オオカミとひつじと私@1
はじめましてこんにちわ。最近始めたMMORPGで「ハヤミ」という名前で絶賛プレイしています。
現在私は何をしているのかといいますと、羊と狼の喧嘩を眺めているところです。
何を言っているかわからない?まあそうでしょう。
それでは、もう少し詳しく説明しましょう。
ここはヨーロッパのとある島がモデルのよくあるMMORPG。タイトルを言うとちょっと偉い人からお叱りを受けそうなので割愛しますが、私はこのゲームを二週間ほど前からプレイしています。
なぜこのゲームを始めたか。
とにかく羊が可愛いから!
あの尻尾がたまらない!
普通の時、怒っている時、嬉しいときのしっぽのモーションがまあ愛らしい。素晴らしい!
ただそれだけでこのゲームを始めたのです。
学校から帰り、真っ先にPCを起動。
VRヘッドを付けて早速ゲームにログイン。
吸い込まれるようなログイン画面をすぎると、一瞬暗くなり、それから段々と周りの風景が表示される。
ここは最初の村の近くにある草原。
ここには放し飼いのひつじ(NPC)がいっぱいいるので、私のお気に入りの場所。
というか、初めてプレイしてこの場所を見つけてからはずっとここで羊と遊んでいるだけでその日のプレイは終了。ということが多々ある。
まあ最近のゲームはリアルだからいっぱい見るところがあるので退屈しないからね。
「今日も羊がかわいいねぇー」
ログインしてすぐ目の前には羊の群れがゆったりと過ごしている。
あぁ~癒やされる。このために私は生きているのだな~。
「あのちっこいしっぽがピクピク動くのがホントたまらん」
私はめぼしい羊に駆け寄り、抱きしめてしまう。
VRということで、感触もふわふわで気持ちがいい。お昼寝の枕にしたい位だ。
「さて、今日の活力も補充したけど……」
メニュー画面を開き、インベントリを漁る。空腹度が結構減っているのでご飯を食べたいのだけど……
「ない……いちごが一つもない……」
このゲームでの主食。リアルでも大好物のいちごがすでにそこを尽きていた。
仕方ないので買いに行こうとしたのだけど、ここでさらなる問題に直面する。
「うわっ……お金もないじゃん……」
いちごを買えるだけのお金が手元にないのだ。これは困った。
まだまだ初心者の私には戦闘で稼ぐという手段はないし、バイトも人数制限があるので枠がなければ受けられない。
どうしたものか……
「はぁ……仕方ないかな」
私は近くの大きな木を蹴り飛ばす。
「うりゃ!うりゃ! 木の実落とせ!!」
木を蹴り飛ばしていると(攻撃すると)稀に木の実が落ちる。
お金がないときはこの木の実で飢えをしのいでいるのだ。
「うりゃあぁぁ!」
それから五分位蹴り続けて、私の足元には枝が大量に転がっている。
そこから木の実だけを拾い、また別の木を蹴り飛ばしに行く。
「きーのーみー!よこせ!!」
そうやって二十分ほど蹴り続けることで、木の実を三十個確保することができた。
早速木の下に移動して、腰を掛ける。
インベントリを開いて、木の実を選択すると、手元に木の実が出現する。
それを一口いただく。味は……まあすごく美味しいわけではないけれど、食べられる程度かな?
「青臭くないだけマシかな…… 食べ終わったらまた羊さんと……ん?」
木陰で羊さんを眺めていると、森の方から灰色の動物が群れで降りてくるのが見えた。
耳はピンととんがっていて、鋭い目。
長い尻尾に発達した犬歯。
「ありゃ……オオカミさん来ちゃったよ……」
灰色オオカミ。この辺りに出現するモンスターだ。
比較的弱い分類なのだけど、このオオカミは羊に手を出す嫌な奴なのだ。
「また来たのね…… 羊たちもすっごい怯えてる」
羊はひとかたまりになって灰色オオカミを睨みつけている。
その時のしっぽがピンとなっているの。たまらないわ!
「仕方ない。私のもふもふタイムのため、あのワンコロを懲らしめるわ」
私は立ち上がり、木の棒を装備する。
『木の棒 攻撃力+5 クリティカル10% 耐久 10
効果:なし
説明:一般的な木の棒。杖くらいなら使えそう』
これは始めた日に拾ったアイテムで、武器として使えそうなので持っている。
これで何匹オオカミを倒したかわからない。
「お前らもこの棒切れのサビにしてやる……」
森から出てきたオオカミは羊を見つけると目を光らせ走り出す。
私も同時に飛び出し、オオカミに向かって突撃。
オオカミの数は五匹。
先頭のオオカミを私は木の棒で殴りかかる。
リアルのワンコロなら結構なダメージだけど、コイツらはモンスター。一発もらっただけではなんともない。
私は続けて攻撃をする。
それでもダメージ量は少なく、五発入れてやっと半分削れた。
「このっ!この! ひつじはやらせない!!」
私が一匹に苦戦していると、他の四匹は次々と羊を追い回し始める。
私も精一杯頑張っているのだけど、まだ一匹目すら倒せてない。
「おりゃああぁぁぁ!!」
私は渾身の一撃をオオカミの頭に入れる。
ドスッっといい音がしたと思ったら、オオカミはパタリと倒れ、少しのお金と肉を落とした。
やっと一匹目。
すぐにお金と肉を拾い、次のオオカミのもとへ向かう。
激闘の末、リアル二十分かかってやっとオオカミを全滅させた。
実は羊も戦っていて、最後の方は私と羊七匹でタコ殴りにしたのだ。オオカミなんて返り討ちだ!
「はぁー疲れた」
いくらゲームとはいえ、いっぱい動けば疲れる。
そろそろ夜になるなーなんて空を見上げ、思い出したようにインベントリを確認する。
「なーにかいいものあーるかなー」
お金は全部で365ゴールド。アイテムの方は、お肉が三個にマナのポーション10が三個。
「いちごが買える位は溜まったかな。あとお肉は全部売ろう」
せっかくなのだからお肉も食べればいいと思ったそこのあなた! それは罠です。
確かにお肉は空腹の回復量がいいので優秀かと思いますが、実はこのゲームには体型があるのです。
お肉等の高カロリー食品を食べると体型が変化して太ってしまうし、普通のパンでも空腹度がMAX状態で更に食べるとやっぱり太ってしまう。
太らない食品は主に果物や木の実。それに野菜系。ただし調理された野菜系は太ることもある。ドレッシングが行けないのかな?
「ゲームの中でも体型管理は重要よね」
私は暗くなる前に食料品店へ急いだ。
プレイヤー名『ハヤミ』
レベル 『8』
所持品 『木の棒13本 初心者の服・ズボン・靴 マナポーション10 3コ いちご20コ』
所持金 『365G』」
所有スキル 生活『植物採取L1 植物知識L1』