっていた。


集落はかなり大きいものだった。都市とまではいえないけど、人口1万人に近いということだったから、かなりのものだ。

粗末な家が多い。あまり裕福ではないのかもしれない。


そして、なによりも住民から刺すような敵意のこもった視線を感じた。そりゃそうよねー。馬車に堂々と家紋入れてるもの。貴族ですから。

ごめんねー。なんか、こう、あなた達の恨みを刺激するようなことをしちゃって……

恨むのって疲れるもんね……

本当に申し訳ないと思った。


シュヴァリエの一族の長の館も質素なものだった。

「ありがとう」

デニスのエスコートで馬車から降りる。

石を投げられることこそないが、ここまで敵意が向けられてるとは思わなかった。

「北はあっちでいい?」

館に入る前にデニスに確認する。

「はい、そっちです」

頷いてから、北の方に向かって頭を下げる。

深々と、しばらくの間沈黙。そして頭を上げてデニス達3人に告げる。

「よし、いくわよぉ」




来訪を告げ、長に面会を求めるとあからさまに迷惑そうな顔をした青年に……迷惑そうではあるが拒絶されることはなく、部屋に通された。


そしてそのまま3時間くらい経っている。


「さすがに待たせすぎではないでしょうか」

ヨアンがイライラしたように呟く。

「あー、ごめんねー。なんか一緒に待たせちゃって」

ヨアンに謝ると、彼は慌てたように言った。

「いえ、ジェルメーヌ様が悪いのではなく、シュヴァリエどもが……」

「私のことだったら別に。待つのは苦じゃないし」

課長からもっとひでぇハラスメント受けてたし。課長からおっぱいを揉まれるたびに5000兆円もらっていたら今ごろ私は大金持ちだ。1回でも大金持ちだね、これ。

「お茶も出さないで……」

「喉渇いた? ごめんね。もらってこようか?」

「いやいや、ジェルメーヌ様が……」

そんなやりとりの中、ドアが開き、私は立ち上がって頭を下げた。

飛び込み営業みたいなもんだしね。私は営業職じゃなかったけど。




シュヴァリエの一族の長、マリウス・シュヴァリエだった。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

マリウス・シュヴァリエ:マルコ・マテラッツィ

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