年寄りの誤解
今回から試験的に1話1000字程度の投稿にしてみます
待ち構えていたのは俺よりも背が高く、毛並みがサラサラしていて眼力が鋭いモンスターのような風貌をしていた。
「人間よ覚悟せい!」
「ちょ、ちょっと待った! えっ俺何かした!?」
「とぼけおって……後ろの孫が証拠じゃ!」
「え? 孫?」
ゲートから着地して俺の後ろに隠れる形になっていた兄妹がそろーりと顔を出す。
「げっ!?」
「バ、バアちゃん!?」
「誰がババアちゃんじゃこれ!」
「ち、違うよ言葉のあやだよ!」
「ちゃんって風格じゃないしババアじゃん」
間違っていてほしかったけど噂のバアちゃんでした。
ルイは慌てているが、アイちゃんはさりげなく言うことがきつめだ。
「あ、あの〜……」
「これ人間! うちの孫を拐ってどうするつもりじゃ! もふもふか!? もふもふした後に売り飛ばすつもりじゃろ!?」
「拐ってませんて! なんなら孫二匹に聞いてみてくださいよ!」
売り飛ばすのはまだ分かるとして、なんで貴重品の如くもふもふ推しなのバアちゃん。
「ルイ、アイ! こやつの言うことは本当か?」
「あ、うん本当だよ」
「どちらにしようかな天の神様の……」
アイちゃん、どちらに付くか大事な選択肢をカンナ任せにするのはやめてくれんかね。
これはルイに任せた方が得策だ。
「ルイ、悪いけどアイちゃんじゃ話にならないからお前がバアちゃんを説得してくれないか?」
「出来るだけやってみるけど、バアちゃんは手強いよ?」
「頼む! 今ここで戦いになったら一生誤解されてまずい」
「分かった」
「これ、なーにボソボソと喋っとんじゃ!」
痺れを切らしたバアちゃんが怪しんでいるようだ。
「えいっ」
「あばばば」
だが、隙を見てアイちゃんがバアちゃんを痺れさせていた。別の意味で。
いや、なにしてんの!?
「アイ! まぁたわけわからん物でイタズラしおって!」
「ババア勘弁、マジ感電! 超ウケる!」
「ルイ、あれは一体……」
「アイのババア狩りさ。年寄りを見かけるとイタズラしたくなる性分らしくてさ」
「響きが悪すぎるだろ。童貞に加え年寄りまで狩るか普通……」
「反抗期迎えた辺りからあぁいう自由な奴なんだ。好きにさせよう」
しばらくアイちゃんとババアが戯れていたが、こちらの存在を思い出したのか再び質問が始まる。
「人間よ。アイの自由奔放さが原因でお主が原因ではないことは分かった。疑ってすまぬな。しかし、なぜ一緒に行動をしておる?」
「それは俺がルイ達にたまたま命を狙われて、お互い誤解を解いた後に用心棒として同行を頼んだからなんですよ」
「お前達も狙ったのか! 血は争えんのうカッカッカ!」
「ババアと同類とかキッショ」
ババアなんで嬉しそうなんだよ……。