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世界は僕らの邪魔できない  作者: 九十九疾風
第1章 転生と異能とそれぞれの過去と
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第一章 六話 いつまでも君達の味方

いろいろとあって投稿がめっちゃ遅れてしまいました。すみません。ペースは少しずつ戻していきたいです。

今回は少し長めにしました。あと説明も少し含まれます。魔法についての説明はあと一回で終わるかな?って感じです。

今日はアーカイヴさんが用事で来れないので、お母さんから今の世界のことについておしえてもらっていた。


「君達はもう既に歴史書で読んだと思うが、今三代目の魔王が魔族を従えている」


「そこで一つ疑問なのですが、なぜ魔王討伐隊は誰一人傷付かず、さらに魔王を倒せなかったのですか?」


早速僕が疑問に思っていたことを言うと、お母さんは少し困った顔をした。


「それについてなのだが、はっきり言って聞かない方が身のためだ。正直絶望しか湧いてこない」


「大丈夫です。続けてください」


僕が本気だということを察したのか、お母さんは続けてくれた。


「よしわかった。その魔王は他の魔族同様、魔法攻撃以外でダメージを与えることは不可能だ。それに加え、今の魔王は魔法無効化を持っている。さらに魔王には代々自然治癒の能力がある。そして体力馬鹿だ。もう、わかるな?」


「その無効化は、貫通できますか?」


「それは可能だ。実際、第三次魔王討伐隊に所属していた魔導師の最大魔法が、やつにダメージを微かに、だが確実に与えた。ま、すぐに回復されたけどな」


「なるほど。それならあの魔法を使えば……」


「朱咲、君、一体何を…?」


お母さんは全く理解していない様子だった。だが、今はそんなこと関係なかった。自分の中でイメージが構築されていき、ひとつの方程式を解いているような感覚に陥っていたため、周りのことはほとんど頭になかった。


「宇宙魔法……」


「えっ?」


「宇宙魔法なら、いける!」


「う、宇宙…魔法、だと?!朱咲、本気で言ってるのか?確かに朱咲には私がこれまで見たことがないほどの魔法の素質がある。だが、宇宙魔法はそんな次元の話じゃない!」


「お母さん、宇宙魔法って宇宙現象を魔力マクロを使って起こす魔法だよね?」


「あ、あぁ。理論的にはそうだが?」


僕の頭の中ではもう1つの答えは出ていた。そう、魔王を倒し、世界を救うための答えが。


「それなら、魔王を一撃で倒せる」


「ま、まさか朱咲…あれを使う気か?」


朱咲は遅まきながら気づいたようだった。僕は迷わずに頷いた。


「うん。あれを使う」


「バカ!おま、それだけはやっちゃダメだ。僕らも死ぬしこの世界だって無事じゃない」


「お兄ちゃん。私は、死ぬのなんて何も怖くないし、もう死ぬ覚悟はできてる」


そう。死ぬ覚悟は、もうとっくの昔に出来ていた。歴史書を読んだ時、全てが一直線に繋がった。僕達が目指す場所。それが見えたのだ。


「あの…君達。さっきから言っている、あれとはいったい何のことなのだ?」


真空崩壊しんくうほうかい


お母さんの質問に即答する。僕が今思い浮かぶ、最高級の希望だった。


「どうなるかはわからんが、今の会話から察するにただならぬことであるのは間違いない。そんなものは使うでない!君達が居ないと私は寂しくて仕方ないのだ!」


お母さんの、心の底から悲しそうで哀しそうな顔を見てると、なんだか、死のうとしてる自分が馬鹿らしくなって、頭を少し切り替えることにした。


「わかりました。では真空崩壊以外で魔王を倒す方法を模索します」


「そうしてくれ」


『真空崩壊』

ボールを用いて説明するとしよう。普通ならボールは落とされるとしばらく跳ね続け、やがて安定して静止するはずだ。だが、仮に何もしていないのに再びボールが激しく動き始めることがあれば、存在しなかったエネルギーが発生したことになる。そうなれば、すべての物質が今まで持っていなかったはずの大量のエネルギーを放出することになり、ボールが動き出した次の瞬間に地球や宇宙は消滅してしまうという現象だ。つまり僕はこの世界ごと魔王を滅ぼそうとしたのだ。


