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ゲートの守護者

「いやさ、ちょっと調子乗っちゃった感は認めるけどさ……フラグ立てたつもりはなかったぞ」


 思いがけない良武器を手に入れてあちこち探索していたら、アイテムが複数見えた部屋に辿り着いた。

 部屋に入った瞬間、殺気を感じ周りを見渡すと、隅っこの離れた位置に明らかに異質で強そうなモンスターが居た。


「あれはダンジョンキーパーね」

「おわっ!? いつの間に居たんだよ!」


 怪しい強敵の方を見ていたら、後ろから更に強敵が現れやがった。

 どこに居たのか聞いても「ん〜内緒」としか言わない。まぁいい、奴の解説をしてもらおう。


「異常を感知するとそのフロアに派遣されてプレイヤーを徹底的に追いかけるらしいの」

「異常? つーかプレイヤーってそれ俺だけだよな?」

「そう。ジオスちゃんが呪いで操られている時に何かした?」

「少しモンスターを蹴散らした程度だぞ」


 あー全力で騒いだな、うん。

 あれは俺であって俺じゃないものとカウントしてくんないかな。

 不可抗力だし、あんなんでいちいち命狙われちゃ堪ったもんじゃない。


「変ね。あれはダンジョンバランスの崩壊を危惧して、そのダンジョンから異物や障害を取り除こうと現れるはずよ」

「そんな危なっかしい奴なのかよあれ……」


 遠目に見るだけでもここのモンスター共が生温く思えた。

 倒す云々より戦っちゃいけない気がする。


「今はまだ召喚酔いでまともに動けないから逃げるなら今のうちよ」

「わかった。ゲートまで逃げるぞ」


 あんなのと戦っても今はまだ勝ち目ないだろうな。

 ここにあるお札と見たこともないアイテム回収を済ませて、早く次へ進もう。

 先ほどの部屋から次々に部屋を突っ切る。後ろからまだ奴が来ている気配はない。

 前には見たことある踊りの仮面が現れたがな。


「まずい。あいつに時間をかけてる場合じゃないのに、絶妙に邪魔なポジションにいやがる!」

「ジオスちゃん、さっき拾ったアイテムを使ってみて」


 この黒い平らな刃物みたいなやつだな。

 武器のように見えるが、複数落ちていたため手元に十個もある。


「それは手裏剣といって中〜遠距離攻撃に適した投擲武器なの」

「バリスティックナイフみたいな?」

「えぇ、用途は同じね。投げ方で飛距離が変わる独特の使い捨てアイテムだけど、このダンジョン内では十メートル先まで飛ぶように改良してあるの」


 珍しくカンナが仕事してんな。これならあの仮面に気付かれる前に攻撃が可能だ。

 しかも、それほど重くもなく嵩張らないのが利点だな。


「ジオスちゃんが持ってる風車型手裏剣は殺傷力が高くないため、遠くから数を投げてダメージを蓄積させていくのがコツよ」

「あいつに気付かれても呪いの範囲外なら、続けて攻撃しまくればいいわけだな?」

「そう。火力や命中率は装備が関係なくて、自分の素のステータス依存だから今はまだ外しやすいかもしれない点だけ気を付けて」


 なるほどな。今は心許ないアイテムだが、自分の成長次第では使い勝手が良くなるわけか。

 消耗品だが数さえ手に入れば、初見モンスターに使えて大活躍しそうだな。


「なら早速投げるぞ!」

「ふぁいと〜」


 こちらの命中率と敵のステータスとの回避率との差は四だ。

 カンナが以前決めかねてたパーセントの話通りなら、一につき五〜十パーセントのはずだ。

 命中率は六十〜八十パーセントで当たる計算になる。


「よし! 当たった! 投げ方が中々難しいな」

「投げやすい棒型手裏剣も用意するか悩み中よ。距離が縮まる分、お札と同等の力を持った物も設定しようかしら」

「是非採用してくれ! つーかお前もノリノリだな。これ好きなのか」


 俺も一方的に攻撃できるし気に入ったぞ。なにより格好良い。

 そうこう言ってる内にシャーマンを仕留めることができた。

 五発中三発当たったため残り五発になったが、敵のHPはだいたい計算できる。

 俺の火力が四、相手の防御力が一、カンナが言ってた引き算数値とやらを参考にすれば、一度の攻撃で三ダメージが与えられているはずだ。

 三発で倒せたのでHPは九以下になる。

 近付けさえすれば今装備している通称バールで一撃だったのか。

 このフロアの雑魚モンスターには困らなそうだが、特殊モンスターのキーパーには困ったもんだ。


「後はゲートを探すだけだな。もうだいたい探したと思うんだが……」

「キーパーの後ろがまだだったわね」


 何そのフラグが入り交じった恐怖。

 異世界の知識なのか、キーパーってのは守るって意味があるらしい。

 それ確実に後ろにゲートありますやん……。


「奴と絶対戦わなきゃダメなのか? 手裏剣を使って誘きだして、フロアを一周して反対の通路へ回るのもダメか?」

「ん〜普通のタイプならそれでもいけるけど……」

「何か不安が?」

「ダンジョンキーパーにも複数種類があって、もし種類がゲートキーパーなら無駄ね。対象が部屋を出たらゲート前に戻るようになってるわ」

「つまり、倒すしか方法がない……?」

「どうかしらね。すぐに追いかけて来ないところを考えると、その種類だった確率が高いわ」

「普通なら徹底的に追いかけるっつってたもんな……」


 なんてこった。ふろあつーにして、もう中ボスどころか大ボスっぽいのと戦わないといけないとか……どうにかこのフロアに落ちているアイテムで解決できないものか。


「隅々までアイテム拾ってから対策考えようぜ……」

「元気ないわね。ダンジョンには意外な突破口があるものよ」

「あのゲートをくぐる以外にか?」

「えぇ、罠で別フロアへ飛ばされるとかゲートを任意の場所へ移すお札を使うとか、方法は様々よ」

「そんなんあんのか!?」


 一抹の希望が見えた!


