仮面の無双
「ヒャッハー! どけどけぃどけどけぃ! ジオス様のお通りだ!」
俺は今、立ちはだかるモンスターを次々に倒しながら、止まらずに進行している。
頭の中は冷静だが、言動や行動に自制が効かず困っている。
「今なら炎上も怖くねぇぜ! どいつでもかかってきやがれ!」
おいバカやめろ! 自分にバカって言うのも妙な気分だが、わざわざ敵を作ってどうする。
肝心な時にカンナとはぐれてただでさえ大変なのに、こんな状態じゃいつやられてもおかしくない。
なぜ、こうなったか原因を思い出せ……確か次の部屋へ着くとモンスターに出会って――
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「おい、何だよ踊ってるようなあいつは?」
「呪術モンスターね。近付かなければ害はないわ」
「そうはいっても向かいの通路の前にいるんだよ……強行突破できないか?」
「ステータスは低いから先に倒せれば大丈夫」
そういって敵のステータスを見せてくれる。
ステータス
種族:シャーマン
Lv:4
攻撃力:3(+2)
防御力:1
命中率:8(+3)
回避率:8(+3)
運の良さ:0
装備:武器『呪術の杖』 防具なし
装飾品:『張りつく仮面』『ドクロペンダント』
スキル:『呪い移し』
経験値:8
ゴールド:6
相変わらずHPは見せてくれないのな。本当に設定してるかも怪しいが。
しかし、ステータスを見た感じいかにも呪いますよって感じだ。
呪い移しが気になるが、防御力が低いし経験値も高い。できれば倒しておきたいところだ。
「近付かなけりゃいいんだよな?」
「えぇ、近くで感知されなければ呪術は使えないわ」
「何か遠距離から攻撃できる武器があればな……」
辺りを見回すとなにやら光る物が落ちている。
モンスターに気付かれぬよう、なるべく音を立てずアイテムを拾いにいってみる。
『バリスティックナイフ』を手に入れた。
「なんだナイフかよ」
「あら知らないの? それは刀身を飛ばす用途の武器なのよ」
「なぬ!? 使い方はどうするんだ!?」
「親指でトリガーを後ろに引いて……」
説明を聞いていると飛ばし方は簡単に分かった。
切ることには向かず、相手の不意をつく奇襲として用いられるとのこと。
ただ、一度きりの使い捨てになることと、有効距離は五メートル……ダンジョンで言う五マス分しかないらしい。
「結局近くまで寄らないとダメか……」
「回避率も高めだから気を付けてね」
「あぁ、ギリギリまでいってみる」
カンナを離れた所に待機させ、ゆっくりと近付いていく。
しかし、モンスターは踊りに夢中らしい。こちらに気付く気配はない。
「よし、ここ――」
武器を構えて後は発射するだけ! と足元がお留守になったのが災いした。罠の類いだろうな。
足元で何か光ったことに気付くと、急加速してそのままモンスターにぶつかってしまった。
その衝撃でナイフが真上に発射され、俺に踊りを邪魔された目の前のモンスターは怒り狂っている。
「や、やべぇ武器! 武器は」
モンスターがなにやら杖を振り回しながら聞き取れない言葉を喋ると、敵に装着されていた板の仮面が一枚剥がれ俺の顔面を覆う。
「ぬがぁ! なん……これ、剥がれ、ねぇ!」
気付くと俺の意識とは別に身体が勝手に動いている。や、やめろ! その情けない踊りは!
隅っこの方へ向くとカンナが腹を抱えて笑っている。
おい笑ってないで助けろよ! あいつこうなることを知ってやがったな!?
「あはは、ジオスちゃんの踊りおっかしー!」
すぐにでも殴りにいきたい。殴れるかは不明だけどな。
だが、操られているのか身体が思うように動かない。あ、今なんか踏ん――
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全部思い出した。踊りと辺りを徘徊させられていたら魔方陣のような罠を踏んだらしく、おそらくワープして俺だけ飛ばされた。
カンナとはぐれ、俺は呪いをかけられたままこうして調子に乗っていたわけだ。
しかも、この呪いは意図した行動を封じるので真っ裸を使えず、変な仮面を外せもしない。
一体いつまでこのままなのか……。
だが、メリットもあった。先ほどから、本来なら俺のステータスでは倒せなさそうなモンスターが立ちはだかるのだが、全て一撃で倒してしまっている。
この仮面の影響か知らないが、時々「ほれきたっ!」という変な声と共に、敵へ当たると即消滅していくようなのだ。
これが怪我の功名というやつか。なぜかそんな言葉が浮かんできたが、意味も理解できる。
状況的にピッタリだ。おかげでLvも上がり経験値がどんどん貯まる貯まる。
「へへへ、次はどいつだぁ?」
見た目と言動が完全に変質者だがな。
モンスターを狩りまくったせいで目標を見失ったかのように辺りをキョロキョロ確認しているようだ。
呪い解けるのまだかなー。つーか呪いって真っ裸なしでも解ける……よな?
