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世界は僕らの邪魔できない  作者: 九十九疾風
第1章 転生と異能とそれぞれの過去と
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第一章 三話 朱咲の葛藤とこれから

今回は少し説明回です。

ヤキを入れようと朱咲を捜していると、部屋の隅で小さくな……ろうとしているが全く小さくなれずに震えていた。


「なぁ朱咲、お前どうして今日そんなにしゃべらないんだ?」


朱咲は口数少ない方ではあるが、さすがにここまで少なくはなかった。僕はそこに少し不安を覚え、朱咲に声を掛けた。


「お、お兄ちゃん。あの…あのね、まだ、この体に慣れていなくて。視線は高いし、何か重いし。それに、お兄ちゃんの体に入ってると思うと、嬉しくて、でも何故か緊張しちゃって……」


まだ入れ替わったばかりで、体に慣れないって気持ちは僕と同じだった。僕は、前を向くことでそれを解決しようとしたが朱咲は逆に、何も話さないことで解決しようとしていた。少なくとも、朱咲のこの姿勢は今後に悪い。何か打開策を考えなくてはならなくなった。


「とりあえず、僕を演じようとしなくてもいいんだ。変じゃなければ何でもいいんだから、自分がやり易いようにすればいい」


急に打開策を考えろと言われてパッと出てくるほど、頭がいいわけではない。だから、今朱咲が陥ってるであろうものから抜け出すための心持ちを教えることにした。


「でも、お兄ちゃんは私を演じようとしてない?もし私がお兄ちゃんを演じなくてもいいなら、私の好きなようにするよ」


僕の言葉に、朱咲は前向きな考えで答えてくれた。。これを聞いて、僕はヤキを入れなくてもいいなと思い、安心した。


「でもさ、お兄ちゃん。人前で今のように呼んでたら、周りの人に変な目で見られるよ」


「それは、前に呼んでたみたいに朱咲が僕のことを『朱咲』、僕が朱咲のことを『お兄ちゃん』って呼べば良いんじゃないかな?」


「わかった。じゃあ。す、朱咲」


「何?お、お兄ちゃん」


「これから一緒に魔王を倒しに行くんだよね?だとしたら、役割分担しようと思うんだけど」


「あの女神が言うには、片方が魔法特化で、片方が武術特化らしいね」


「とりあえずお…朱咲、魔法使ってみて」


「わかった」


「や、やっぱり恥ずかしいね……これ」


「うん、そうだね…」


集中するために、一呼吸置いて落ち着かせた。

やり方は判らないけど、とりあえず魔法を打つためには媒介となるものがあるはずなので、体の中を探ってみるとこれまで感じたことのないものがあった。手始めにそれを使ってみると、体の中から力が湧いてくる感覚があった。それが何なのかわからないけど、とりあえず形にするべく、目を閉じ火をイメージした。


「すごい…綺麗」


朱咲の呟きでどうなっているのか気になって目を開けた。すると、目の前には手のひら大の火の玉が沢山あった。このままだと部屋が燃えてしまいそうだったので、とりあえず火の玉を一つに減らした。目の前で朱咲があっけらかんとしていた。


「ど、どうしたの?お兄ちゃん?」


僕の声に朱咲がハッとして、目をぱちくりした。


「ごめん。あまりに綺麗過ぎて見とれてしまってた。ちょっと鏡見てみて」


僕はその言葉の真意を知らぬまま言われた通り、近くにある鏡台の鏡を見た。すると、真っ白だった髪の毛が水色に光り輝き、周りに同色の粒子のようなものが沢山漂っていた。


「綺麗……」


少し見とれてしまった。そして一つにした火の玉を無くすと、髪の毛の色は少しだけそのままでいたが、その後元に戻った。


「とりあえず魔法特化は朱咲だね。となると、武術特化はわ…僕となるのか。それじゃ、近距離を僕が、遠距離を朱咲が担当するということでいこう」


「あと、お兄ちゃんには相手を煽る役もやってもらいたいんだけど…」


「えっ、何で?」


「冷静な敵よりも、煽られて少しでも冷静さを欠いた敵の方が倒しやすいから、煽りは欠かせない。それに、どっちが煽った方が効果的かといえばお兄ちゃんの方だから」


「煽る理由はわかったけど、何で僕の方が効果的なの?」


「だって、私…ちっちゃいから……」


自分の体じゃないのに、ものすごく切ない気持ちになった。女子の心は複雑だな……と他人事のように考えてしまうが、今は自分がそうなのだと思い、少しこれからが心配になった。


