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秘密、暴かれる

「ふぅ、探索も楽じゃないズラね〜。施設から飛び出したはいいけど、変なところに迷い込んで出口は見つからないし困ったズラ……ん? あれは……寝てる人ズラか!? まさかもう追っ手が来たズラ!?」


 人にこき使われていた今までの日々を思い出し、声をかけるのを戸惑う。

 一応、反応があるか近付いてみようか。


「へいお待ち! じゃなかったズラ……へいお前! なにしてやがんでい!?」

「ん……あれここ……ギャアアア!!」

「ワアアアア!!」


 意識がはっきりとした瞬間、目の前に化け物が現れて一気に距離を取る。

 相手もつられてビックリしているみたいだが、予想外の始まりにどうすればいいのか……。

 とりあえず、通じるか話をしてみるか。


「あの……言葉分かりますか?」

「……ズラ!(はい)」


 あれ……通じてないのかな。

 モンスター語を理解できるはずなんだが、こいつはモンスターじゃないのか?


「えーっと、君はモンスターとは違う?」

「……ズラ?(モンスター?)」


「……俺はジオスって言うんだ。このダンジョンをクリアしなくてはならなくてね。君は?」

「カッパのズシ丸ッス!」


「!? なんだ喋れるんじゃないか……」


 喋れたことにも驚いたが、俺の身長の半分程度な緑色の生物は確かにカッパと言った。

 カッパ……え、カッパ?


「ズシ丸って呼ぶぞ。なんでこんなところに居るんだ?」

「へい旦那! あちしも迷い込んで訳が分からないんでさぁ」


「待った。旦那って俺のこと? 違和感があるから他の呼び名で……」

「へい旦那!」


 ダメだこいつ。一発殴っていいかな。


「ズシ丸はカッパって言ったよな? 俺の参考資料によると姿を見せたことない伝説の生き物みたいなんだが」

「カッパで合ってるッス! 普段は地下施設から出してもらえないから姿を見れないのは当然ズラ」


「あぁズラって口癖か。んで、地下施設とは一体どういうとこだ?」

「それがッスね〜毎日毎日、工場の巻物の製造ラインでキュウリをひたすら切って置く作業をさせられるとこッス」


 言ってることの意味がほぼ分からない。

 工場はまだ分かる。俺らの世界でいう工房みたいな物だろう。

 キュウリをひたすら切って置く……なんの修行だ?


