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序章 私の心は…もう……〈前編〉

まず最初に、いじめや虐待が嫌だという人はお薦めできません。この話には後でも多少触れます。

まず主人公の名前を

主人公は二人います双子です。

兄・・・御瀧みたき 星琉せいりゅう

妹・・・御瀧みたき 朱咲すざく

私は、昔あったあることが原因で成長が止まり、髪の毛が白くなってしまった。このことを受け入れることはできた。でも、昔あったことを乗り越えられた訳ではない。これから話すのは、私にあったことです。




・・・




私とお兄ちゃんは、父の命令で春日宮かすがのみや小中一貫校に入学した。その学校は、入学と同時に新入生が2つのクラスに分けられ、中学校に入学するまで変わらないようになっていた。分けられた2つのクラスを、天組てんぐみ地組ちぐみと呼んでいた。この2つのクラスの違いは1つしかない。それは、いじめがあるかないかだった。



お兄ちゃんは天組に、私は地組になった。そして、私は地組のいじめの標的になった。恐らく、私が小さかったからだと思う。地組のいじめは、クラスの子1人に対して、その子以外のクラスの子達と先生が一緒になっていじめをする。



ただし、そのクラスには暗黙のルールがあった。それは成績が学年トップならばいじめを受けない。また、クラスのトップならば、1つだけされないいじめを指定できる。私は学年2位でクラス1位だったから、1つだけしてほしくないいじめを指定した。それは、性的暴力だった。ちなみに1位はお兄ちゃんだった。



入学して早々いじめが始まった。最初は話し掛けても無視したり、陰口を本人に聞こえるように言ったりするような、心に傷を負わせるようなことだった。その頃はまだいじめまではいっていなかった。しかし、いじめが始まってから僅か半年で、それはあからさまないじめに変わった。まだ暴力まではいっていなかったが。しかし、学年が1つ上がり、二年生になってすぐに暴力が始まった。1日に最低でも15回、多い日には100回を超える数殴られた。その頃から、全身に痣ができていることが普通になった。そしてある日、父からの虐待も始まった。それは二学期の中頃、クラスの子1人につき10回ずつ殴られた。1クラスの人数は私を除いて35人だったから、合計350発殴られたことになる。全員が殴り終わる頃には、5時をかなり過ぎていた。立つことすらままならない状態の体に鞭打ち、決して短くない帰路を歩いた。



家に着くと、玄関に父が立っていた。父は帰りが遅くなった私をまずは玄関で咎めた。その後、私は父に和室になっている応接間に連れて行かれ、正座をさせられ、説教という名の虐待を受けた。全身に痣があることを知っていても尚、私を殴ったり、ぶったり、蹴ったり、踏んだりした。それが次の日の朝まで続いた。

それを止められる人はいなかった。お兄ちゃんは部屋にいたから、防音してある応接間のことは判らない。母さんは数年前に自殺…に見せかけて父に殺された。それを知っているのは私だけ。だから父さんは私を目の敵にしている。



父からの虐待は2日に一回くらいだった。そんな日々が続いた四年生の三学期の初め頃、私の机の中に何かが入っていた。それは無惨に引き裂かれた、母さんから貰った大切なお守りだった。いつも大事にランドセルに付けていて、昨日帰ってからなくなっていたことに気づいて、必死になって探したのに見つからなかった。まさか盗まれているとは…それを見た時、大きな喪失感に襲われてそれを抱き抱えて泣き出してしまった。

その時、お守りの中に紙が入っていることに気付いた。その紙には、『何があっても笑顔だよ!』という母さんからのメッセージが書かれていた。それを見た途端、体の底から温かい気持ちが湧いてきた。私は、それのお陰で立て直すことができた。



そして、いじめ暴力と1年生のときにされていた心に傷を負わせるものが同時に行われるものになった。いじめは、留まることを知らず、年を重ねる毎にだんだんエスカレートしていった。それも限りなく悪い方向に…



