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新スキル

 奴がそう叫ぶと、辺り一面が眩しい光に包まれた。

 遅れて至るところから爆発音が聞こえる。


 なんとか爆弾(?)には当たりはしないものの、ダンジョン内で爆発が連続していて聴覚までもがイカれそうだ。


「どうだ俺様の技を思い知ったか!」

「くっ! 何が起こってるか見えやしない……!」


「ガハハ! まったくだ俺も見えん」

「お前もかよ!!」


 光で目が眩む前にとっさに位置を変えたのもあるが、敵の攻撃がまったく当たらない理由もわかった。

 自分の技くらい対策しとけばいいのになんて残念な奴なんだ。


「それで、いつまでこれ続けるんだ?」

「無論、死ぬまで」


「なに格好つけてんだよ! もうお前にシリアスキャラは無理だから」

「ほう、小童がよく吠える」


「もはや何キャラだよ……」

「昨日読んだ漫画の影響でつい、な!」


「な! じゃねぇよ漫画ってあれだろ? カンナが好きな世界にある読み物だろ」

「我らがスタンバイしている休憩室にあってな。そこで何でも読める」


「休憩室? なんか知りたくない裏側事情だなおい……」

「ちなみに持ち帰って読むことも可能だ」


「聞いてねぇよ! どんだけ漫画読みてぇんだよ!」

「無論、死ぬまで」


「やかましいわ! 何うまいこと言ったみたいな顔してんの」


 目眩ましの光がようやく晴れたと思ったら、奴のドヤ顔が一番に見えた。

 本来の戦う理由なんざよりも、今イラッとしてる理由の方が遥かに戦い甲斐がありそうだ。

 ……本来の理由ってなんだったっけ?


「なぁ、お前の技で結局何も被害ないんだけど、次はどうすんの?」

「早く帰って漫画読みたい」


「お前キャラ変わりすぎだろ!? ぶっころすとか言ってなかったっけ?」

「あぁうん、技効いてないしもういいかなって」


「えぇぇ……俺様キャラからお前の中で何があったんだよ」

「この流れは勝てないの確定したっしょ? 正直しんどい」


「いや、まぁそうとは言い切れないけど……」


 困ったなこんなナイーブな奴だったとは。

 埒が明かないためチラッと横目でカンナを見る。


 カンナさえも若干諦めたように首を横に振る。

 どうやら奴がこうなってしまっては何を言ってもダメなようだ。


「じゃ、じゃあこのまま引き下がってくれるのか?」

「うん、腕輪も返してもらったし敵わないのに戦い続けてもね」


「そ、そうか。俺はまだゲートキーパーの奴を倒さなきゃならないから、戦わずに済むならありがたいが……」

「あ、それなら戦った分の経験値をあげる。それであいつボコボコにして」


「お、おう……わかった」

「去ったら勝手に経験値が入る仕組みだから後は任せたよ。じゃあね〜」


 なんだか展開が消化不良だが、お構い無しにすんなりと行ってしまった。

 ちょっとあれは俺じゃ手に負えない。


 言葉遣いが変わるだけじゃなく、まるで別人……いや、別キャラになられるとどうも手が出せず躊躇してしまう。

 ある意味キノコの山さん並の強敵かもしれないな。


「良かったわね。やられなくて」

「気持ち的にはやられたよ。後半の展開はなんだよあれ……」


「色が変わると危険って言ったじゃない」

「もっと過激になる意味かと思ったんだよ。別の意味で過激だったが」


「攻撃は過激になってたわよ。プライドがなくなって性格に難ありだけどね」

「それが拍子抜けして困るんだよな……」


 もっとオラオラ来てくれればマシな戦いができるのに。


 チリンチリン、チリンチリン。

 お? 経験値が入ったみたいだな。

 奴との戦いで一体どのくらい入ったのか久しぶりにステータス画面を見てみるか。



 ステータス

 名前:ジオス クラス:勇者 

 Lv:20

 攻撃力:30(+10)

 防御力:23(+3)

 命中率:20

 回避率:30(+10)

 運の良さ:0


 装備:武器『バールのようなもの』

 防具『ウッドシールド』

 装飾品:『シルフのくつした』

 スキル:『真っ裸』

 経験値:38/564(次のLvまで)


 状態:健康

 消費度:42/100



 はあぁぁ!? ちょっと待てレベル10だったはずなのに20だと!?

