第二章 一話 変革
新章開始です!
正直第一生短かったかなと思いますが...
「それでは今から、第百回咲琉学園入学式及び特待生転入式を始めます!」
学園長の宣誓によって、入学式が始まった。学校の制度については既に入学した全員が知っていることなので割愛された。
「この学園の方針、制度について説明します」
入学式の四日前に学園長先生から直接的な呼び出しがあった。理由は、特待生に事前に学校について説明しておきたいというのと、特別教官であるお姉ちゃんとアーカイヴさんが挙って推薦しているから、どれほどの技量か知りたいとのことだった。
「先ずは学校の方針から。この学園は第一として魔王を倒すための兵力を高めるために有能な学生のみを集めて互いに戦う中で切磋琢磨して、やがてはその中から、魔王を討伐せしものが現れんことを。次にこの学園のスローガンを。スローガンは、『rebel against one's destiny』です」
「『運命にあらがう』、ですか。まさに今のこの世界と戦う意志を記していますね」
「もうこのスローガンの意味を...いやはや、流石ですな~」
「お褒めにあずかり恐縮です」
学園長の第一印象は、底が知れない人だった。ただ、あまり悪い印象ではなかった。
「そう固くならんでいい。まだ関係は確立しておらんのだからな。それでは、この学園の序列戦及びそれに関連した決まりについて。その前にこの学園についての説明をします。この学園には二つのクラスに分かれています。魔術クラスと、体術クラスです。二クラス合わせて160000人います。学年に分かれていて、高等部一年から満三十歳まであります。毎月一度だけ序列戦があって、初年度の四月と、毎年12月に学園序列大戦と呼ばれる、学園全生徒参加型の序列戦があります。対戦方法は至ってシンプルで、予選で勝ち上がった人たちでトーナメントをして一位を決めます。その他の序列戦は一位のみ、その実力にあった位置から参戦する形を採ってます」
そこまで言うと学園長は少し間を置くと、一段と声を低くして、でも顔は笑ったまんまで言った。
「飛び級はありません。卒業条件は、三月の年度最終序列戦で校内序列上位100位以内に入ることです。これは学園序列大戦と同じ形でやっています。校内序列は、クラス別です。三年間で一度もtop10000に入らなかった場合、毎朝早朝5時から7時30分まで訓練が一年間入ります」
そう言うと、学園長は声のトーンを元に戻して、一段と優しい声で言った。
「私は、あなたたちならそう遠くない将来に魔王を討伐してくれる。そう確信できました。あなたたちの実力はもう生物の範疇を超えています。学園では、その力を悪用せずに日々精進を怠らず、仲間と切磋琢磨してその力の限界を超えた力を身に着けてください。それがきっとこの世界の平和に迎える最短ルートであると私は信じています」
学園長はそこまで言うと、僕たちに対して深々と頭を下げた。その行為に僕たちは深く感慨を受けたとともに、学園長への敬意を払ってこちらも深々と頭を下げた。
どれくらいそうしていただろうか。気が付けばお互い顔をあげて笑いあっていた。
「学園長先生、これからよろしくお願いします」
「よろしくね。それと、ここは全寮制ですから入学式前日に生活用品は持ってきておいてください。部屋割りとクラス割は入学式当日に発表します。あと、私の名前は蓮司場 篠都なので、プライベートではそう呼んでくださいね」
「わかりました。それでは改めまして...これからよろしくお願いします、篠都さん」
その日はそうして何事もなく終わった。
「...........これで私からの話を終わります」
そうこうしているうちに学園長の話が終わっていた。次は確かクラス分けと教科担当教師の紹介だと聞いていたから、自分の担当がだれになるのかしっかり聞かないと。と思い、頭を入学式のほうに切り替えた。
「それでは次に参りたいと思います。例年通りであれば、この後はクラス分けと教員紹介に移るのですが、今年は別の項目があります。それでは、特待生御滝 朱咲、御滝 星琉、上段へ」
急に名前が呼ばれ、少し戸惑いながらも上段に上がった。一体全体何が行われるのだろう。
微かな緊張と激しい動揺、一縷の不安を抱きながら、理事長の言葉を待った。顔は常にひきつっていて、怒っているのかと錯覚するほどの違和感を漂わせていた。
「この二人の生徒は、みんなもよく知るリネスタ教官と、アーカイヴ教官から実力が認められて特待生として入学して来た。実力が確かなのはさることながら、陛下から直々に憲章を授けられている。今日は着けてきていないようだが、これからは着けてくるように」
「「わかりました」」
「まぁ、それは余談として。ここからが本題です。私は二人を飛び級入学する許可を与える!」
生徒、教官含めて全体がざわめくのを感じた。それは当たり前だろう。許可をもらった僕たちですら驚いているんだから。
「みんなが驚くのも無理はないだろう。この話は私が独断で決めたことだから。おそらく、生徒のほとんどが反対すると思う。だが、それは二人の実力を知らないからであって、実力を知ったら反論はないはずだ。と、言っても、あくまでも許可であって、利用するか否かは本人の意思に委ねる」
どうするかなんて言われるまでもなかった。僕たちは少しでも前に進まなくちゃいけない。それならば答えは決まっている。
「「謹んでお受けいたします。そして、憲章に恥じぬように精進します」」
「うむ。期待しているよ」
そうして緊張の一幕は終わった。
「それではクラス分けと教師紹介を行いたいと思います。まず、クラス分けから。特待生の二人は、第二学年のそれぞれのクラスの一組に転入してもらいます。そのほかの生徒は...」
そうして、少し波乱のあった入学式が終わった。クラス分けは一年ごとに代わって、それは一年を通しての総合得点で決めるらしい。そして僕たちは、同い年の先輩に向かって自己紹介を含めたあいさつを行った。
・・・
「えー、集会で言われていた通り、この子が今日からこのクラスで共に学んでいく御滝朱咲だ。まだこの事態に納得していないものも多いと思うが、まぁ仲良くしてやれ。ただ、学園の規定にのっとって、最初の学園序列大戦までは序列戦に出れないが、流石に十二月まで序列戦に出られないのはこちらとしても実力を確かめたいというのがあり、特別処置として七月まで修業期間として、七月に学園序列大戦を行うことが決まった」
えぇー!