「それにしても、魔族って魔法しか効かないんですね。初耳でした」


朱咲が、少し話題を変えようとちょっと話を逸らしたが、流石に下手過ぎたせいで、全く逸らせてなかった。


「そうであったか。それより、宇宙魔法が使えるというのは…?」


「本当のことですよ。朱咲は宇宙魔法を使えます」


「そうか。二人して言うなら、そうなのか。それにさっきの星琉の反応も…疑ってすまなかったな」


「大丈夫です。宇宙魔法は使われた伝承すらないんですもんね。疑って仕方ないと思います」


実は、昨日の夜に誰もいないような場所で宇宙魔法を試しに使ってみた。結果、使えた。と言っても、バレないように少しだけ使用して、半径10㎝の恒星を10個造ってみただけだったが…

その場にいた朱咲はかなり驚いていた。でも、お母さんの驚きようはそれ以上だった。

でもさすがと言うべきか、すぐに心を落ち着かせて話を元に戻した。


「話を戻そう。さっき少し触れたが、魔族には魔法しか効かない。つまり、現状魔族に対抗する手段は魔導師しかない。アーカイヴが朱咲の才能を見て狂喜した理由も、私はわからんでもないのだ」


「私…ですか?」


「そうだ。君は歌妖精族プーカの…いや、世界の希望だ。正直なところ、なにかの縁があって出会った君達を危険な場所に送りたくない。ないんだが…」


お母さんは一呼吸おいてから言った。


「私は…私達は、君達を信じている。魔族の支配から世界を解放し…この世界に存在しないはずの、永遠の平和をもたらしてくれるってことを」


「お母さん…」


「それに、私はいつまでも待っているから。朱咲と星琉が、二人揃って無事で帰ってくるって。だから、絶対帰って来て。例えこの世界に君達の居場所がなくても、ここはいつでも二人の居場所だよ。私は、例え二人が闇に堕ちてしまっても、世界中が敵になっていたとしても!いつまでも、ずっと二人の味方だから!」


「う……うん」


「だから…絶対に、生きて…帰って来て」


「わかっ、たよ。…おか……あさん」


「うん。…約束…だよ」


僕とお母さんは、顔を涙でくちゃくちゃにしながら指切りをした。お母さんは、ずっと秘めていたであろう心の内を話してくれた。そこには、一人の保護者として、そして一人の友達としての生きて欲しいという強い気持ちがあった。その姿には、いつも纏っていた歴戦の猛者もさじみた覇気はなく、たった一人の優しい女の子としての、純粋さや温かさがあった。