「な、なるほど。ごめん。傷付いた?」


「元が自分の体じゃないのにね。やっぱり感情とかは体の方に流れるのかな?」


「実を言うと、さっきの言葉は僕も少し傷付いた…でも、多分そうなんじゃないかな。今の会話も自然にお兄ちゃんが私、私がお兄ちゃんでできたから」


「とりあえずこのままで良いんじゃないかな」


戦いでの役割分担も決まり、あとはそれぞれが担う役割において必要な知識を吸収するだけになった。




・・・




今何時だろう?ふと時間を知りたくなり、下の階に行けばお母さんやメリシアさんがいるだろうと思い部屋を出た。僕達の部屋は2階にある。

階段を降りて下に行くと、知らない男の人がいた。その人はお母さんと仲良く話していたので、友達かな、と思って静かに見ていると、その人がこちらに気付いて会釈してくれた。僕達は良くわからないままとりあえず会釈を返した。それでお母さんは、僕達が降りてきたことに気付いて、僕達を手でおいでって呼んだ。

僕達がお母さんのところに行くと、お母さんが男の人を紹介してくれた。


「この人はアーカイヴ・ストーリン。私の戦友だ。で、こっちがさっき言ってた子達だ」


「御瀧 朱咲です。はじめまして」


「御瀧 星琉です。よろしくお願いします」


「はじめまして。アーカイヴ・ストーリンだ。首都第一魔導師軍第四魔導軍第一遠方地域守備隊隊長をしている。今後ともよろしく。ところで、さっき上の階から魔力マクロの反応があったのだが、誰か魔法を使ったのか?」


「あ、はい。私、ですけど?」


僕が少し遠慮がちに手を挙げた。すると、アーカイヴさんが急に迫って来た。


「なぁ君、それほどの魔法の腕前なら我が軍隊に来ないか?報酬は沢山よ…イタッ、イタイイタイ止めて下さいリネスタさんイタタタタタイタイタイですって。」


急に勧誘を始めたアーカイヴさんに対し、どうしようか迷っているとお母さんが後ろから腕をきめた。本当に痛そうだった。


「すまんな朱咲。こいつは実力はあるのだが少々バカでな、驚いたか?」


「いえ、大丈夫です」


「そんなことよりも朱咲、お前魔法使えたのか。すごいな。元素属性は何だ?」


「今日使い始めたので詳しくは…でも、火は使えます。加減は効きづらいですけど」


「そうか、火か。珍しいな。それで星琉は魔法は?」


「すみません。僕はその辺はからっきし使えません」


「謝らんでいい。むしろ私はそっち専門だからな。よし、これで技術はマンツーマンでいけるな。」


「あの、お母さん。もしかして、私の先生って、アーカイヴさんですか?」


「ま、そうなるな。歴史とか国語とかの勉強は私が見るから安心するといい。あと、あいつが暴走しだしたら構わずあいつに魔法ぶっぱなせ」


さらっととんでもないことを言っているような気もするが、まぁそうならないだろうと思った。ちゃんと常識はある人そうだから。


「り、了解しました」


「そういえば、何で下に来ていたんだ?」


「あ、そうでした。あの、今何時ですか?」


「汝?今が私とはどういう意味だ?」


もしかしたら、時間の考え方が違うのかな。だとすれば、どうやって聞こう。


「いえ、そうではなくて。えっと、今って時間にするといつですか?」


「あぁ、時間か。今は、そうだな。地の刻の卯の時を少し過ぎたくらいだが?」


「わかりました。ありがとうございました」


「それしきのことで礼はいらん」


つまりこの世界での時間は、陽の傾き的に午前が天の刻、午後が地の刻で、干支の順番に1時、2時、3時…となるのか。わかりやすい。卯の時だったら、今は午後4時か。ゆっくりしてても夕食には間に合うだろう。