クラスのほとんどの人が反論したがっているのを感じた。そんな中、一人の男子生徒が不敵な笑みを浮かべてクラス中に響く声で言い放った。
「別にいいじゃねぇか。この学園にそこまでさせてるんだ。それなりの強さは最低限持ち合わせてんだろ。なら、七月にその実力を確かめればいいだろ。なぁ、特待生さんよぉ」
「おい緋座!ちゃんと名前で呼びなさい!」
「やなこったね。俺はまだそいつの実力を知らねぇから今はまだひたすらに胸糞わりぃだけだ。まぁ、今そいつを見て感じるのは、底知れぬものだけだ」
そういいつつも自分が上だという不動の自信を持っているのだろう。頬杖を突きながらだるそうに言っている。
「皆さんの期待にお応えできるようにしたいと思います。これからよろしくお願いします」
多少の重苦しさを感じつつも、これから頑張って友達を作っていかなきゃなと思った。
その日はそのあとに部屋割りが発表された。
僕は瑠璃玉 榎鏤という人と同室になった。もちろん、女子である。原則として、同じクラスの人と同室になるらしい。正直気まずさはあるけど、相手も相手で気まずいだろうからまずは互いに打ち解けられたらいいかなと思いつつ、少しだけ申し訳なさを感じていた。
・・・
「え、えっと...と、とりあえず初めまして。瑠璃玉 榎鏤です。よろしくです!」
「え、あ、はい。御滝 朱咲です。よろしくお願いします。えっと、瑠璃玉さんでよろしいですか?」
「えっと...榎鏤でいいですよ。す、朱咲...さん」
昼頃に終わって、部屋に戻ってから自己紹介をし始めたのはいいものの、互いに緊張しすぎていて空気が重かった。どうしようか。この空気。
「あの、お互いもう少し肩の力抜きましょう」
「は、はい。ふぅ~。よし!えっと、何話します?」
「そうですね...榎鏤さんはどんな魔法を使われるのですか?」
「あ、私は重力魔法を...朱咲さんは?」
「私は...全てですね」
「え?あの...それってどういう...」
「そのままの意味ですね。この世界のありとあらゆる魔法を使えます。といっても、あまりこの世界の魔法に詳しくないので、探りながらって感じですね」
「すごい...もしかしたら朱咲ちゃんなら本当に魔王を倒せちゃうかも」
「それはわからないですが、なるべく早めに討伐したいとは思っています。世界中の人のために。そして...」
その先の戦いのためにも...そう言いかけて僕はその言葉を飲み込んだ。なぜなら...いや、これができるのは、僕たちしかいないのだから、無意味に他人を巻き込みたくない。
「そして、何?」
「いえ、何もありませんよ。それよりも、緋座さん?はいったい何者なのですか?」
「緋座...緋座って...?あー、緋座 琴把矩ね。あの人にはあまり近づかないほうがいいですよ。あの人は私たちとは別種です。魔法も、心も。あの人とは戦いたくない。勝てる気がしないっていうのもあるけど、相まみえたくないというのがある」
なるほど。緋座さんのあの...まるで天羅さんのような気配は。
「それでも、あの人をなめ切った態度が許せない!どこかで一泡吹かせてやりたい!たとえ無理でも、不可能でも、それでも!私は...緋座 琴把矩を序列一位から叩き落してやりたい!!」
口調を荒げて、少し涙目になりながら吐き捨てるように叫んだ。そんな榎鏤さんに、僕はどんな言葉をかけるべきかわからなかった。
『ちょっと変わって』
心の中の朱咲が変わってというときは何か伝えたいことがある時だけっていうことが暗黙の了解としてあった。
「......榎鏤さん...私は、私はね、緋座さんは...私と...私たちと同じだと思うんだ」
「そ、それって...」
「緋座さんはね、怖いんだよ。自分が自分じゃなくなっちゃうのが。なんでわかるかって言うとね、私は一回自分を失ってしなったから。今からすると、怖いよ。その頃は」
朱咲は優しく囁くように、語り掛けるように、でも確かな意思を含めて言っていた。僕は、そんな朱咲をただ、じっと見ていた。
「だから、緋座さんの気持ちが痛いほどわかるんだ。だからね、だから...」
そう言うと、朱咲は一呼吸おいて強く言った。
「私は、緋座さんを許せない!」
「「えっ!?」」
偶然に一致した。今の流れなら、普通は逆なんじゃないかと思った。でも、朱咲の言い分はよくよく理解できた。
「だから、緋座さんを倒す役、私に任せてください」
投稿ペースが少しずつ戻ってきてるかな。
これからも頑張って書いていきたいですね。
末永くよろしくお願いします




