第7話 わたしはボッチ聖騎士です!
ソランジュは、リッコが着ていた鎧をなで回す。
匂いまで嗅ぎだすのでは、という勢いだ。
ともあれ、緊急事態から脱出できたので、よしとする。
ヨロイたちには、貴い犠牲になったもらう。
「剣も盾も一級品だ。これだけの数を揃えるのには、時間が掛かっただろう」
「一ヶ月ほど」
正直にリッコが言うと、ソランジュが目を丸くした。
「そ、そういえば、ここには一人で来ていたね。他の仲間は?」
「あいにく、誰も仲間にできず」
リッコ・タテバヤシは、聖騎士である。
冒険者学校で、最も難しい職業と言われていた。
生まれたときから故郷で過酷な修行をしていたリッコにとって、聖騎士の訓練はさほど難しくなかったが。
そのため、リッコは剣も回復魔法も扱える。
盾を使って味方を援護もできる職業なのに。
「お金には困っていないんですよ。分け前は全部自分のものだし」
常に一人なので、酒場でも割り勘がない。
「これは、魔法金属製だな。とはいえ、身軽になるような特殊加工など施されていない。よくこんな装備で、軽々と野山を駆け回っていたね」
細い指が、剥き出しになったリッコの太ももを撫でた。
「単にバカ力なだけです」
そんな女には、男性も寄っこず。
ともあれ、こんな体力自慢だからこそ、聖騎士という万能職につけたとも言えた。
「キミはこれまで、どんな強い魔獣と戦ったんだ? すべてドロップ品だろ?」
その通りである。始めは店売り品を使っていた。
ドロップアイテムを活用できないかと、武器屋の大将に相談し、格安で作ってもらえている。
盾の素材に使ったドラゴンのウロコなんて、「レア中のレア」と言われた。ゲットできても、重すぎて誰にも扱えないとも。
「これだけ揃えられる人材なら、仲間には困らないだろ?」
リッコは、これまで自分がパーティ入りにしくじってきた事情を説明する。
「ふむ。変人扱いされて、誰もパーティを組みたがらなかったと」
「ただ、みんながやろうとしない依頼しかなくて、仕方なく全部引き受けていたら、街から一目置かれるように」
「そりゃあ、上級者でも嫌う危険な依頼に飛び込むなんて、常軌を逸しているよ」
ごもっともだ。
「でも、ソロだとそういうものしか残ってなくて」
「ん? 話が見えない。ソロほど簡単な依頼に飛びつきそうだけど?」
「ほとんど刈り尽くされてしまって。収益を得ようとすると、高度な依頼しかなく」
持って生まれた人見知りも発動し、
「人海戦術は必要としていないが、大人数でも躊躇うような高難度依頼」
に、リッコは飛びついていた。
しかし、そのせいで周囲から恐れられるように。
リッコは仲間が欲しいだけなのだが。