「このフロアにはないみたいだけどね」


 そして砕かれた。


「期待した俺が馬鹿だった」

「そうね。今のままじゃ馬鹿。相手に勝つことしか考えてないもの」

「なに? なにか方法があるのか!?」


 勝てないと思っていたから逃げたのに、どうにかなるのか? 見た感じ防御力がかなり高そうで俺の攻撃は通らなそうに思えたが……。


「ヒント、攻撃がダメな相手にはアイテムね」

「アイテム……お札か!」


 そうか逃げる時に手裏剣と一緒に拾っていたのを忘れていた!

 持ち物から取り出すと、お札に「プリズン」と文字が書かれている。


「これで奴に対抗できるのか?」

「対抗とは違うわね。同じ部屋で、相手に向かって使ってからのお楽しみ」


 正直そんな楽しむ余裕ないんだがな。仕方ない……このフロアのアイテムを回収して挑んでみるか。

 呪い状態の時にほぼ散策し終えた居たため、見つかったアイテムは食糧一つと手裏剣三つだけだった。本当に食糧って落ちてるんだな。

 ただ、地面に直に置いてあるわけじゃなく、モンスターや土埃から守られているように不思議なコーティングがなされており、皿の上にバナナが置いてあった。……なんでバナナ?


「部屋に着いたぞ。やはり動いていないみたいだが、今度はこちらに気付いたな」

「……ターゲット、ロック」


 こちらの姿を見るなり敵意剥き出しとは野蛮な奴だな。相変わらずその場を動こうとはしてないが、奴が少し身体を退かしたため後ろにゲートがあるのが確認できた。後は奴をゲートから完全に退かすまでだ。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」

「なんだよそれ? つーかわざわざ呼ぶなよ!」


 奴にはカンナの姿が見えていないはずだ。敵から見たら、俺が何か喋って音を立てているような錯覚をしているに違いない。


「そこで俺は次に手裏剣を投げてみた。カンッと弾かれると共に自分の弱さを再確認する」

「なに勝手に俺のフリして語ってんの!?」

「暇だったの。緊張感がないとね」

「能天気でいいなお前さんはよぉ!」

「お手伝いでもしよっと」

「話聞けやぁぁぁ!!」


 魔法の力なのか手に触れず俺の手裏剣を使い敵へと飛ばしていく。

 予想通り、カンッと弾かれると共に自分の弱さを再確認する。……あれ? サブリミナル!?


「ピピッ……殲滅モードへ移行します」


 ほら! なんか怒ったみたいだぞ。どうすんだよ怒らせて……段々こっちへ近付いて来てるな。

 なにやら鎖に繋がれたトゲトゲの鉄球らしい物を振り回しながら、一歩ずつ徐々に距離を詰めている。このままじゃ一撃でペシャンコだ。

 だが、こちらには心強いお札があるんだぜ。効果は知らないが相手をゲートから離して使えと聞いた。今なら条件に合致する。


「くらえっ! プリズン!」


 例のごとく発光し飛び散ったと同時に、石の柱が天井から地面まで生えるように繋がっていき、無数に等間隔で出来上がっていく。

 あまりの早さで俺も相手も呆気に取られたように、生えてくる石柱を次々に目で追う。気が付くと、相手の周りを石柱が囲み身動きを封じていた。


「なるほど。敵を閉じ込めてくれるのか! 今のうちに」


 感心していたい所だが、そうもいかない。早く横から通り抜けてゲートを――


「ピピッ……障害は排除する」


 物凄い音と共に奴を囲っている数本の柱が崩れ暴れている。

 まずい! 早く通過しないと。


「壊されて逃げ出されるわ。これが本当のプリズンブレイクね」

「言うてる場合か!」


 知らない言葉なのになぜか瞬時に理解できてしまう。脱獄と破壊じゃ意味が違うだろうに。

 いや、こんなこと考えてる場合じゃない!


「うおお! もうすぐだ持ちこたえてくれよ!」

「ジオスちゃんスライディング!」


 聞いた途端に身体が反応して、そのままの勢いで地面を滑る。

 わずか一秒後、頭上をなにやら通過し壁にぶつかる衝撃で正体が分かった。奴の自由になった片手から放たれた鉄球が飛んできていたのだ。

 カンナに感謝をしつつ無事ゲートに辿り着けたため、後方の敵には目もくれず急いで飛び込んだ。



元五話と六話、七話と八話を結合しました


後書きが吹っ飛ぶみたいなので更新告知が前の日のだと紛らわしくなりますね


なので、更新できる時は

昼12〜13時付近、夕方16〜18時付近、夜20〜日付変わる頃のいずれかに更新します

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