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魔法がとけたら  作者: nana
3/5

進展

彼が入社して、

私と彼はほとんど接点もなく

会話もなかった。


唯一した会話


「吉澤君のお母さんて40歳なんだってね!

私と変わんないじゃんか!はははー。」


私はそう言って笑って見せたが


「え?……」


彼はそれだけ言って無反応。


その時の顔。

今でも忘れない。

冷たい顔。


こいつ何言ってんだ。 的な笑


6月になって、

その月に歓迎会があった。


私は子供の塾があったので

歓迎会の時間よりも

遅れて到着した。


うちの会社は若い人達が多かった。

パートにも若くて可愛い子がたくさんいた。


私はもう、

おしゃれする気にもならなかった。

自分の服なら子供の服、

自分よりも子供。

世のほとんどのお母さんはそうなってしまう。


黒いパンツに

何年か前に買ったBEAMSのシャツ。

このシャツも、

スタイル良くて可愛い子が着てくれたら

喜ぶんだろうに。

おばさんが着るとただの部屋着になってしまう。


おばさんはおとなしく

端っこにいよう。

子供がいるから早く帰らなくちゃならないし

食うだけ食って帰ろう!と


そう思ってお店に入りました。


お店に入ると、みんなもうできあがっていて

若い男の子と女の子が

スマホを持ちながらニコニコして話している。


連絡先でも交換してるのかねぇ。


ま、おばさんには関係のない話だなと思いながら

私は空いてる席を探していた。



すると…



「香川さん!ここあけときました!」


そう言ったのは新人の吉澤くん。


あんまり話した事ないし、

コイツこないだ嫌な感じだったからなぁ 。


しかも「あけときました!」てなんだよ。


そう思いながら私は彼の隣に座りました。


言葉数少ない吉澤君の隣だし…

話すことないなぁ。

どーしよぉ。

それしか考えてなかった。


私は、吉澤君の隣に座った。


そして、

いきなり彼に最初に言われた言葉。


「香川さんて、字 汚いですよね。

左手で書いたんですか?笑」


よく使うこの【笑】

これはコイツの為にあるんだなってくらい

笑いの入った小バカにした言い方。


なんだコイツは…



ま、私は字は汚いけど

なんでこんな若者に小バカにされるんだと。


そして次の日、ペン字の本を買ってしまった。



まずここで私の負けだ笑



その後彼は、

携帯を片手にたくさんの写真を私に見せてきた。


修学旅行の写真


男友達6人でディズニーに行った写真


高校時代の部活の写真


息子が私に一生懸命学校の話をするように、

彼は一生懸命自分の話をしてくれた。


修学旅行なんてなん年前の話だ

今時の子は男の子同士でディズニーいくんだ

部活やってた頃なんて忘れちゃったなぁ


なんて思いながら私は彼の話を

そーかそーかと楽しく聞いていました。


この時私は、

最初に言われた字のことなんて

すっかり忘れていた。


しばらくすると、彼は


「香川さんて、食べ方汚いですね笑」


でたぁ この【笑】


しかもちょっと真顔でいいやがる。


なんなんだコイツは!


そんなことを思いながらも彼には

携帯を片手に若い女の子達が

LINE交換しよー

Facebookやってるー?

インスタやってるー?

と話しかけてきていた。


彼は

「あ、やってますけど。」

と冷静に対応しながら

連絡先を交換したんだかしてないんだか。


ま、私には関係のないことだし

若い子同士勝手にやってくれー。

と思っていた。


その後も吉澤くんは

どんどん話しかけてくる。

酔ってるのかなぁ。

なんか、いつもと違う人みたい。



そして彼に聞かれた。

「香川さんてどんな曲聴いてますか?」

って。


そう聞かれた私は、答えようがなかった。

今の私に音楽を聴く時間なんてない。


仕事が終わって、ご飯作って、子供の宿題みて、洗濯して、お風呂入って…寝るのが精一杯の毎日。


「俺、最近 安室のアルバム バラード聴いてます。

香川さんてアムラー世代ですか?」


確かに20代前後、安室ちゃんに憧れて

俗に言うアムラーだったなぁ。

だけど今では、安室ちゃんがアルバムを出していることすら分からなかった。


「よかったら貸しますよ」


「うん!聴きたい!」


そう答えたけれど、

社交辞令かなぁと思って気にせず

私は早めに歓迎会から帰っていった。



週が明けて月曜日、仕事が始まった。


若い子達は仲が深まったのか、いつもよりも会社の雰囲気が明るく感じた。


若いっていいなぁ。

なんて思いながら私は自分の席につについて

黙々と仕事をしていた。



そして、

仕事が終わって帰ろうとしたら…


「お疲れ様です」


遠いような近いようなどこかで聞いた事のある声がした。


目の前に現れたのは、背が高くて

胸元しか見えない吉澤くんだった。



「あ、これ、安室のアルバム」


「覚えてくれてたんだ…」


「当たり前じゃないですか!忘れないですよ!

それと香川さんてFacebookやってますか?よかったらフォローしてもいいですか?」


「うん!いいよ!」




ここから私達の仲は急激に深まっていった。











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