オオカミとひつじと私@4
案内を頼りに進むとそこには洞窟があった。
入り口はそんなに大きくないけれど、人が通りには十分の大きさだ。
「よーし!がんばるぞー」
木の棒を握りしめ、洞窟の中に入る。
ちょっとワクワクするけど不安も大きい。
洞窟の中はまだダンジョンではなく、いわゆるダンジョンのロビーとなっている。
周りには松明と大きな扉があるだけで、ほかに珍しいものは一切ない。
たぶんあの扉の先がダンジョン内部だと思う。
「とりあえず装備は木の棒ね。魔法があるから多分大丈夫!」
私は扉の前まで行き、右手を扉に触れると選択バーが出てきた。
『ベステルダンジョン』
難易度選択
・通常
・中級
・上級
今回のクエストは通常なので通常を選択。するとゆっくり扉が開き、先へ進む階段が現れた。
先の見えない階段は結構怖いけど行くしか無いよね。
くらい階段を降ると小さな部屋に出た。
いかにも洞窟ですって感じで、明かりは松明の光だけ。
ちょっと辺りを見回してみたけど、松明と階段、それに通路が一つだけ見えた。
たぶんこの通路を進めばいいんだよね?
「ダンジョンっていうか迷路だといやだなー」
私は一応左手を壁につけて先へ進むことにした。
これはいわゆる左手の法則。迷路を抜け出すテクニックらしいけど、本当かな?
私の予想はハズレ、この通路は一本道だった。
何事もなく進むことができてよかったのなーなんて思っていると進行方向に灰色のちっこい何かがうごめいている。
「なにあれ……カサカサしてる」
Gなら黒だしあれは灰色だから別の生き物だと思う。
私が恐る恐る近づくと、その灰色の何かが突然襲ってきた。
「えっっあえ!ちょっと!」
HPゲージとその上に名前が書いてある。灰色ネズミだ。
攻撃方法は体全体で体当たりしてくるだけ。それでも貧弱な私には結構痛い。
「いきなり攻撃してきたら魔法が撃てないじゃないー!」
一匹に見つかると二匹目三匹目と次々ネズミが群れてくる。
私は一種のタコ殴り状態だ。仕方ないので木の棒を振り回してネズミたちを追い払う。
「一匹のダメージは低いけど群がるとやばいわぁ……」
私は木の棒でねずみたちに応戦。幸い硬い敵じゃなかったから木の棒でも二~三発入れれば倒せた。
しかしまだまだネズミはいっぱい居る。
スタミナが切れそうだけど休んでいる暇はない。
「うりゃぁぁ!とりゃ! ネズミ如きが私に楯突くとはいい度胸だ!」
一匹一匹確実に倒していき、ようやくネズミをすべて倒した。
「ぜぇぜぇ…… 今度は魔法を予め詠唱しておこう……」
ネズミとの激闘でスタミナが酷いことになっているので、いちごを食べて空腹度を回復させてからスタミナポーションをがぶ飲みする。
柑橘系の酸味のあるポーション。なかなか癖になりそうだ。
「よし。とりあえず詠唱だ!」
私はアイスアローを六回分詠唱してから先に進む事にした。
多分ネズミなら一発で倒せると思うから六匹までならまとめて相手にできるね。
それから何事もなく先へ進むと、開けた場所に出た。
この場所も特に変わったものは無いのだけど、ここには私の永遠のライバルが二匹居た。
「ここであったが百年目!羊の敵じゃ!」
灰色オオカミがそこに居たのだ。
ステータスも多分フィールドと変わらないから問題ないだろうと思っていたのだけど、ここはダンジョンの中。いくら開けた場所とはいえフィールドと比べたらかなり狭い。
私の存在に気がつくとすぐさま二匹で私に攻撃しようと走ってくる。
「しかし!昔のハヤミさんではないのだ! くらえっ!」
私は一匹づつ交互にアイスアローを発射。
アイスアローの効果で移動速度が減少。更に軽いノックバックがついていて私に触れる前に二匹とも力尽きてしまう。
「羊をいじめた罰だ……あの世でせいぜい悔いるがいい……」
捨て台詞をかっこよく決めた後はアイテム回収をこなす。
ドロップ品はフィールドと変わらないみたい。
「さてー次いきますか」
こんな感じで、ネズミとオオカミを軽々倒していき、だいぶ深い場所までいったなーと思っていると――
「わおっ でっかい扉」
鉄格子のような厳重な扉。
その先はダンジョンの中で一番広い場所に見える。
ここはもしかして……
「とりあえず行ってみますか」
私は扉に触れる。
選択バーには入るか入らないかの選択があった。私はもちろん入るを選択する。
すると扉がゴゴゴーっと開いて、中に入れるようになる。
「さてー どうなりますかな」
入口付近で辺りを確認してみたのだけど、何も居ない。
広場の先にはもう一つ扉があり、そこは開いている。
「あっちへ行けばいいのかな?」
私はゆっくりと部屋の奥へと進むと、ダンジョンが揺れ始める。
「えっ?なになに?!」
「ワオォォォォォン」
黒いもやもやが突然現れたと思ったらそれが消え、私の目の前に大きなオオカミが出現する。
もはや動物ではない、怪獣だ。
「うわぁ……でっかいオオカミだ。ありゃ羊を丸呑みしちゃうぞ……」
私はちょっとした危機感を覚えた。
このままこいつをほっといてしまったら羊が晩御飯になってしまう。
それは避けねばならぬ!私の使命!
「デカイからっていい気になるんじゃないよ!ワンコロ!」
「ガルゥゥゥ」
鋭い牙に強烈な眼光。少し鳥肌が立ってしまった。
「とりあえず小手調べ。アイスアロー六連射!」
私は大きなオオカミにアイスアローを放った。
プレイヤー名『ハヤミ』
レベル 『13』
所持品 『木の棒26本 初心者の服・ズボン・靴 マナポーション10 4コ スタミナポーション20 5コ いちご9コ 釣り竿 釣り餌ベニマス四匹 ウグイ六匹 謎の肉12コ』
所持金 『652G』」
所有スキル 生活『植物採取L1 植物知識L1 釣りL1』
魔法『アイスアローL1 ファイアアローL1 ライトニングアローL1』