それよりも一つ不思議なことがある。来て少ししかたってないが、便意が発生しないのだ。これは朱咲の方も同じらしく、少し首を捻っていた。いつもなら、このくらいの時間にトイレに行きたくなるはずだが、今日はそれが全くない。ま、無いなら無いで楽ではあるな。


「そんじゃ、俺帰るぜ」


と、いろいろこの世界の仕組みについて考えている間にアーカイヴさんが帰り支度を始めた。


「気を付けろよ。お前はただでさえ何かやらかすから」


「おう。わーてるって」


「アーカイヴさん。これからよろしくお願いします」


「おう。こっちこそな。っても、すぐに抜かれそうな気がするけどな」


そう言ってアーカイヴさんは帰って行った。


「どうだ?これからやっていけそうか?」


「はい。お母さんも、これからよろしくお願いします」


「いちいちかしこまらんでいい。あ、本を読みたいなら、下に図書室があるからそこにいけばいい」


「ありがとうございます。では、早速行ってきます」


と、お母さんに言って地下へと続く階段を朱咲と一緒に降り始めた。




・・・




そこは図書室と言うより、国立図書館の方が納得できる規模のものだった。

そこに着くなり、僕は歴史書を取って朱咲と一緒に読んだ。


『アナトリア大陸歴史書

神界暦256年

中央の女神 キラハヴィの誕生。その翌年に四方の女神が誕生。それぞれ東の女神 セイリュー、西の女神 ニレヤータ、南の女神 スザク、北の女神アルストラーナと呼ばれた。


神界暦278年

中央の女神によってアナトリア大陸が創られた。それと同時にいくつかの種族が創られ、それらは後に人間族、妖精族、獣人族、亜人族となり、当時は魔族ではなく神族がいた。そしてこれから大陸暦が始まった。


大陸暦4年

四方の女神が大陸を統治


大陸暦43年

妖精族が猫妖精族ケットシー歌妖精族プーカ風妖精族シルフに別れて領土争いが発生。それに伴いその他の種族が防御に徹し、神族のみが止めに入り、一時停戦になった猫妖精族と歌妖精族によって完全に滅ぼされた。


大陸暦45年

協定を結んだ猫妖精族と歌妖精族との戦いに風妖精族が降伏し、今の領土で確定した。領土比は猫妖精族と歌妖精族:風妖精族=8:1くらいになった。


大陸暦50年

神族の死体が突如魔族となって現れた。その後急速に数を増やし、その他の種族を呑み込もうと攻め込んだことをきっかけに、第一次大陸大戦が始まった。


大陸暦126年

長きに渡って続いた第一次大陸大戦が終わった。結果として、大陸がいくつもの大きな島と小さな島に分裂した。そして、そのほとんどが魔族の領土になった。


大陸暦150年

亜人族が人間族と2種族間協定を結んだ。その翌年、亜人族が獣人族と妖精族と3種族連盟を建立。それを期に人間族が一方的に獣人族と妖精族を嫌い始める。


大陸暦158年

人間族が獣人族と妖精族の領土に攻め込んだ。しかし2月ほどで人間族が降伏


大陸暦160年

魔族から繰り返し侵略を受けていた亜人族が魔族と停戦契約を結ぶ。


大陸暦165年

魔王の誕生。それと同時に勇者が誕生し、ともに討伐隊を編成。第二次大陸大戦が始まった。


大陸暦209年

魔王と勇者が両者討ちになり第二次大陸大戦が終わった。


大陸暦346年

再び魔王が誕生。勇者が誕生せず、対抗手段がなく防御に徹するしかなくなった。』


今が何年か判らないが、今の状況がまずいことは判った。


「朱咲、どうする?」


「かなりややこしい状況だけど、私達ならどんなことだって乗り越えられるよ。だから、今は怖じ気づかず、前に歩を進めていくことが大切だと思う」


「そうだね」


そう、前に進むんだ。そうすればおのずと道はひらける。

そう決意し、“私”は上に手を伸ばし、いずれたどり着ける終焉を掴むように、虚空を掴んだ。

正直結構疲れました。でも、読んでくださる皆さまがいるから頑張れます。

それではありがとうございました。

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