「う…うぅ…リ、お母さ~ん!」


朱咲も号泣していた。そしてお母さんに抱きついた。僕も朱咲と同じようにお母さんに抱きついて、三人で一緒に泣いた。

頬を伝っている涙は、とても温かかった。




・・・




「すまなかった。少し取り乱してしまった」


「大丈夫です。それに、無理してその口調にしなくて良いですよ」


「やっぱり無理してるってわかっちゃうか?」


「なんとなく、ですけど…」


「そっか~。やっぱり私演技とか苦手だな~」


「そういえば、ずっと聞きそびれていましたが、お母さんっていくつなんですか?」


「そっか。年齢教えてなかったね。私、19歳だよ」


「えっ、私達とあんまり変わらないじゃないですか」


ある意味衝撃だった。なぜなら、これまで数多あまたの死地を超えた雰囲気を醸し出してたからだ。


「そういえばそっちのも聞いてなかったね。それで、何歳なの?」


「16歳です」


「確かに近いね。だとしたら、私のことお母さんはおかしいと思うけど?」


「ですね。それじゃあこうしましょう。えっと…お、お姉ちゃん…」


「え、え?そ、そう来るのか。でも、なんかこそばゆくて嬉しいな。よし、それで行こう」


おか…お姉ちゃんの顔は、泣いていたさっきとはうって変わって、清々しいほどに満開の笑顔に変わっていた。


「話がめちゃくちゃ脱線しちゃったけど、とりあえず話を元に戻そう。えっと…どこまで話したっけ?」


「魔族には魔法以外効かないというところまでです」


「そうだったか。すまないな。では話の続きだが…そういえば妖精族だけが持つ特殊能力を教えてなかったな。妖精族は種類によって使える特殊能力が変わってくる。まず私達歌妖精族だが、能力は二つある。一つが『魔力解放マクロバースト』。これは体内にある魔力マクロを解放して魔法や身体能力を極限まで上げる能力だ」


「それの発動条件は?」


「特にない。必要なのは天性くらいだ。ま、朱咲は魔法を使う時いつもそうなっているが、自覚はあるのか?」


「いえ。無いです」


「そうなのか。てっきり知ってて使ってるものだと……次に二つ目だが、これはほぼ全ての歌妖精族が使える能力だ。名前は『歌変換ソングチェイン』。これはそのままだ。魔法の詠唱を歌に変えて使うことができる。ただし、この能力を使っている時は動けず、歌なので不意討ちには使えない。でも、魔法の種類がバレづらいという利点と、魔力をあまり消費しないという利点がある」


「なるほど。要所要所で使い分ける必要があるということですか?」


「そうだな。次は猫妖精族ケットシーだ。能力は一つで、『千里眼』。内容はわかるな?」


「はい。遠くを見ることができるんですよね?」


この世界はシンプルな名前が多くて理解しやすかった。いや、まだ全部は知らないけど、この調子でシンプルなことを願おう。


「その認識で間違いない。最後に風妖精族シルフだが、こちらも能力は一つだ。名前は『飛翔スカイレイティング』。空を飛ぶ能力だ」


「歌妖精族だけが二つの能力を持っているのですね。実際に魔力解放使える人っているのですか?」


お姉ちゃんは天性が必要って言ってたから、あまり数はいないと思う。けど使うとどうなるか気になる。


「確かアーカイヴの野郎が使えたな。あとは、朱咲、君だな」


「えっ?私?」


アーカイヴさんは予想していたが、朱咲…いや自分の名前を呼ばれたのは予想外だったので、きょとんとして聞き返してしまった。


「朱咲は君しかいないだろう。そっか、自覚はなしか。やっぱり末恐ろしいな、君の才覚は」


「えっと…私、魔力解放って使ってましたっけ?」


「バリバリ使っていて何を言っている。魔法を使う時に髪の毛が水色に光輝いて、その周りに魔力が漂っているだろう。それが魔力解放を使っている証。通常は魔力が漂わないんだが、朱咲の髪の毛は特殊だから、そうなってるのだと思う」


「そうだったんですか。全く自覚していませんでした」


僕は元より自分を一番底辺あたりの人間だと思っているから、自分の才覚について無頓着だった。でも、今のお姉ちゃんの話を聞いた限りでは僕はかなり破格な才能持ちなのだろう。

などと考えていると…


「皆さん、昼食の準備ができました」


メイド長のメリシアさんが来た。


「よし、これで今日の授業は終了だ」


「「ありがとうございました」」


朱咲と揃って礼をして、お姉ちゃんと一緒に食堂に向かった。




・・・




お姉ちゃんはアーカイブさんと相談して、午前中は授業や実技訓練をして午後は自由にしてくれている。昨日は実技訓練の時に教わったことを元に、対魔族戦法を組み立てていたが、今日は特にやることがないので、町に行って何か買おうと思った。