六年生になってからは、何度も血を吐いた。これまで殴られたダメージは、気づかぬ間に蓄積し続けていた。そしてそれ以上に、殴られたときの威力が成長と慣れによって最初とは比べ物にならないくらいにあがっていた。それに引き換え私は、いじめや父からの虐待によるストレスと打撲、骨折等の怪我により成長が妨げられ、一年生のときから40㎝も伸びていなかった。だから私の身長は今でも120㎝に満たない。そんな私を蔑むように、周りの皆は大きくなっていく。でも私は、周りの皆のことを憎んだことはないし、嫌いになったこともない。だから心が壊れずに堪えられた。その気持ちを持ち続けられたのは、お兄ちゃんの存在と、授業面では誰にも負けない自信があったからだ。



そうやっていじめにまみれた小学校生活を卒業し、中学校に入学した。入学した後もいじめは続いた。そして、私の人生を全てねじ曲げた事件が起きた。ある雪の日の朝、登校して自分の机に行くと、机の中にも上にも雪が詰め込まれたり乗せられたりしていた。それは特に目新しいことではなかったので、いつも通り人気のないところに捨てに行った。



そこに着いて雪を捨てていると、後ろからクラスの男子に押し倒された。そうなれば私はもう成す術がなく、ただされるがままになるしかなかった。

私を押し倒した男子は、私が抵抗する意思がないと確認できてから仲間を呼んだ。すると4~5人の男女がスコップを持って現れた。私はこのままスコップで殴られるのかと思った。でも予想は外れ、私は近くを流れていた、水深はあまり無いがそれを舗装しているコンクリートが高さ1mくらいの水路に投げ込まれた。そして、スコップを持っていた子達が雪を私の上からかけてきた。その日は生憎大雪だったので、水路を埋められるくらいの量は余裕であった。

さらに、その日の気温は氷点下5度だったので、水路の水も冷たかった。そのため、水路の水と上からかけられて私を覆い被さっていく雪に体温と体力を同時に奪われていった。でも、その時の私はそのことを全く感じず、もう少しで遅刻になって一時間目の授業に遅れてしまう。このことだけが頭の中をぐるぐる回っていた。そして、少し時間がたった頃に、無情にも一時間目の始業のチャイムが鳴った。その瞬間、体中の力が抜けた。それと同時に体温と体力がもの凄い速度で無くなっていくのを感じた。



私もう、死ぬのかな?



そう思えても、もういいとさえ思えた。大きすぎる喪失感と虚無感で、もうどうでもよくなった。すると、瞼が少しずつ落ち始めた。



朦朧とする意識の中、走馬灯のようなものを見た。その中にお兄ちゃんの姿が見えた時、死にたくないと言う気持ちが芽生えたが、それも一時だけ。瞼が落ちるままに任せて、完全に落ちた瞬間、意識が途絶えた。


「………く」


誰かの声が聞こえた。この声はお兄ちゃんだ。


「……ざく」


誰を呼んでいるのだろう。もしかして、私?


「……朱咲」


私の名前がはっきりと聞こえた時、意識は完全に覚醒した。目を開ければ、知らない天井があった。此処は何処だろう。そう思った時、腕に重みを感じた。そこには俯きながら泣いているお兄ちゃんがいた。


「……どうしたの?お兄ちゃん?」


私は何が何だか判らずに聞いた。するとお兄ちゃんが驚き、私の顔を見て、その後、


「朱咲~~」


と言って抱きついてきた。


「お兄ちゃん、重い…」


そういうと、お兄ちゃんはごめんと言って離し、私に、


「死んだんじゃないかって心配したんだぞ」


と言った。それに私は、


「ごめ…ん…な…さい」


と言った。すると、別のところから声が聞こえた。


「お前のような出来損ない、とっとと死んじまえばよかったのに、チェッ」


父さんがいたことに今さっき気付いた。でも、言われた意味を本能的に理解してしまい、脳がそれを拒んでいた。でも、心には大きすぎる傷を刻んだ。


「父さん、そこまで言う必要は……」


それからのことは憶えていない。ただ、お兄ちゃんと父さんが言い合っていたことくらいしか。気が付いたら、母方のお祖父さんとお祖母さんの家にいた。



お祖父さんとお祖母さんは本当に良い人達だった。急にきた私たちの為に転校の手続きをし、すぐに学校に通えるようにしてくれた。さらに、お兄ちゃんが事情を説明してくれたらしく、叔母さん―――お母さんの妹に頼んで、家から私たちの所有物を全て持ってきてくれた。

