第二章 六話 希望
もう少し日付の進行早くしろよと言われそう...と思ってたり、そう思いつつもいつも通り書いちゃったり...ぐだったらすみません。
「ねぇ...助けて!助けて!だれか...助け......」
僕はその声によって起こされた。気がした。
「懐かしい夢だったな...」
時刻は天の刻辰の時。そろそろ早朝トレーニングの時間だ。僕はベットから起き上がると、まだ春先のような少し冷えた風が顔に当たり、少しの肌寒さを感じつつも着替えて昨日と同じ場所に向かった。
「うぅ~、外もまだ少し寒いよ」
誰にも聞かれていないつもりで独り言を呟きながら、ランニングも兼ねて走って向かった。走っていると、さっきまで冷たく感じていた風が心地よく感じられた。
トレーニング場に着くと、昨日と同じように軽いストレッチから始めた。今日こそは魔力の扱いになれる訓練をしないと。と、思いつつも今日の演習のことを考えるとあまり長いことやってられない。
「てっとり早く済ましちゃうかな」
型をいつもより少し入念にやって、時間配分を工夫した。型は数が多すぎるので、時間をかけようとすればかけられるので、そこだけは深焉流に感謝かな。残り時間を十分になるように調整して、時間に気兼ねなく魔力の訓練にかけられるようにした。
「よし、今日こそはやるぞ!」
空回りしないように気合を入れて、僕は集中した。集中の中で、一点に魔力が集まるのを感じた。しかしまだまだ足らない。まだ集められる。そう思いながら、ほとんど限界まで溜めて解放した。四散させるイメージで。そしてそれが完全に散ってしまう寸前でまたそれを一点に集めた。それを数回繰り返してから一点に集まったものをもう一度体の中に戻した。
「ふぅ、とりあえずはこんなものかな。思いの外体力使うな~」
まだ初めてだったから慣れてないので疲れるのは当然として、想定していたよりも神経を使った。それでも多少空気中に逃げてしまっていた。
正直、一番辛かったのは一度出したものをもう一度体の中に戻すことだった。おそらくここら辺は慣れとか熟練度とかの話になってくるはずだから、反復練習をしていくしかないのかな。
「そろそろ戻ろうかな。榎鏤さんが心配してしまうので」
時刻は昨日戻ろうとした時間よりも早かったというのと、昨日ちゃんと理由を説明したというので、昨日みたいに怒られる心配はないだろう。それでも一抹の不安は取り除くことができないのは、きっとまだ機能のことを引きずってしまっているからだろう。あとは、榎鏤さんが少し...いや、かなり過保護だからだろう。正直帰るのがつらい...
それでも、怒られたくないので、トボトボと帰るのだった。
・・・
「おはよ~」
「おはようございます。榎鏤さん。朝食を、簡単なものですが作ってみました。前は、火と刃物が怖くて料理どころの話じゃなかったんですが、今回は少し工夫してみました」
「そ、そうなんだ。また今度教えてよ」
「はい。いつでも大歓迎です」
榎鏤さんは僕が帰って来たときまだまだ夢の中だったので、起こすのも悪いと思って一人で朝食を作っていた。精神を少しだけ遠くに置くことにより、火や刃物の恐怖を最小限に抑えたので、まともなものができた。僕自身は朱咲のために料理の練習をしていたのと、元々朱咲は料理が上手だったというのがあるので、失敗の要因はそのことぐらいしか思い浮かばなかった。そしたら案の定...というわけだ。
「それより、榎鏤さんは起きるのが遅すぎです!そんなんだから、昨日もギリギリだったんですよ。少しは考えて起きてください」
「うぅ...善処するけど......最初のほうは早い時間になれるために起こして~」
「だめです!自分で起きられないと意味がないので頑張ってください」
少しシュンとしていたけども、自分でもそこが課題だって気づいているんだろう。しぶしぶといった感じで理解しているようだった。
「さ、冷めないうちに食べちゃいましょう」
榎鏤さんが顔を洗ってくるのから帰ってくるのを見計らって、早く食べるように促した。そうでもしないと、榎鏤さんはずっとしゃべっていそうだからだ。実を言うと、昨日遅れかけたのはそれが原因だともいえた。
多少せかしながらだったので、昨日よりは断然早かったので遅れるようなことはないはず...あまり油断はできないけど、それでもまだまだ時間はあるので逆に早く着きすぎてしまうかも知れない。
「さて、それでは行きましょう。まだ早いので、ゆっくりおしゃべりでもしながら。そのほうが絶対楽しいですよ」
「もぅ...わかったよ。確かに早いほうがゆっくり出来ていいね」
「でしょ?榎鏤さんが頑張って早起き出来たらこんなにゆっくりと学園に向かえるんですよ♪最高じゃないですか?」
僕はゆっくりとできる時間がうれしくて、少し後ろを歩いている榎鏤さんに向かって笑いかけた。あまりのうれしさで無意識のうちに鼻歌を口ずさんで、軽くスキップしていたと気づいて恥ずかしくなったけど...ずっと黙っていた榎鏤さんがぽつりと、予想外の言葉を発した。
