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もふもふ兄妹

「のわあぁぁぁ……ぶべっ!」


 変な体制のままゲートに飛び込んだせいか着地をミスって顔面から不時着。凄く痛い。


「テテテ……あれ、ズシ丸は!?」


 辺りを捜してみるも居ない。

 飛び込むタイミングがズレたため、一緒の場所に飛ばされなかったのかな。


「飛ばされた階層は……C(カップこそ至高)だな」


 紛らわしい表記で俺が褒めてるみたいになってるが気にしないでほしい。

 でも……Cの万能感は魅力的だ。


「困ったな……ズシ丸に頼ってたから武器もアイテムもなんもねぇ」


 はぐれる可能性を全く考えてなかったわけじゃないが、これは痛い代償だ。

 不幸中の幸いか、経験値が入ってきてレベルは上がっているが……。


「能力値だけ確認してみるか……」


 途中から簡略化画面が応用されたらしく、変化のない装備やスキル部分はカットできるようになったようだ。

 いつものようにやや左下にステータスウィンドウを開くと簡略ステータスの文字があった。


「ここだな」


 Lv:3

 攻撃力:6

 防御力:3

 命中率:6

 回避率:15

 運の良さ:0


「おぉこれは見やすい!」


 しかも勇者より断然ステータスの上昇具合がいい。

 これならなんとかソロでもいけるんじゃないか。

 いや、いけると思わせといてフラグか?


