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VOL.06:新たな秘密共有者

 30分後、遼とキララは公園でいずみを待っていた。

「まったく、なんなの? 話があるんだったら、さっき会った時に済ませとけばよかったじゃないの」

 いずみはぶつくさ文句を言いながらもちゃんと公園にやってきた。

「ああ、済まんな。話ってのはほかでもない、ここにいるキララのことだ。さっき会った時は、オレの従妹だって説明したと思うが、アレは嘘なんだ」

 遼は軽く謝ると、単刀直入に話を切り出した。

「え、嘘って? じゃあ、キララさんはいったいなんなの?」

 いずみは呼び出しの時に詳しい内容を聞いていなかったので、どんな話なのか気になってはいたようで、遼が話を切り出すと、身を乗り出すように話に食いついた。

「ああ、その話をする前にひとつ言い忘れてた。これからオレが話すことは全部本当のことだからな。信じられないかもしれないけど、ちゃんと最後まで聞いてくれ」

 遼は話し始めようとしたが、ふと重要な注意を言い忘れていたことに気づき、話を中断した。

「もう、焦らさないでよ。とりあえず、話の内容を聞いてみないことには信じるも信じないもないわ。で、なんなの?」

 いずみがだんだんイラついてきたように足で地面をトントン叩きながら、遼に話の続きを催促した。

「おっと、怒るなって。そんなんだから粗暴とか言われんだよ。ん、また話がそれるところだった。で、キララはオレの従妹なんかじゃなく、この世界とは別の世界からやってきた、魔法使いなんだ」

 遼がいつものジョーク交じりにキララのことを話すと、いずみは遼に粗暴と言われた怒りも忘れて、ポカンとしていた。

「ゴメン、もう一回言って。キララさんはなんだって?」

 聞き間違いかと思い、いずみは遼に聞き返すが、

「だから、ハルゲンなんとかっていう、オレたちの暮らすこの世界とは違う世界からやってきた、魔法使いなんだ」

 遼は信じられなさそうないずみの表情を察し、ゆっくりと噛み砕くように説明してやった。

「……遼、悪いことは言わないわ、病院へ行きましょう」

 だが、いずみは遼を頭がおかしくなってしまったかわいそうな人扱いし、すぐにでも病院へ放り込もうと腕をつかんだ。

「待てって! ああもう、キララ! 適当に実演頼んだ!」

 遼は引きずってでも連れていこうとするいずみを踏ん張って振りほどくと、少し離れたところに立っていたキララに声をかけた。

「オッケー、たぶんこうなると思って、準備はしといたから、すぐに行けるわ! 行くわよ、“飛行魔法(フロイア)”!」

 キララはニヤッと笑うと、着ていた服から杖を取り出し、魔法を唱えた。

「えっ!? ちょ、あ、きゃああ!?」

 すると、キララの身体はふわりと宙に浮かび、そのままいずみに近づくと、いずみも一緒に持ち上げて空中散歩に出かけてしまった。


「わっ、わっ、高い! いやあああ!」

 いずみはキララに抱きかかえられるようにして10数メートル上空で連れまわされていて、自身の体勢の不安定さに悲鳴をあげていた。

「わわっ、いずみさん、暴れないで! 暴れたら落としちゃうわ! 仕方ないわね、もういっちょ、“飛行魔法(フロイア)”!」

 キララはなんとかいずみを抱きかかえていられたが、これ以上は無理と判断し、いずみにも飛行魔法をかけて、2人は空中で向かい合う形になった。

「なんかすっごく変な感じ……地面があんなに下にあるなんて。でも、本物……なんだ。ひとまずわかったから、地面(した)に降ろしてもらえる?」

 いずみは上空に静止した格好で、空気を踏んで立っている感覚を味わっていたが、ひとしきり頷くと、キララにそう頼み、2人は地上に戻ってきた。

「これで信じただろ?」

 いずみがちゃんと地面に着くなり、遼はいずみに訊ねた。

「ええ、さすがに自分であんな体験したら信じざるを得ないわ。ところでキララさん、他には何ができるの? 火とか水とか出せたりするの?」

 いずみはまるで童心に還ったように、目を輝かせてキララに質問を浴びせかけてた。

「結構いろんなことができるわよ。たとえば、さっきからずっとこの公園は人が近づかないように結界(バリアル・ドーメル)で覆ってあるし、火、水、雷、氷、風だったらどれでも自在に扱えるわ。たとえば火なら……“火球(フレイズ・ボーレ)”!」

 キララは得意げな顔になって、あれこれ話し始めた。その過程で魔法を唱えると、杖の先に小さな火の玉が出現した。

「わっ、すごい! あたし、小学生のころから魔法使いとかが出てくるファンタジーアニメやマンガとか、大好きだったんだ〜。まさか高校生になって、本物と出会うなんて思わなかったわ……」

 いずみはすっかりキララの魔法の虜になったようにキララにいろんな魔法を見せて、とせがんでいた。


 それからしばらくして。

「あ、そういえば、忘れるところだったわ。この話をあたしにして、どうするつもりだったの?」

 いずみがハッと思い出したように、遼に真意を問うために話しかけた。

「ああ、そうだったな。キララは明日からオレたちのクラスに編入してくる、これは本当のことなんだが、いま説明したとおり、コイツは別の世界からやってきたわけだから、当然この世界の常識とかには疎く、突然奇行を取ることもありえるってのはわかるな? そこで、お前にはオレと一緒にコイツをフォローする役目を担ってほしいんだ。もちろん、普段はオレがなるべく見ていてやるようにするが、トイレや体育とかの着替えで更衣室を使う時なんかはオレは見ていてやることができないからな。しかも、そういう場所こそ奇行を取るには絶好の場所。だから、誰か女子で最低でも1人以上、事情を知ってるやつがいてほしかったんだよ。オレの事をよく知っていて、なおかつ口が堅いお前にしか頼めないことなんだ、引き受けてくれるか?」

 遼はいずみをまっすぐに見据え、事情をすべて話した上でフォロー役を頼みこんだ。

「そこまで話しといて、引き受けなかったら、重大な秘密を守るためにあたしの記憶を消すとかするんでしょ? いいわよ、引き受けてあげる。面白そうだし、やっぱ記憶は消されたくないしね」

 いずみは笑いながらも、しっかりと頷いた。

「ああ、ありがとう、いずみ」

 遼はいずみに礼を言うと、キララに目くばせし、キララも言いたいことはわかっていたのか、すぐに頷くと、いずみを家まで転送させてあげ、帰宅するのだった。


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