…らしい。こんな私の為にここまでしてくれたことに、とても嬉しかった。すると、目から熱い何かが流れた。私はそれが何か判らなかった。


「朱咲、もしかして泣いてるの?」


というお兄ちゃんの声でそれが涙だということを思い出した。もう8年以上も泣いていなかったから、涙というものを忘れていたのだろう。きっと、もう何も心配しなくていい、そう思った途端にずっと押し殺していたものが涙となって溢れだしたのだと思った。私は、涙が流れるままに任せて、お兄ちゃんの膝の上で泣き疲れて眠るまでずっと泣いていた。



次の日、新しい学校に行った。とても急だったのに、すぐにクラスに馴染めるようにして貰ってあった。そして、これまでと違う、とっても楽しい学校生活がスタートした。



…と思ったのも束の間、母方のお祖父さんの家に逃げて来てから、4日たったある日。その日は不幸か、幸いか、家には私しかいなかった。日曜日で学校も休みだった。お兄ちゃんは友達とカラオケに行っている。お祖父さん達は、今日は用事があって夕方まで帰らないと言っていた。



その日の昼下がり、1通の手紙が届いた。送り主が父だったから、ほぼ本能的に自分の部屋に行った。そしてドアにもたれ掛かるようにして文面を読んだ。



『娘へ

お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ。どう責任取ってくれるんだ。お前の犯した罪を全て俺に擦り付けやがって。お前なんかがいるせいで、俺は会社でずっと平社員だったし、それだけでなくリストラまでされた。それ以外でもお前はずっと俺を苦しめた。どう責任を取るつもりなんだ。もうお前がどう足掻いても、お前の犯した罪は消えない。もう命で償ってもらうしかないようだな。ったく、余計な手間を掛けさせやがって。お前なんか存在する意味なんてねぇんだよ。今すぐ死んじまえ。死んで消えて無くなれ!

父より』



読んでいる途中で、力が抜けてペタリと床に座り込んでしまった。その拍子に、手紙の入っていた封筒の中から一枚の写真が出てきた。その写真を見た瞬間、目の焦点が合わなくなり、体の震えが止まらなくなった。



父から送られてきた手紙と写真は、ただでさえ傷ついていた私の心を完全に壊すには充分すぎた。いや、充分すぎるを通り越していた。つまり、壊されたのは心だけではなかったのだ。



それからはほぼ無意識の行動だった。ドアと窓の鍵を閉め、カーテンをして電気を消し、手紙と写真を机の引き出しの奥に仕舞い込んだ。そして、明かりがない真っ暗な世界で、私はただ、ベッドの上に寝転がって自然に死ぬのを待つのみだった。その時の私は、絶望や悲しみ、憎しみ等の負の感情は一切持っていなかった。だからと言って、正の感情を持っていたわけではない。つまり、何もなかったのだ。私の心は欠片も残らないくらいに粉々に壊れてしまっていた。ただあるのは、無意識に働いている自己防衛本能だけだった。でも、体はずっと震えていた。きっと、私の心を一瞬にして壊してしまったあの手紙と写真を、本能が恐れていたのだと思う。だから私は、手紙と写真のことを忘れようとした。でも、できなかった。むしろ、忘れようとすればするほど、心が壊れた無防備な私の記憶に刷り込まれていった。


私をそこまで陥れた写真は―――

後編はなるべくすぐに出せれば…と思います。

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