「しかも、無休で食事はキュウリのみ! 超絶ブラックッスね! 仲間たちと協力して逃げたのはいいズラが、はぐれて気付いたらここに居たッス」

「な、なるほど。つまり、ここに元から居たわけじゃなくズシ丸一人(一体?)ってわけだな」


「そうッス! 旦那も見たところ一人な気がしやすが、なんでまたここにいらっしゃるんで?」

「あぁ、俺も飛ばされたというか突き飛ばされてここに来たんだ。ここはダンジョンといってな、次々先へ進んでクリアしないと出られない仕組みなんだよ」


「えぇーッ!? 困ったッス……さっきから変な奴らを見かけてて、追っ手にビビってやっと旦那に巡り会えたとこだったのに……」


 目に見えて気落ちするズシ丸をどうするか悩む。

 仲間がランダムで現れるってズシ丸のことなんだろうか。

 でも、モンスターとも戦ったことなさそうだし、何の役に立つかも分からんし……。


「クリア自体はここを造った奴に宝石を持ち帰ればいいらしいが、死んでも何回も挑戦できるらしいぞ」

「死ぬ!? ここってそんな危険なとこッスか!? あわわわ」


 今度は慌てて頭の皿を擦り始めた。

 カンナの脳内参考資料に基づいて思ってるだけだが、皿だよな多分。


「まぁ落ち着けって。行く宛もないなら俺と来るか? つっても俺も今は何もない状態だから、安全かどうか約束はできんが」

「ホントッスか!? 是非お願いしたいッス! ズシ丸が仲間に加わった」


「勝手にナレーションすな!!」


 時たま変な癖が目立つが大丈夫かこいつ。


「んじゃお願いしまッス! ところで、あの壁に書いてる文字は何ッスか?」

「ダンジョンの始まりA(カップ好きのイニシャルG)……ここがAという階層らしい、後半は気にしなくていいぞ」


「でもGもあるッスけど……」

「シャラーップ!!」


 ビクッと黙ってしまうズシ丸には申し訳ないが、事実に反することだ仕方あるまい。

 あんにゃろう、ネタが尽きたとか言いながら変な情報を織り混ぜるようになりやがったな。


「いいかあの文字は惑わす力があるんだ。見ていると一生ここから出られなくなるぞ」

「ヒィィ! 気を付けるッス!」


 よろしい。チョロいなこのカッパ。


 そんなバカなやり取りをしながら先へ進んでみると、ズシ丸がなにやら見つけてきたようだ。


「旦那! なんか拾ったッス!」

「おぉでかしたぞ。その傘みたいなやつか」


 俺の知ってる傘とは似ても似つかないが、一番近いのが傘じゃないかな。


「どれ装備してみよう」


 ブッブー、この武器は装備できません。

 武器なのに装備できないのがあるのか。

 そういえばクラスチェンジの話で聞いた気もする。


「俺じゃ装備できないからズシ丸にやるよ」

「やったッス! ところで装備ってなんすか?」


「あぁーとそうだな、正しく身に付けるってことだ。ズシ丸がその武器を扱えるなら装備できるはずだ」

「なんか装備できたッス」


「え……? マジで?」

「なんか簡略画面がどうとか出てきたッスけど……」


「はいを押してみ! 詳細が分かるから!」


 得体の知れない物をあっさり装備したズシ丸へ食い気味に畳み掛ける。

 名称もだが強さも気になるしな。


「えーっと、『傘のようなもの』攻撃+30って書いてあるッス」

「30!? お前それかなり強いぞ!?」


 もはや名称なんて気にならない程の良武器だ。

 まさか、新人のズシ丸にこうもあっさり差をつけられるとは俺の立場がない。


「大抵のモンスターなら一撃で倒せる程強いから、ズシ丸に先頭で戦ってもらおうかな」

「ほえ〜なんだかあちしラッキーッスね!」


 ラッキーならここに迷い込んでないけどな。


「また何か見つけたら拾ってくれ。ここではきっと運がいいんだろう」

「はいッス! よぉしガンバるッス!」


 運で思い出したが俺のクラスは結局何だろう。

 ステータスを確認してみるか。


 ステータス

 名前:ジオス クラス:詐欺師

 Lv:1

 攻撃力:2

 防御力:1

 命中率:2

 回避率:5

 運の良さ:0


 装備:なし

 スキル:『ライ』

 経験値:0/20(次のLvまで)



 おいおい詐欺師かよ。またしても運ねぇけど勇者よりは強いのな!

 さすがうまのふん、泣けてくるぜ……。



「何してるッスか?」

「あぁお前本当に何も知らずにここに来たのな。今見てたのはステータス画面っつって自分の強さやクラスを確認できるんだ」


「そんなのがあるッスか!? あちしも見たいッス! 早く見たいッス!」

「教えてやるから待て待て急かすな」


 ズシ丸にもウィンドウの開き方を教え一緒に確認してみる。


 ステータス

 種族:カッパ クラス:妖怪

 Lv:5

 攻撃力:35(+30)

 防御力:10(+5)

 命中率:5

 回避率:10

 運の良さ:5


 装備:武器『傘のようなもの』 防具『皿のようなもの』

 スキル:『クイッキュ』

 経験値:18/120(次のLvまで)

 ゴールド:0



 ズシ丸つぇーなおい! しかも運の良さある奴は初めてだ!

 それで武器をあっさり拾えたのか……?


「クラスは妖怪だとさ。心当たりあるか? それにお前なんでレベル上がってるんだよ」

「あちし達の呼称みたいなもんでさぁ。レベル? さぁ毎日こき使われてた経験がそこに加算されたんすかねぇ」


「まぁズシ丸に聞く問題じゃなかったな悪い悪い。んで、お前の頭は防具らしいがそれ皿なのか?」

「あ〜皆さん勘違いするんですよね。カッパに皿は付き物で割れると死んじゃうとかね、そんなわけないじゃないですか。なんで弱点丸出しでさらけ出してんすか」


「いや、俺に言われても……ズシ丸キャラ変わってるし」

「そもそもこれが皿だとしたら周りのギザギザした緑の部分はなんなんすか。皿にそんな物が付いてるのかバカタレめがと」


「…………」


 マズイ扉をノックしちゃった感じかこれ。

 頭のあれに対しては皿は禁句らしいな、以後気を付けよう。


「まったく皿皿言われるこっちにも身にもなってほしいぜ!」

「えっとズシ丸君、結局頭のそれは何なのか教えてくれる?」


「レンズッスよ」

「レンズ!? えっ、それ何かに使うの!?」


「何をそんなに驚いてるんすか? 当たり前じゃないすか〜高熱レンズにチーズ乗せてトロみをつけたりできるんすよ」

「高熱! チーズ!?」


 次々に明かされる真実に理解が追い付かない。


「レンズってそれ高温になって平気なのか……?」

「使いすぎたり熱くなりすぎるとさすがにクラッとして危険なので、この周りのトサカで覆い隠すんすよ。まぁ日の光に関しては地下に居たので問題なかったッスけどね」


「トサカ!? それトサカ!?」

「あ、バレちまいやしたか。秘密なもんで内緒ですよ旦那」


 その秘密を俺は誰に言うんだよ。

 本当に何者だよこいつ。


「その顔はあんまり信じていやせんね? カッパも時代の流れってやつでしてね。頭でレンズくらい扱えなきゃやってらんないんすわ」

「いや、カッパの常識みたいに語られても……」


「さっき旦那と出会う前に拾った手裏剣とやらも、いずれは常識としてカッパの頭に装着して……」

「そんな常識要らないから! やめて!」


 淡々と語る内容が怖いからこの話はやめよう。


「旦那も道中いろんな外の話を聞かせてくださいね!」

「あ、あぁ……」


 なんでこいつはさっきまで恨みを込めて語っていたのに、こんなに切り替えが早いのか。

 ヤバい奴を仲間にしたのかもしれない。


 ともかく、今はズシ丸を連れてダンジョンを探りつつ俺の装備も見つけないとな。


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