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ChronuKrisークロノクリスー 神威の戦士と少女皇帝  作者: T-M.ホマレ
後日談 イリーニ共和国〜シンパティア魔戦杯編〜
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後日談:エピローグ

「ただいま。帰ったぜー」


クロノスが我が家の扉を開く。

すると、同時にタタタタッと駆け足の音が聞こえてくる。

そしてすぐに、


「おかえりなさい、クロノス!」


ぼふ、と長い金髪の女性がクロノスに抱きついてきた。

クリスティア・サンクトム改めクリスティア・アーレスーークロノスの妻となった、元皇帝少女である。

クロノスはいつもと変わらぬ妻を、抱きとめてポンポン、と背中を優しく叩く。


「おつかれさま。今日も大事無かったか?」

「ああ、まあな。今のところは平和なモンだぜ」


シンパティア魔戦杯から数年後。

クロノスは部将としてイリーニ共和国に迎えられた後、国家防衛軍の部隊長を経て、今では連隊長を任されていた。

とはいえ本人の能力や性格的な性質上、有事の際は指揮官でありながら最前線に飛び出していくことが多く……しかしその姿が、部下たちから支持を得る一因になっていたりもする。


ちなみにクロノスが飛び出している間、後方のフォローをするのは副官として配置されているイーである。

クロノスのスピード出世や、イーの配属に関しては、裏でアイオロスの暗躍があったとの噂もささやかれているが、真偽のほどは定かではない。


実際のところふたりの連携の相性は良く、魔戦杯出身の元カタフィギオ関係者をまとめて監視下に置くーーという意味でも、いちおう筋は通る配置ではある。



「そういえば、昼間にカロラが顔を見せに来てくれたぞ。師匠によろしく、とのことだ」

「そっか。……あいつ、オレのところには滅多に顔を出さねぇのにな」

「なにやら忙しそうだったぞ。ほら、例の噂の関係で」


例の噂とは、近くの国で、テロ予告や人さらいといった事件が連続している、というものだ。

カロラは国家警備隊に所属しており、パトロールや捜査に忙しくしているのだろう。


「ああ……少し前にアイオロスの野郎ともそんな話をしたな。今はまだ噂の段階だが、油断はするなとさ」

「アイオロスめ、その辺は抜け目のないやつだからな」

「まったくだぜ」


カタフィギオ帝国における最強の部隊・イアロス騎士団を率いるアイオロス・イアロス。

帝国において秘密裏にクリスティアの命を狙い、シンパティア魔戦杯にも刺客を送り込んだ彼だったが、クロノスがイリーニ共和国に仕官すると同時に両国の同盟締結にむけて動き出し、見事これを実現させた。

今ではそれぞれの国の、軍事有力者同士として直接顔を合わせる機会もそれなりに増えている。


「まぁ、アイツが気をつけろって言うからには、警戒しとくべきなんだろうけどな」


と、ここまで真剣な表情で話していたクロノスは、ふとその表情を崩し、ところで、とクリスティアの肩に手を置いた。


「なあ、クリス。……そろそろ離してくれると助かるんだが」

「ええー、もうちょっと、ダメか?」


それなりに真面目な会話をしていたはずだが、この間、クリスティアはずっとクロノスに抱きつきっぱなしだった。

クロノスとしても嬉しく、幸せを感じることではあったが、さすがにずっとこのままというわけにもいかない。


「仕方ない、抱っこして居間へ持ってくか」

「えっ、ちょ、きゃあ」

「おっと、可愛い声が出たな」

「ふ、不意打ちはズルいぞクロノス! それはそれとして、抱っこは嬉しい!」


顔を赤くして抗議しつつ、それでいて素直な感想を口にするクリスティアを愛しく思いつつ、クロノスは居間にあるソファに移動した。

クリスティアは、ソファの上でクロノスにくっつきなおす。


「この国も、いずれ物騒なことになってくるのかな」


くっつきなおして、やや不安げな声を漏らした。

そんな彼女の頭を撫でながら、クロノスは言う。


「大丈夫だろ。……なんて、楽観的なことは言えないけど、クリスが気にすることじゃないさ。お前には、オレがついてる。オレには、お前がいる。もし何かあっても、オレは絶対に負けないしお前を守り切る」

「クロノス……そうだな。そうであった。わたしも不安がってばかりはいられないな」


きゅ、とクロノスの腕を抱きしめながら、クリスティアの顔に笑顔が戻る。

そして、その腕から離れると、クロノスの正面に立った。


「不安がってもいられないが……ところでわたしも、戦いに参加していたことはあったがブランクがある」

「ちょっと前フリに嫌な予感がするんだが……それはつまり?」



「うんーーでは、いま一度、わたしに剣を教えてくれ、クロノス!」



ビシィ、と指をさしながら、半ばドヤ顔な笑顔で言うのだった。

その姿に、クロノスはカタフィギオ帝国の闘技場で、まだ皇帝だった頃のクリスティアとの会話を思い出す。


「うーん、まあ護身用としてはアリ、か」

「だろう? なにせわたしはクロノスの愛弟子だからな!」

「そいつも懐かしいな。わかった、でも無理はするなよ、クリス」


クロノスの言葉に、クリスティアはパッと笑顔を咲かせる。

夫婦の日常に、ひとつの日課が加わった。



二度とクリスティアを危険な目にあわせない。そう誓うクロノスだが、本人の希望ならできる限り応えたい。

それは、激動の半生を送ってきたふたりの新たなる日常。

比較的平和なこの国で、ふたりはようやく、腰を落ち着けて『共に生きる』ことを叶えるのだったーーーー。



- 完 -

みなさんこんばんは、T-M.ホマレです。

まずは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。


2016年から書いている本作「ChronuKrisークロノクリスー」ですが、全36部をもってようやっと完結の運びとなりました。

途中途中で大きくブランクが開き、当初の予定よりずいぶんと時間をかけてしまい申し訳ありませんでした。


「ぜったいにエタらせない」ということはずっと思い続けていたので、完結できて一安心。

まさかオリンピックを飛び越えるとは思わなかったよ……。



ちなみにこれは蛇足なのですが、「イリーニは共和国なのになぜ国王がいるのか?」問題について。

時代的にかなり古い設定だから、というのもありますが、現代でもいちおう「選挙君主制」というものがあり、「選挙はあるけどそれによって王を立てる」みたいな制度となっています。

まぁ、共和政国家のトップは基本大統領なのですが、イマイチ作品の雰囲気にあわないなー、と言う気がして「王」という称号を採用したのでした。


閑話休題。



時間はかかりましたが、ともあれ20万文字弱でクロノクリスは完結しました、

稚拙ながら私自身の最長の長編を完結させたという事実を少し自信にできたらいいなと思いつつ。

もしまた次回作等で見かけたら、見に来ていただけるとうれしいなぁって思います。



それでは、本当にありがとうございました。

T-M.ホマレでした!

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