「ねぇお兄ちゃん。何か買いに行きたいんだけど、一緒に来てくれる?」


「別にいいけど、何かって具体的に何?」


「特に決めてないけど、とりあえず服とかかな?可愛い服が全然無いし」


「急に可愛い服が欲しいとかどうしたの?なんか怖いんだけど」


朱咲が引いてるのはなんとなくわかった。半分以上は冗談だろうが、少し傷ついた。


「いや、理由がある訳じゃないけど…この体には可愛い服が一番似合うと思って…」


正直、自分で言っててらしくないとは思ったけど、やっぱり朱咲のこの幼さ100%の体には、それに見合った服が必要だと思う。それにかわいいから。


「ま、確かにそうだね。でも、今の服も結構可愛いと思うよ」


「そ、そうかな?でもこれ、お兄ちゃんと同じデザインだよ」


今僕達が着ている服は、僕が茶色い麻のワンピース、朱咲が深緑色の布のズボンとTシャツだ。かなり簡素だが、なんか落ち着くので結構気に入っている。ただ、可愛いかと言われれば、正直シンプルすぎて可愛いくない。それに、魔族との戦いに着ていくにはすごく頼りない。


「とりあえず服は置いといて、このあたりの地図も必要だと思う。このままじゃ魔族の拠点を探すだけで沢山時間を使っちゃう」


「そうだね、確かに地図は必要だね。それじゃあ準備して出発しよっか」


そして僕達は準備を始めた。



30分後


「お姉ちゃ~ん。いってきま~す」


「気をつけてね~」


僕達は、お姉ちゃんとメイドさん達に見送られて町に向かった。ここから町までは歩いて20分くらいだ。その間、地図以外に買うものについて朱咲と話し合い、地図以外は服と非常食を買うことに決まった。


「らっしゃい。おや、あんたらはあの時隊長と一緒に城に登って行ったガキ共じゃねぇか」


「覚えていたのですか?」


「そりゃな。お前ら、よくあんな堅物に認めて貰えたな。一目見てすごいやつとはわかんねぇのに」


見た目に覇気が無いのは自覚済みだから、言われたところであまり気にはならないが、この言葉は褒めているのだと気づくと少し嬉しくなった。


「確かに、私達は強そうには見えませんよね。でも、あなたは気づいてますよね?」


「なんとなく、だがな。俺ゃここで何十年も商売してる身だ。いろんな人が通るもんで、ある程度雰囲気でそいつの実力を測ることができるってわけだ。でも、お前らは俺から見ても別格だな」


「と、言いますと?」


「お前らは俺の常識では測れねぇ。まるで神様を見てるようだ。あ、そういやうちになんかようか?ここに来てる理由聞いてなかったわ」


なんというか、すごい人かと思ったら抜けてる感じで、なんとなくその雰囲気のギャップにずっこけそうになったが、ギリギリのところで耐えた。


「えっと、このあたりの地図と非常食を大量に欲しいんですけど、ありますか?」


「地図と非常食か…地図はあるが非常食は置いてねぇ。非常食なら、あそこのコナルって娘が売っている」


「ありがとうございます。えっと地図の代金は?」


「要らねえよ。お前ら、魔王倒しに行くんだろ?だったら、魔王を倒してくれてその地図の代金にしといてやるよ」


出世払いだな。と笑いながら言うおじさんを見て、これは少しプレッシャーかな。と思って苦笑いしつつも、会釈してそこをあとにした。ただ、ひとつ気になったことがあったので聞いてから移動することにした。


「すみません。でも、なんで魔王を倒しに行くとわかったのですか?」


「勘だよ。ま、生きて帰ってこいよ」


「…はい!ありがとうございます。えっと…」


お礼をしようとしたが、名前を聞いてなかったので、詰まってしまった。


「モネンソーだ。これからも気軽に何でも買いに来いよ。応援してっからな」


「了解しました。ありがとうございます、モネンソーさん」


「礼に及ばねぇよ」


そう言われて、僕達はモネンソーさんにお辞儀してコナルさんのお店に行った。



魔力の枯渇のことで補足。魔力は一定範囲からしか使えません。また、魔力は動いていないので、枯渇した魔力がその場所で自然回復するのを待つしかありません。また、空気中の魔力を回復させる魔法はないですが、空気中の魔法を回復させるアイテムはあります。

補足は以上です。今回もありがとうございました。

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