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道ばた魔法使いの放浪生活  作者: しろいさくら
オオカミとひつじと私
8/21

オオカミとひつじと私@8

 事故にあった時とか、自分自身が危険な状況になった時って、なんか時間の流れが極端に遅くなる感覚があるってよく聞くけど、私はそれをゲームの中で体験している。

 あの大きな爪が迫ってきていて、目をつむる余裕すらないのにどうして?


 まあゲームだし、ここで死んでももう一度やり直せるじゃん。

 もう少しレベル上げてさ、スキルのランクも上げないとね。


 でも、そんな諦めモードの私なのになんでか時間はもっとゆっくりになっていく。

 どうして?


 なにか私やっているのかな?


 スキルでそんなの持ってないし、システム的な何かがある?


 でもそんなポップアップはない……ん?



『スキルを入手しました。

「フローズン・バースト ランク1 基本ダメージ60 熟練度0


 効果:即時発動、凍結 強制ノックバック。


 説明:自分の周囲に氷属性のダメージを与えるスキル。囲まれた時やカウンター時に使うと良い」



 なんだこれ…… 新スキル??


 よくわからないけどこれ使えば何とかなるのかな?


 詠唱している暇はないけど、やれるだけのことはやってみないと!!

 そう。全ては……


「ひつじさんの平和のために!!!」


 私はすぐさまフローズン・バーストを詠唱……と思ったら、すぐに発動した。


 私の足元に青い魔法陣が現れ、そこから私の周りにつららが地面から一斉につき上がる。


 巨大なオオカミはそのつららの一本が前足に突き刺さり、そこから全身に氷が侵食。一瞬にして氷漬けになった。


「すごい…… って!!」


 私はすぐにオオカミから距離をとってファイアアローを詠唱。

 ポーションも全て使い切って、マナもこれで最後。

 ファイアアロー六連射で倒せなかったら私は死に戻りしかない!!


「これで!!!」


 詠唱を終えると、氷は砕け、オオカミは大きく仰け反る。

 氷の砕けた時のダメージも入り、そこに私の最後の一撃を加える。


「落ちろォォォ!!!!」





 私の渾身の一撃。


 体制を崩しているオオカミの首から顔全てに私の炎の矢が襲いかかる。


 大きな爆発と煙がオオカミを包み込む。


 その数秒後には私のもとへ衝撃波が押し寄せ、砂埃が目に入りそうになる。


 煙の中のオオカミの様子は分からない。


 動いている様子はない。



「やった……のかな……」



 フラグを立ててみた。


 だんだんと煙も落ち着き、その大きなシルエットがだんだんと見えてきて、



『まさかわしが魔法なぞにやられるとはなぁ……』


「へっ????」


『オオカミ殺しのひつじ。その名は伊達でなない。ということかのぉ』


「えーっと……はい??」


『おぬし、わしの言葉がわからんのか? 一応人間の言葉を使っているつもりなのじゃが』


「えーっと……オオカミ??喋ってる??」


『うむ。わしはこの周辺のオオカミを束ねている者じゃ』


「うわぁぁ…… 賢いAIだなぁ……」


『AI……確かに。 まあそんなことはどうでも良いが、お主は何のためにオオカミを殺す』


「それはひつじのために決まっているじゃないの。 あんなか弱い子を」


『か弱いか。 確かに。 しかし我々にとってはあれは必要なのじゃ。お前たちが食事をするように』


「うっ……」


『最近動物愛護がなんだーって騒いでるがな、植物だって生きている。それを摘み取り食べる』


「ごもっとも……」


『自然の摂理じゃよ』


「じゃあ自然の摂理だから、ひつじを助けるのやめろって?」


『そうじゃな。もし我々が居なくなれば、羊は増え続け、この草原の草は全てなくなってしまう。草木がなくなれば――』


「というか、なんでゲームのAIにこんな話されてるのかわからないわ」


『まあそうじゃな…… わしは負けた。 お前の望みどおり、この一帯のオオカミは少なくなるだろう……』


「ひつじさんの平和が訪れるってわけだね」


『一時的な』


「ここはゲームなんだよ?そんなリアルな自然環境みたいに、オオカミみたいなのが減れば草食動物が激増して餌を食い尽くして草食動物減少。オオカミもご飯がなくなって森の生き物全滅。とかありえないでしょ」


『お前にとってのゲームはわしにとってのリアルだ』


「わけがわからない……」


『まあ、この先どうなってもわしは知らぬ』


「結構です!たかがゲーム。何も起こらないよー!」



『人間も自然の一部。なれば人間の行いも自然の摂理ということか……』


「なにかいった??」


『いいや。 ともかくわしはここで終わる。 この奥にある物はお前が好きなようにすればいい』


「言われなくてもそうするわよ」





 私は倒れたオオカミを横目に、奥の小さな部屋に入る。


 古い木箱がちょこんと置かれていて、何らためらいもなく開ける。


「おー。ん?」


 そこにはひつじの毛で作られたと思われる真っ黒なローブがあった。

 ステータスを確認してみたけれど、補正効果は何にもない。衣装用だ。


「初期装備ではじめの服を着ているよりいいかー」


 そんな理由で、私は黒いローブを羽織る。


 もう見た目はやばい魔法使い。

 見た目と中身は一致しないけれど、まあいいでしょう。



「さーて、学校に行って報告してこないと。 私の本来の目的はこっちだし」


 私はさっさと出口へ向かい、ダンジョンを後にした。




プレイヤー名『ハヤミ』

レベル   『29』

所持品   『木の棒196本 初心者の服 魔法使いのローブ ズボン 靴 マナポーション10 0コ マナポーション30 0コ スタミナポーション20 23コ いちご295コ  釣り竿 釣り餌ベニマス四匹 ウグイ六匹 謎の肉98コ』

所持金   『635G』」


所有スキル 生活『植物採取L1 植物知識L1 釣りL1』

      魔法『アイスアローL5 ファイアアローL5 ライトニングアローL5 フローズン・バーストL1』

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