 あいつ倒してもないのにどんだけ経験値くれたんだよ。

 いや……逆にそんな低レベルで相手にする奴じゃないから、一気に上がりすぎた感覚に陥ってるのかな。


「特殊モンスターだから経験値も破格よ」

「解説どうも。それにしても推定4000は入ってるぞ……」


「執念ね。ジオスちゃんがゲートキーパーを必ず倒せっていう」

「あぁケツ叩かれた気分だよ」


「あら、そっちの趣味が――」

「断じてねぇよ!」


 こんなに経験値を貰えるなら結果的にダンジョンキーパーと戦って良かったな。

 最後のレベルアップとは思うが、結局運の良さは上がらずじまいだった。


 もう運の良さなんてあろうがなかろうが、あてにならんのじゃないかこれ。

 運無くても聖剣持ってますし。


 ――勇者レベル20に到達、新たなスキルを覚えました。


 おっと!? これは予想外だ。

 レベルアップでスキルを覚えれることは完全に忘れていた。


 さっき見たときは書いてなかったが、詳細を確認しないとステータスに表れないのかな。

 ぼやきつつ、ステータス簡略画面にて詳細を確認する。



 勇者レベル20スキルは、抜刀術『断』 以上です。



 おぉ! なんか凄そうな響きのスキルが手に入ったぞ。

 響きだけじゃ分からないのでカンナに確認だ。


「抜刀術とかいうスキルを覚えたんだが、これってどんな技なんだ?」

「刀を鞘から抜いた衝撃で攻撃をする技ね。術って付いてるけど魔法とは関係ないわ」


「へぇ〜なんか強そうだ。でも刀も鞘もないんだけど?」

「その点は心配ないわ。スキルを使えば自動的に手持ちの武器が光の鞘に包まれる仕組みよ」


「ほうほう。刀……というか剣でも?」

「例外なく可能よ。名称を抜刀にしたのは抜剣と統合し、技の使い道を分かりやすくするためね」


 聖剣といっても正確には剣の形すらしていない『バールのようなもの』なんだが、ちゃんと使えるんだろうか……。


「なるほど、じゃあこのスキルの使い方は?」

「まず弱点にもなるんだけど両手が自由な状態で片手で鞘をしっかり持ち、力を溜めて放たないと効力が発揮できないタイプなの」


「両手……つまり盾をしまってからじゃないと使えないってことか」

「えぇ、次に発動中は技の種類に関わらず抜刀術は無防備になりがちだから、そう頻繁に使っても相手が待ってくれないわね」


 ふと、ダンジョンキーパーが言っていたヒーロー協定を思い出す。

 もし、協定結んでたら敵の攻撃にしても俺の技にしても、強力な一撃を待たなきゃいけないのか……ずるくね?


「大体分かったありがとう。ちなみに種類がどうとか言ってたが……この『断』とかいう技は――」

「使ってからのお楽しみね」


 まぁそういうとは思ったさ。

 基本仕様を教えてくれるだけでやけに優しいぐらいだったしな。


 問題は使う相手がもうゲートキーパーしか残ってないから、試し打ち出来ずにぶっつけ本番になるわけだが。


「でも聖剣で初の抜刀術を使えるのはラッキーね」

「ん? なんでだ?」


「強力な技の中には代償に武器が耐えられず壊れてしまうこともあるの。聖剣ならその心配がないから安心して使えるわ」

「そうか……壊れるなんて考えていなかったが、あんな奴ら相手にしてりゃ武器と共に技も強力にならないと倒すのは無理だわな」


 今は余計な心配事だが、武器を替えざる得ない時のために覚えておこう。


 先ほどの戦闘で残ったアイテム類の整頓も終え、スキルのために盾もしまって準備万端だ。

 さて、奴を倒してさっさとクリアしますか!


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