表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/240

開演

ふっ……












……っと、気がつくと、私は煌びやかなダンスホールにいた。

ものすごい高そうな調度品とキラッキラしてる連中が周りにいる。

あれ? さっきまでデスクで残業してて、今週は40時間ほど残業してて、家には何日前に帰れてたかよく覚えてないけどパソコンの前でキーボードを叩いてて、なんで私こんなことやってんだろうって涙が止まらなくなって、不意に眠くなって……


……そしてここにいた。


いや、ここどこよ。

まず自分の格好をチェック。

んっんー? 控えめに見てお姫様みたぁい。

「もしこの格好をイラストに描く人がいたら大変じゃない?」っていう感じのフリルを、これでもかって盛った黄色のドレス。

でも周りの人もこんな格好だし、もっと派手な人もいるし、なんか舞踏会的なやつなんだろうか?

あと自分の手、白っ。なにこれ、貴族かよ! ……貴族かよ、もしかして。

周囲をチェック。

ジェントルジェントルしてるおっさんとかおばさんとか若い子とかイケメンとかメイドさんとか、なんだこれ。

さっきまで課長が「そのでかすぎる胸のせいでキーボードが打ちにくくて仕事ができねぇんだろうがよ」とか言ってた方向には私を不思議そうに見てるおっちゃんがいる。

課長よりも品はよさそうだ。おっぱい揉んでこなきゃなんでもいい。

観察してみるとその服は明らかに高そうで、これ庶民じゃないよなぁ、という感じ。


「どうかしたのかね?」

「ぴぇ!」

おっさんがいきなり声をかけてきて驚いた。

「い、いえ、なんでもございませんわ、ディオメド侯爵」

なんとか取り繕う。ん、いや、待て。私、今、なんつったか?

私はどうやらおっさんのことをよく知っているらしい。

侯爵? 貴族かよ、やっぱり。

ってことはやっぱりあれか?

私は王子様に婚約破棄される未来なのか。ヤダー! よくあるやつー!

婚約破棄されて、どうすればいいんだ?

課長には「無駄にでかい乳を使って取引先を誘惑してこい」とか言われてて、あっ、なんかむかついてきた。課長むかつく。ぶち転がすぞ、課長。

「ふん、ペドレ……伯爵家の田舎者は、こんな場所には不似合いだと気づかんのか」

おっさんがぶつぶつ呟いてどっかに行った。課長よりはむかつかない。おっさんオッケー。

家名のところは声が小さすぎてよく聞こえなかったがうちの家は伯爵家らしい。

しかも田舎もんらしい。

私が王子の婚約相手だったらいくらなんでもこんなことは言われないだろう。

あと、もし私が王子の婚約相手だったらさっきのおっさん以外にもいろいろ話しかけられているはずだろう。

ボッチ素敵!

つまり私は貴族の家の一員だけど凡百のどこにでもいる存在ってことだ。いいじゃないいいじゃない。

田舎に引っ込んで貴族らしい生活を送るなんて、課長におっぱい揉まれるよりはるかに健康的に生活できる。課長早くくたばらねーかな。


私が今までプレイしたことのある乙女ゲームを思い出してみたがぺドレなんとかさんなんて名前は……ん? あれ? 聞き覚えが少しだけある気がする。伯爵だよね……伯爵……

なんだろう。

首を捻って考えるが乙女ゲーム、BL本、同人誌……該当はなさそうだ。

なにか聞き覚えがあるところは多少引っかかるにせよ、つまり私は正真正銘のお姫様であり、婚約もしてないないので王子様に婚約破棄されて処刑される心配はないということである。

いえーい!


少し離れた場所に人だかりがあることに気づく。

あれは……国王陛下かな。

中心にいる若きイケメンがヴァンヌッチ国王陛下。

その周りに宰相デュマ大公。陛下の親衛隊長ドゥトルエル様。大司教のメンディ猊下は今日もにやけていらっしゃる。

国王の妹が確か私と同い年だったか? 王女ルイーズ殿下は普段は王都の学園での学友で、私はその取り巻きというわけではないが、仲良くさせてもらっているはず、だけど、今はいないみたい。

王子っぽい年齢の人はいなかったはず。


……多分、この人物の顔と名前が一致しているのは今、私の体のお姫様の知識なんだろうけど、どこかで聞き覚えがある名前だ。

んっんー? 聞き覚えというか見覚えもあるような気がする。

とりあえず、今わかったこととしてはそうか、私は普段は領土にいるんじゃなくて王都の学園に通っているんだな、ということ。

「ここにいたのか、ジェルメーヌ。あまり離れるんじゃない」

後ろから声がした。

「だって、ベルナールお兄様ったら、ご婦人とのダンスに夢中なんですもの」

なんだ? 私に声をかけてきたのは兄か? ベルナールさんっていうの?

なんかこのお姫様の人物知識だけでかなり助かるなぁ。


……そんなことを思いながら振り返って、兄の顔を見て、そしてこれがなんの世界なのかがわかった。


兄は不精に髭をはやしてはいるが、高身長のイケメンといえるだろう。


ベルナールお兄様。

フルネームではベルナール・ペドレッティ。

私はその妹のジェルメーヌ・ペドレッティ。


兄の顔はよく知っていた。

だって、兄で一番プレイしていたから。

一番やりこんでいたから。


国王や宰相の名前も含めて、すべてがゲームの登場人物だった。

乙女ゲームではない……






そう、これは剣と魔法と魔物と妖精の世界を舞台にした戦略シミュレーションゲーム「王冠の野望」の世界だ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

ベルナール・ペドレッティ:ジャンルイジ・ドンナルンマ

セドリック・ヴァンヌッチ:ロレンツォ・ペッレグリーニ

ダニエル・デュマ:ダニエレ・デ・ロッシ

ギー・ドゥトルエル:シモーネ・ペロッタ

ジョエル・メンディ:アントニオ・カッサーノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