 そういや珍しくカンナのやつ大人しいな。

 テレパシーがどうとか言ってたが想定外のトラブルでも起こったのか。


「まぁいいか。先に進んでいれば何かあるだろうし」


 考えることを放棄し、楽観的に進むことに決め前へ一歩踏み出した。

 それが良かったのかもしれない。

 俺が元居た位置に風切り音が聞こえると共に弓矢が飛んでくる。


「!! あっぶねぇ誰だ!?」

「ちっ、運の良いやつだ」

「プッ、ハズしてやんの」


 姿を現したのは、弓矢を構えるもふもふした小さなモンスターとその横に居るソックリなモンスター。

 もふもふ……あぁ触ってみたい。


「お前が急かすからだろう!?」

「あ〜すぐ人のせいにする〜」


「人じゃねぇモンスターだ!」

「細かいこと言ってるとモテないよ〜?」


「うるせぇ! お前と行動してるといつもこうなんだよ!」

「それはどうもすみませんでした〜」


「妹のクセにいちいち生意気な!」

「たった二秒早く産まれたからって兄貴面されてもね〜」


「なにを!」

「なにさ!」


「……あの〜」

「「わっ!?」」


 いつまでも終わりそうにないケンカが始まったので、近付いて声をかけたら全く同じリアクションで驚かれた。

 気配を消してたわけじゃないのに。


「驚かせて悪い、というかお互い様だと思うが」

「「に、人間が喋ってる!」」


 またしても同じリアクション。


「そんなに不思議なことなのか?」

「そりゃそうだろ!」

「あんた本当に人間!?」


 あ、ちょっと違う反応。


「あ〜モンスター語を理解できるようにしてもらったから、話せるのもその影響かな?」

「そんな人間初めてだ」

「インスタ映えしそう〜」


 片方は驚いて片方はなんか馴れ馴れしい。

 インスタってなんだよどこからその小さい機械を持ってきたんだ。


「普通に話をしていいか?」

「あぁ……話せるとは知らずにいきなりすまない」

「人間と初会話中なう☆」


 片方は自分の世界に入ってしまったから、素直に謝ってきた方と話そうか。


「なんでいきなり弓で攻撃を?」

「ばぁちゃんに言われてたんだ。領域外へ出るといろんな敵が居て危ないよって、だから先に攻撃したんだ」


「領域外? この辺に棲んでるわけじゃないのか?」

「棲みかについては詳しくは言えないけど、俺達の行動範囲じゃないんだここ」


 もう片方を見ながら話が続く。


「アイがさ、ばぁちゃんマジ古代! うちら超現代! とか言い出して探検するって言うこと聞かなくてさ」

「アイってあの子? ……まぁなんとなく言いたいことは見てたら分かるぞ」


「うん、そう。オイラはルイってんだ」

「俺はジオスだ、よろしくな」


 最初は俺が手を差し出した意味が分からなかったみたいだが、仲直りの証だと教えると恐る恐る握手を交わす。


「一応オイラが兄貴、アイが妹なんだけど、俺達双子なんだ」

「双子に加えて性別違いか、かなり珍しいんじゃないか?」


「うん、ばぁちゃんも売り飛ばされるから人間には近付くなって言ってた」

「まぁ……一般的には間違ってないアドバイスだな」


 カンナのダンジョンに居る限りは、まずそんなことにならないと思うがな。

 そういえば、話に出てこないが両親は居るんだろうか……さすがにそこは聞けないな。


「それで俺達双子なのにあんまり似てなくて、たまに一緒に行動すると意見の違いからよくケンカするんだ」

「ハハッ仲が良い証じゃないか」


 リアクション見る限り十分似てるけどな。


「まぁ、アイの方は妹ってことに未だに納得してないし、あんな性格だから振り回されて苦労するんだいつも」

「二秒先に産まれたとかいう件で? 性格は察したよ……現代っ子は怖いな」


 肝心のアイちゃんはいろんな角度から自分を一生懸命撮っている。

 あれは当分飽きないぞ、断言できる。


「うん、オイラがもっと兄貴らしいとこを見せれたらいいんだけど、さっきみたいに失敗するし……」


「いやさっきのは失敗でよかったぶっ刺されても困る」


「うんごめんよ。はぁぁ……こんなとこにまで来てどうしたらいいんだ」


 ルイの苦悩は限界を迎えているようだ。


「じゃあさっきのお詫びってことで、俺が安全に戦えるまで一緒に戦ってくれない?」

「え? あんちゃん戦えないの?」


「仲間とはぐれてさ、俺には武器がなかったから進むのに困ったな〜って」

「ふ〜ん。わかった! オイラはいいけどアイにも聞いてみないと」


「うん、オッケー」

「うわっ! 聞いてたのかよ」


 いつの間にかアイちゃんがルイの背後に居た。

 なんか似すぎてて影分身しているようにも見える。


「いいのかアイ? ばぁちゃんからの呪縛は解き放たれた! いざ行かんまだ見ぬ幸せを求めて! とかハリキってなかったか?」

「いいのいいのどっちみち探検することに変わりないんだし、ばぁちゃんに見つかったら捕まった! 助けて〜って囮に使えるし」


「アイちゃん腹黒!?」

「うん、こういう奴なんだ」


 ルイの苦労が垣間見えた気がする。

 ともあれ、俺と愉快な二匹は同行することになった。

 詐欺師ってより魔物使いじゃね俺。


「聞くの忘れてた。はぐれた仲間なんだが、全身緑色で頭に皿……レンズがある奴を見かけてないか?」

「ううん、見てないよなアイ?」

「なにそれ超ザビエルウケる」


 ワケわからない理由でウケられてもリアクションに困る。

 やはり知らないか、どこに居るんだろうなズシ丸。


「あ〜敵発見!」

「お、おい! 待て、お前の素手は!」


 アイちゃんがモンスターを見つけたようだ。

 突っ込んでいくと同時にルイが何かを心配し引き止めようとする。

 急な事に油断していたため、少し遅れて駆けつけるとそこには……。


「し、死んでる……」


 いやそれは元からか。

 モンスターの亡骸、いやスケルトンの残骸かなこれ? それがバラバラになっていた。

 え、何があったの……。


「フンフフ〜ン、よわっちかった」

「あちゃ〜だから言われてただろ? 俺達は力を抑えるために武器使えって」


 抑えるために武器? どういうことだ。


「だって武器はストレス溜まるもん。いいじゃん力隠さなくても楽なんだし〜」

「はぁ、見られたもんは仕方ない。次から手加減しろよ?」


「覚えてたらね〜」

「覚える気ねぇだろ」


「ルイくんルイくん、これは一体……」

「あぁ隠しててごめんよあんちゃん。俺達素手で戦うと力加減がしづらくてさ、ばぁちゃんから被害が出ると困るから普段は武器にしときなさいって言われててさ」


 なにその暴走兄妹。

 つまり、ばぁちゃんの素手禁止令のおかげで俺は助かったのか。ばぁちゃんグッジョブ!


「それでアイちゃんがあんまり守らないというわけ?」

「うん、そうなんだ。武器だと威力が並だし煩わしい気持ちも分かるけど、早く加減覚えないとあんちゃん巻き添えで死ぬかもねアハハ」


 笑えねーよ。

 なんでこう仲間になった後に一癖も二癖もあるキャラばかりなんだ。

 もし、こいつらを騙したりなんかしたら殺られる。アイちゃんに殺られる!


「ま、まぁ気を付けてくれよ」

「アイに言ってくれよ。あいつが通った後は塵も残らないって評判なんだよ」

「塵も!?」


 あながち言い過ぎとも言えないのが怖い。


「ん〜でも俺が言って素直に聞くと思えないんだよなぁ」


 今は俺達そっちのけでバラバラになった骨を更に砕いてるようだ。

 音が軽快なのに絵面が豪快だこと。


「アイのご機嫌取りをした後なら大丈夫かもしれない」

「ご機嫌取り? どうやって?」


「ブランド物のバッグ、イケメンとのデート、濃厚なティラミスのどれかを用意して……」

「無理だろ! デートはともかく、なんでここにはない他の世界の知識があるんだよ!」


「不思議なねぇちゃんが教えてくれたんだよ。それ以来アイがすっかり慕ってさ、また会えないかなぁって探す目的もあるんだ」


 その不思議なねぇちゃんは“カ”で始まって“ナ”で終わる名前じゃなかろうな。


「あ〜すぐに用意できるもんじゃないしその方向は無しで、もっと他にないか?」

「あるよ。アイに勝つ」


「何で?」

「戦いで」


「…………」

「若しくはモンスター早討ち競争」


 これが賭け事ならオッズがとんでもなく偏って勝負自体が成立しないぞ。

 そんなものばかりだから、最終手段はカンナに手伝ってもらうしかなさそうだが。


「逆の発想でいこう。アイちゃんを怒らせない、刺激しない、ストレスフリーな行動をしてもらおう!」

「あんちゃんがそういうならなるべくケンカをせず協力はするけど、アイを操って誘導するのは大変だぞ?」


「そこは俺がなんとか口車に乗せて……」

「嘘がバレたら死ぬよ? ま、本当に危なかったらオイラも本気で止めるさ」


 あ、助太刀は嬉しいけど先に言うのやめてフラグ立つから。


「ありがとう。はぁ、もう当初の目標だった武器拾う拾わないとかいう問題じゃなくなったな」


 うまいこと操れたらダンジョンはクリアできるかもしれないが、兄妹が勝手に強いだけで俺の存在価値の無さはどうしてくれよう。



次は仕事と並行して試験勉強のため一週間以上かかるかもしれません


……勉強捨ててこっち書くかもしれません(おい

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