「ほあぁ……しまった力が!」
ん? なにやら様子がおかしい。身体に力が入らず仮面も沈黙し始めたぞ。そのまま仮面は力尽きたかのように剥がれ消えていく。
「ようやく解放されたか。しかし、一体なんでまた急に?」
いつもならナビ兼解説のカンナに聞けばいいのだが、今の状況では聞けず何も分からない。
とりあえず、あの変な仮面が完全に外れたかどうかだけでも確認しとこうか。
ステータス
名前:ジオス クラス:勇者
Lv:4
攻撃力:4
防御力:4
命中率:4
回避率:14(+10)
運の良さ:0
装備:武器なし 防具なし
装飾品『シルフのくつした』
スキル:『真っ裸』
経験値:9/48(次のLvまで)
状態:空腹
消費度:0/100
無事に仮面が外れたのは喜ばしい。Lvも上がったしな。
だが、一難去ってまた一難というやつか! ついに消費度が尽きてしまった。呪いで動き回された挙げ句、これ以上消費する力がなくなり消えたのか……?
だとしたらまだ全然消耗してないタイミングじゃなかっただけマシなのか。
いや、結局動けないことに変わりないじゃないか!
「くそっ! このままじゃ動けない。なにか持ち物はないか!?」
ステータスを戻し持ち物欄を見てみる。
*シルフのくつした
スタァーヴの腕輪
空白のお札
当然なんだけど少なっ! 腕輪と一緒にお札を拾ったぐらいだもんな……。
だが、待てよ? カンナに聞いたことを思い出したぞ!
この空白のお札はダンジョンに産み出されたばかりで、まだ何も用途が決められていないそうだ。
落ちたまま時間が経てばランダムに決められてしまうため、見つけたらすぐ拾う方がいいらしい。
つまり、空白のまま拾った俺が用途を決められるため、どんなピンチも突破口が見えるわけだ。
「よしよし、助かるかもしれないぞ。確か念じると文字が浮かび上がって……」
魔法の名前は分からなくても、それに関することを思い浮かべてもいいとカンナに聞いていた。
なので体力消費の回復や腹が膨れそうなことを考えてみる。
「おぉ? なんだ……ヘルフル?」
浮かんできた文字をつい口ずさむと魔法が発動したようだ。マッパーの時と同じく発光し、頭上で四方八方へ飛び散ってしまった。
それと同時に頭の中へ「消費度を全回復しました」とのメッセージが流れてくる。
力が入りづらかった身体が思うように動かせるようになった! ステータスを確かめるまでもない。
良い物拾えてて助かった。見つけたら今度からキープしておこう。
「さて、まだどこかにあのシャーマンが居るんだろうが、ゲート発見やアイテム回収しないとな」
カンナはそのうち見つかるだろう。なんたってモンスターには見つからないんだから心配などしていない。
むしろ、危ないのは俺の方だ。武器もなけりゃ防具もない。
どれだけ攻撃を受けてもいいか不明だ。ほとんどのモンスターを狩ったとしても、ほぼ眠った状態とはいえまた産み出されるらしいからな。
用心するに越したことはない。
「お、先の方で光ってるあれは……武器か?」
新たな部屋を散策していると何かが落ちている。
『バールのようなもの』を手に入れた。
えっと、凄く反応に困る。武器なのは間違いないが、棒のようだがこん棒のように太くもない。
ましてや細すぎて、これもバリスティックナイフのような使い捨てに思える。
一瞬、装備を戸惑うが見た感じ呪われそうな気はしない。……腕輪もそう思ったがな。
『バールのようなもの』を装備した! ステータス変化します。変化項目の確認を簡略化しますか?
お? ステータス画面を開いてもないのに、くつしたの時には聞かれなかった項目が目の前に出てきた。はいを押してみるか。
『バールのようなもの』を装備した結果。
現在の攻撃力+10 変動値は以上です。
ほぉ〜これは分かりやすい。
今まで全数値を見比べなければ分からなかったが、こうして教えてくれるといちいちステータス見なくてもいいしな。
というかこれ、こん棒なんて鼻で笑うぐらい強くないか?
この世界は見た目と正反対な性能なことが多々ありそうだな覚えておこう。
よぉし! これで少々強そうなモンスターに出会っても対抗できそうだ。 やっと正面から戦えるぜ!
読みやすいよう3話と4話、5話と6話部分を結合しました(内容はそのまま)
後書きも更新告知のみなら随時消しておきます
次の更新は多分夕方、忙しければ夜になります