オオカミとひつじと私@3
さて、今日もログインしたのだけど何をしよう。
とりあえず羊の観察はするとして、スキルでもちょっと調べてみようかな~ なんてメニューをいじくり回す。
私はクエストタブを流し読みをしていて、一つ気になる項目があった。
「学校へ行こう?」
どうもこの世界にも学校は存在していて、ちゃんと授業が受けられるらしい。
学科が二種類あって、戦術学科と魔術学科だ。
初心者には戦術がおすすめと書いてあるけれど、私はあんまり好きじゃない。
オオカミと戦っていて思ったのだけど、あの叩いた感触がすごく気分が悪い。
なんというか、罪の意識?罪悪感?がすごいの。
「ここは魔術学科かな。魔法っていろいろ便利そうだし」
ということで魔術学科を受けることにした。
学校の場所だけど、私が釣りをした池の横にあるらしい。木で囲まれていてわからなかった。
アーチ状の校門を抜け、私は魔術学科の授業が受けられる魔法科の教室に入る。
そこにはもうすぐ二十代後半といったところの女性が居た。たぶんNPCだとおもう。
名前はエリサというらしい。
私はエリサに話しかけてみる。
「こんにちわ。なんの御用かな?」
「魔術学科の授業が受けられると聞いて来ました」
「あぁー村長さんの紹介ね。わかったわ」
「よろしくおねがいします」
「それじゃあまず始めに。魔法は非常に難しく、並の人間じゃ取得するのは難しいスキルです。でも取得すればあなたにとって大きな財産になるでしょう」
エリサ先生?はそれから魔法の基礎知識や初級魔法についていろいろ説明してくれた。
とりあえずわかったことだけど、魔法には氷・炎・雷の三属性と無属性があること。
初級魔法は三種類で、それぞれアイス・ファイア・ライトニングアローというスキルという。
今日の授業で私は初級の中の初級。アイスアローのスキルとアビリティポイントを貰い、教室を後にした。
「とりあえずアイスアローをスキルスロットにセットしてっと」
授業の終わりに課題と言うなのミニクエストをもらった。
クエスト内容はオオカミの討伐。一匹でも倒せばいいみたい。
これは羊の安心と安全を確保できるのと同時にクエストをこなせる。一石二鳥だ。
「さてさて、私のかわいい羊を襲うオオカミはどこだぁ!」
私は急いでいつもの草原へ向かう。
今日はまだオオカミが攻めては来ていないけれど、森の入口付近には少なく見ても二匹は灰色オオカミの姿が確認できる。
「よしよし……私の魔法をくらえぇぇ!」
私はアイスアローを詠唱する。
このスキルはチャージすることができて、チャージ数に応じて攻撃回数が増える。
私は最大チャージの六回詠唱をして射程ギリギリまで近づく。
「フッフッフ。今までの私とは違うのだよオオカミ共」
私の周りをくるくる浮遊する氷の矢を一つ手に取り、オオカミに投げつける。
ひゅんっと一直線に灰色オオカミに飛んでいき、胴体に突き刺さる。
「キャンッ!」
攻撃があたったオオカミは小さな悲鳴を上げてのけぞる。
私はすぐさま次の矢をオオカミに向けて放つ。
どうやら魔法は自動追尾らしく、めったに外れることはないみたい。
まだスキルレベルが低いので与えられるダメージ量は少ないけれど、最大チャージのアイスアローをすべて当てれば倒せる。これは良いスキルだ。
「次はお前だぁ!!」
最初の一匹をノーダメで倒してリチャージ。もう一匹のオオカミに六連射する。
「うりゃ!うりゃぁ!うりゃぁぁぁ!!」
「キャンッキャンッ!!」
六発目が当たるとオオカミはパタンと倒れ、アイテムが飛び出る。
私は二匹分のアイテムを回収して辺りにオオカミが居ないことを確認。
クエストもちゃんと達成していたので、ゲーム時間で次の日にまた学校へ堂々といけるのだ。
宿題はちゃんとしないとね。
「草原の平和は守られた!私を崇めるが良い!羊たち!」
私は羊の群れの真ん中に入り、仁王立ちして全チャを流す。
まあ変人扱いになるだろうけどロールプレイロールプレイ。
「さて、空腹ゲージがやばめだから売るもの売っていちごを買おう」
私は行きつけの飲食品店へ向かった。
いちごを買って空腹を癒やし終えた私は辺りがすっかり夜になっているのに気がつく。
一応このゲームにも宿屋はあるのだけど、時間経過が早くなるわけではない。
仕方ないのでインベントリに大量に圧迫している枝を使って焚き火をすることにした。
いつも座っている木の下に移動して近くに焚き火をセット。
火をつけるとほんのり温かい炎が立ち上がる。
やっぱり焚き火は落ち着くね。リアルだと煙臭くなるけど、ゲームなら問題なし!
「焚き火にいちごってのは少しミスマッチかなー」
私はインベントリをあさってなにかいいものは無いか見てみた。
そこで思い出したのがベニマスだ。
数日前に初めて釣った魚。焚き火といえば魚の塩焼きだよね。
「でもこれって料理スキル必要なのかな……私持ってないけど」
不安になった私は一応スキルタブを開いて確認してみる。
確かに料理スキルは存在するが、私は未習得。これでは調理はむりかな。
「まあいちご好きだからいっか」
私はいちごを一粒口に放り込む。
それから次の日になり、また学校へ行く。
ちゃんとクエストも達成していたので授業も無事に進み、その日の課題も難なくこなした。
スキルと一緒にアビリティポイントが貰えるってのは太っ腹だね。レベル上げしなくてもちゃんとスキルが使えるようになる親切設計。いいわー
こうして3日間の授業が終わり、魔法スキル三種を手に入れた。
『アイスアロー ランク1 基本ダメージ20
効果:ダメージを与えた敵の移動速度減少
説明:初級魔法の一つ。魔法使いの第一歩はこのスキルから』
『ファイアアロー ランク1 基本ダメージ20
効果:強制ノックバック。最大チャージ時ダメージ1.5倍
説明:初級魔法の一つ。炎属性魔法の基礎中の基礎』
『ライトニングアロー ランク1 基本ダメージ40
効果:チャージ数に応じた範囲攻撃。最大六体まで
説明:初級魔法の一つ。初級魔法の中では最大の威力とスペックだが扱いづらい』
3日の授業で覚えたスキルはこれら。
これがあればオオカミなんて一撃だ。
「それじゃあこれで授業は終わりだけど、最後に試験を行います」
「試験ですか?」
「はい。この村の北にある洞窟。そこはダンジョンになっています。そこをクリアしてきてください」
「北にある洞窟かぁ……言ったこと無いな」
「スキルの特性をちゃんと理解していればクリアはできます。がんばってください」
それだけ言ってエリサ先生は会話を終了してしまった。
右下にクエストのテロップが表示される。
『ベステルダンジョン-通常-をクリアする』
私はクエストの説明欄に下にある案内ボタンを押して、ベステルダンジョンへ向かう。
プレイヤー名『ハヤミ』
レベル 『12』
所持品 『木の棒26本 初心者の服・ズボン・靴 マナポーション10 6コ スタミナポーション20 10コ いちご12コ 釣り竿 釣り餌ベニマス四匹 ウグイ六匹』
所持金 『652G』」
所有スキル 生活『植物採取L1 植物知識L1 釣りL1』
魔法『アイスアローL1 ファイアアローL1 ライトニングアローL1』