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世界は僕らの邪魔できない  作者: 九十九疾風
第1章 転生と異能とそれぞれの過去と
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第一章 二話 初めの村

そこは村というよりは、町といった方が相応しい広さだった。村と聞いて小さいと思っていたから、驚いた。

村に入る門の前には衛兵らしきものがいたが、リネスタさんを見たとたんに道を空け、さらには敬礼までした。それがあたかも普通かのように、気にせずに入って行くリネスタさんを見て少し不思議に思った。


「リネスタさん。失礼を承知でお聞きしたいのですが…」


「そんなにかしこまらんでいい。それにリネスタで構わん。それで、何か?」


「もしかして、軍隊か何かに所属しているのですか?」


「そうだが、それがどうかしたのか?あ、そうか。まだは自己紹介していなかったな。私は、首都第二守護軍五番隊第一遠方地域守備隊、ならびに人間族牽制部隊隊長のリネスタ・アーガポロスタだ」


「何と言いますか。ぼ…私はものすごい人と一緒に歩いていたのですね」


この人を見た時、油断できない人だとは思ったが、まさか部隊の隊長だとは思わなかった。さすがにどのくらい偉いのかは判らないけど、少なくともこの人の纏っている空気は、ただならぬ実力者であることをもの語っていた。


「あの時に戦う道を選ばなくってよかったです。私達では2秒ともたなかったでしょうから」


「いや、そんなことないぞ。君達自身は気付いてないかもしれないが、君達もかなりの実力を持っているぞ。もしかしたら私が負けていたかもしれん。そんな意味ではあの時は戦いにならなくてよかったと言えよう」


謙遜だろうか?いや、出会ってまだ少ししか経ってないが、そんなことをするような人では無い。それに、目が嘘をついてないことを記していた。


「そう言っていただき、誠に光栄です。確かにそうですね。戦ってもお互いに傷付くだけですからね」


「この村には宿もあるし、飲食店や小さい市場もある。しばらく拠点にするにはちょうどよい。」


と言ってリネスタは袋の中から金貨を40枚出して、僕達に渡してくれた。


「あの、これ」


「君達にやる。生憎、金は腐るほど有るんだ。それ一枚で25万ソルカだ。40枚あればここで、ある程度の生活が20年はできる。が、君達は私が預かろう。この村に学校はないからな」


「えっ、良いんですか?でも、迷惑かけることになると思いますよ」


「構わん。と言うより、私は他種族から攻め込まれない限りはずっと居続けるつもりだからな。もしかしたら、要請がかかって首都に戻らなくてはならなくなるかもしれないがな。むしろ私からお願いしたいくらいだ」


「ならばお言葉に甘えさせていただきます。それでは、このお金はどうすればよろしいですか?」


「君達が自由に使ってくれたらいい。それより、今日から一緒に暮らすのだから家族と同じだ。そんな堅苦しくなくてよい」


僕は、リネスタさんは本当に優しい人だと感じた。まだ出会って1日も経ってないのに、僕達のためにお金をくれて、さらには住む家も与えてくれた。感謝してもしきれない。


「わ、判りました。何て呼べば良いのでしょう。リネスタさん?リネスタ?お姉ちゃん?お母さん?」


「好きに呼んで構わん」


「じゃあお母さんで♪」


「お、おう。そうか。そう呼ばれたことがないからちょっとこそばゆいな。それより、星琉…とか言ったな。」


「あ、はい」


急に自分の方に話を振られ、戸惑いを全身で表しながら朱咲が返事をした。まぁ、ただ怯えた感じで僕達の3歩目くらい後ろを付いて来ていただけだから、話に付いてこれてないのかもしれない。


「お前は会ってから全くしゃべってない。人見知りするのかもしれんが、あまり良い傾向ではない」


「は、はい。すみません」


「まぁこれから一緒に暮らすんだ。私がお前をきちんと更正して立派な男にしてやる」


僕は、今以上に朱咲に申し訳ないと思ったことはないかもしれない。朱咲、心を強く持って頑張れよ。ただ、そうやって心の中で応援するしかできなかった。それは無意識に自分にも言い聞かせていた。


「とりあえず、私の家に案内する」


「もしかして、目の前にある城みたいな建物ですか?」


「そうだが何か?」


しれっと答えるリネスタ―――お母さんに、あれがただのオブジェクトだと思ったなんて言えなかった。本や、教科書の写真でしか見たことが無いほどの豪邸だったから、あまり現実味がわかなかった。


「いえ、何でもないです…」


「?」


少し首をかしげてから先頭に立って歩き始めた。そんなお母さんの背中を見ているとふと、この世界にも不平等はあるんだな。と、お母さんとは違って貧相な人達がいるのだろうかという考えが頭をよぎった。大きなお金を持ってる人がいるのなら、必然的に全くお金がない人もいるはずだから、この世界に来たばかりの僕達が贅沢な生活を送らせてもらえることに少し罪悪感を感じた。




・・・




「お帰りなさいませ、ご主人様」


お母さんの家に着くと、私達と同じか少し下くらいの年齢のメイドさんが総手で迎えてくれた。


「メリシア、来てくれ」


お母さんがメリシアという人を呼ぶと、周りの人よりも少し落ち着いた雰囲気を持ったメイドさんがきた。


「お呼びでしょうか?」


「あぁ。ちょっと紹介したい子達がいてね。紹介すると、大きくてちょっとおどおどしている男の子が御瀧 星琉。小さくて可愛くて小動物感マックスの女の子が御瀧 朱咲。双子の兄妹なんだって」


紹介の差がかなりある気が………まぁ朱咲はわかるとしても、僕の評価高い気がした。少し体がムズかゆかった


「御瀧 朱咲です。よろしくお願いいたします」


「御瀧 星琉です。よろしくお願いします」


「こちらこそ。私の名前はメリシア・リスターノ・アブヤ=ディスヴァンダムスです。よろしく。私はここでメイド長をしています。それでご主人様、なぜ急に私に紹介したのですか?」


「あぁそれはね、この子達、今日から家族になったから」


「判りました。それではお部屋に案内します。」


メリシアさんは驚いたり、慌てたりすることなく、まるで日常の一部分かのように対応した。


「あの、一つお願いしてもいいですか?」


「大丈夫です。どうぞ」


まだいろいろと確認したいこともあるし、出来れば離れたくはなかった。


「わ、私とお兄ちゃんの部屋を一緒にしていただくことってできますか?」


「判りました。それと、私も含めメイドには敬語は使わないでください」


「えっと、そのうち、慣れてきたらそうしますね。後、了承してくれてありがとうございます」


メリシアさんが僕の言葉に頷くと、部屋に案内してくれた。部屋は1部屋とは思えない程に広かった。例えるなら、そう。学校の教室が丸々3つ入るくらいだった。そこに豪勢なベッドが2つと、二人用ソファーが、僕のひざの高さくらいの机を囲うようにして三つ置かれていた。さらに別の、こっちは朱咲の腰くらいの机と、それに合う高さの椅子もあった。そのこの世のものとは思えないほど豪華な光景に唖然としていると、メリシアさんが『ごゆっくり』と言って戻っていった。

その背中を見ながら僕は、朱咲の今の状態はダメだな。少しヤキを入れてやるか。と心を鬼にする決意をするのだった。

こっちが落ち着き次第、前作にも着手します。

それではありがとうございました。

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