「天使って本当にいるんだな~」
「ふぇにゃ!?」
変な声を出して固まってしまった。僕は榎鏤さんの顔を見るのが怖くて、振り返らずに次の言葉を待った。少しずつ足を前に進めながら...でも、それはカタツムリよりも遅い速度だっただろう。
「いやね、さっきの笑顔の無邪気さは...ね。さすがにこんな絶望にとらわれている世界で邪気のない笑顔ができるのはすごいよ」
「そ、そうなんですか。私って、そんな風に見えたのですか?」
「うん。私ね、朱咲ちゃんの笑顔を見たときに、神様が舞い降りたような光が見えたんだ。もしかしたら、本当に天使なのかもね」
「いえ...さすがにそれはないですよ...むしろ、私は...」
僕はあまり自分のことが、そんなにすごいものと思ってないので、ほめられると多少ネガティブになってしまう。すると、榎鏤さんは少しキョトンとしてから、僕の手をつかんで語り掛けるように言ってきた。
「朱咲ちゃんは希望なんだよ!この世界を救ってくれる希望!魔王を倒してこの世界を解放してくれる唯一の可能性を秘めた少女。それが朱咲ちゃんだよ!」
「えっと...あの...あ、ありがとうございます」
「そんな朱咲ちゃんが下を向いてると、希望が無くなっちゃうような気がして怖いんだ...だからって、ずっと笑っていてくれなんて言わない。ただ、下を向かないでほしい。それだけだから!」
「...はい!正直私が希望っていう自覚はありません。けど、私が少しでもこの世界の役に立てるのなら、何でもします!」
「うんうん。その意気だよ!」
僕は前を向こうと思った。少しだけでもいい。でも、その少しで絶望が希望に代わるのなら、いくらでもする。それがきっと、僕の...いや、僕たちの使命だから。
そのことに気付かせてくれたのは、他の誰でもない。榎鏤さんだ。僕はこの時、初めて友情が素晴らしいと気づいた。
・・・
「ついた~!」
正門前に着くと、榎鏤さんがまるで小学生のようにはしゃぎだした。この時間に学園に付けられたのは初めてだったらしい。
「今の時間はまだ学園にきている人がいないんですね」
早く着きすぎてしまったのだろう。学園付近に人影が全くない。
僕は一つ確かめたいことがあったので、足早に教室に向かった。榎鏤さんはまだ正門前から中に入ろうとしていないので、放っておくことにした。
「あ、ちょっと待ってよ~」
そんな僕に気付いて声を上げる榎鏤さんを横目に、速度を変えずに教室に向かった。この後榎鏤さんに軽く怒られたのはまた別の話。
教室に着くと、人影が一つあった。
「おはようございます。早いですね」
「いつものことだ。それよか、お前も充分はえぇだろ。まだ始業一時間半前だぜ」
「榎鏤さんが遅れないようにせかしてたら、思いのほか早く着いてしまって...」
「なるほどな。というかお前さ、今日朝っぱらからどこ行ってたんだよ。さすがにあの時間にランニングしている奴がいたのを見て驚いた」
「えっと...まぁ、朝の日課のようなものです」
「そうかい。それから戻ってきて普通に準備を始めるのか。大変だな。それを両立できるんならすげぇわ。さらに学業のほうも問題はなさそうだな。全部一気にやろうとして体壊すなよ」
「ありがとうございます。そちらこそ、体にはお気を付けください」
「それは杞憂だ」
そこで緋座さんとの会話は途絶えた。もしかしたら、この人も世界を変えようとしてるのかな。だから、初対面の人に強く当たってしまう。不器用なのかな。
そんなことを自分の席で考えていると、榎鏤さんがどたばたと来てた。沈黙が続いていて、周りからしたらものすごく仲が悪いように見えるかもしれないけど、単に無意味に話すことを嫌っているだけだ。
「え?緋座くんいたんだ。ていうか、何この状況、修羅場?!」
ここにもいた。勘違いしている人。
「別にそういうわけではないですよ」
「そっか。ならよかった」
榎鏤さんが胸をなでおろした。というより、さっきの会話からは、緋座さんはあまり危ない人って感じじゃなかったけど、昔いったい何があったんだろう...
それから十分過ぎたころくらいから少しずつ来る人が来て、始業二十分前には全員が来た。もしかしたら...いや、もしかせずとも、榎鏤さん以外はみんな早めに来て友達とも会話にいそしんでいる。
ただ、来る人来る人みんな揃って榎鏤さんを見て驚いていた。僕は今は、そんなことどうでもよかった。今は一つのことに全力で集中しなければならなかった。
先生が入室してきた。そして確信した。僕の予想が正しかったこと、そして、あの違和感の正体が何だったのか。
僕は、先生が出席を取り終えて連絡を済ませたタイミングで、無言で立ち上がり、自然を装って先生に近づいた。
先生が警戒していないことを確認し、空気の元素魔法で剣を造った。
そして僕はその剣を...
正直、自分でも鬱展開多い気がしているので、少し前向きに進めていこうと努めます
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それでは次回




