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ChronuKrisークロノクリスー 神威の戦士と少女皇帝  作者: T-M.ホマレ
後日談 イリーニ共和国〜シンパティア魔戦杯編〜
16/36

後日談第1話 新たなる戦場へ


「これはーー」


あの決戦の夜から数ヶ月が経ったある日の昼下がり。乱雑に切られた金髪をやや長くしたクロノスは、"ソレ"と対峙していた。燃えるような赤。ソレが放つ熱気は、クロノスの顔にまで届いている。鼻腔を刺激するのは、(ほの)かな青臭さと酸っぱさの混じった(にお)い。(しば)しそれらの感覚を確かめるように真面目な表情でソレを(なが)めると、クロノスは銀色の小さな金属を手に取った。それを、固唾(かたず)を飲んで見守る少女がひとり……否、ふたり。


「それじゃーー」


クロノスの手にある銀色が、赤色の中に吸い込まれる。銀色の金属は先が丸く、やや尖り、更に器状になっている。銀色はそのまま赤色をすくい取るとーーそれをそのまま、クロノスの口へと運んだ。赤色に見えたソレは、その実赤一色ではない。白や(オレンジ)や緑が混じっていた。それを咀嚼(そしゃく)して飲み込むと、クロノスは口の端をやや吊り上げながら、(かたわ)らにある金の長髪の少女に向かって口を開く。


「ーーうん。美味くなってんじゃねぇか」


それを聞いた瞬間、金髪の少女の顔にぱっと笑顔が咲く。その横にいた、青い短髪の少女も、ホッとした表情を浮かべていた。


「そうであろうそうであろう! もうソレは何度も挑戦したし、なにより私がクロノスのために作ったのだ! 当然の結果よな!」


言葉では当然、と言い張りつつもその顔は満面の笑顔。嬉しさを隠しきれぬといった様子で、もうニッコニコである。


「良かったですね、陛ーーいえ、クリスちゃん」

「うむ! ……しかしイーよ、そろそろ呼び方に慣れぬか。わたしはもう、皇帝ではないと言うに」

「あはは……。いえ、皇族としてのあなたに(つか)えていた期間が長かったもので」

「しかし、今は仕えるもなにもない。ただの、親友だ」

「はいーーはい。昔のように、幼き日のように、ですね。クリスちゃん」

「うむ!」


安心した途端に(せき)を切ったように会話が弾む少女達を見ながら、クロノスは更にもう一度二度と、銀色を赤色に吸い込ませ、それを口に運んでいく。

口に広がるは程よい酸味・甘味と塩分。そして刻まれた具材が舌の上で溶け、そのまま喉へと吸い込まれていく。作りたての熱気も、体を温めるにはちょうどいい。

ーーそう、(すなわ)ち。銀色の金属とは(スプーン)であり。それによってクロノスの体へと流し込まれている赤色の液体は、トマトをベースに様々な野菜を刻んで煮込んだスープ料理ーークリスティアお手製の、ミネストローネだった。

器にあったソレを全て平らげると、クロノスはふぃー、と息を吐いて再びクリスティアへと話しかける。


「ごちそうさん、美味かったぜ。いや本当、料理なんて全くやったことのなかったクリスが、どんどんレパートリーを増やすよな。上達も早え。このミネストローネだって、昨日とは別モンだ」

「それは……なんと言うか、な? クロノスのためと思えば気合も入ると言うか、何故か学習効率が上がると言うか。……そ、その、愛の力、というか……」

「クリスちゃんこそ、まだクロノスさんに対して照れるんですね」

「か、からかうなっ! ……仕方なかろう、こんなこと、初めてなのだ」


語尾が弱くなるクリスティアに対し、にこやかにからかいの突っ込みを入れるイー。顔を赤くしながら口を尖らせるクリスティアは、主従からより特別な存在へと変化しているクロノスとの関係に、未だ慣れずにいた。


「はっはっは。いや、いつ見ても微笑ましいね、君たちは」


クロノス達がいる部屋へと、一人の老人男性が笑いながら入ってきた。それに合わせて、キッチンの方で作業をしていた老人女性ーー老人男性の妻であるーーも大皿を持って現れる。


「実際、クリスちゃんの物覚えの良さは本当に凄いからねぇ。料理をしたことがないだなんて、ウソみたいだよ」

「まぁクリスは割と、どんな分野でも飲み込みは早い方だからなぁ。ーーそれと」


クロノスが声を絞り、クリスティアに顔を近づける。それだけで再び顔が赤くなりかけるクリスティアだったが、


「愛の力、だよな?」


耳元でそう(ささや)かれると、ボン、と音がしたかと錯覚するほど一気に真っ赤になった。ちなみに、言った本人も少し顔を赤くしている。


「く、くくくろのす、そなたまでからかうのはーー」

「あれ、違ったのか……」

「ーーむ。……ちが、わない。決して、違わないが! がッ……!!」


クロノスがややしょんぼりした表情を作ってクリスティアの言葉を遮ると、クリスティアは顔を赤くしたままでジタバタし始めた。


「はは。やっぱり可愛いな、クリスは」

「〜〜〜〜ッ!!」


言葉を無くしてジタバタを続けるクリスティア。よしよし、とその頭を撫でるクロノスと、その光景を微笑ましく眺めるイーと老夫婦。


「ただいま〜。って、またやってんのかよこのバカップルどもは」


そこに、もう一人。家の外から、赤い短髪の少女が帰宅した。


「師匠。大事な人を可愛がるのもイイけど、あんまりからかいすぎんなよ? 終いにゃ本気でスネちまうぞ」


呆れた風に言いながら、赤髪の少女は老夫婦やクロノス達と同じ食卓につく。これが、ここ数ヶ月の間に出来上がったこの家の食卓のフルメンバーである。



ーーーーー◇◆◇◆◇ーーーーー



アイオロスとの決戦後、カタフィギオ帝国を抜けたクロノス達三人は、カタフィギオ帝国の反対側でアダゴニア王国と隣接する、"王道と和平の国"イリーニ共和国を目指した。イリーニは覇道ではなく王道をもって他国との関係を結び、豊かな資源とそれに裏打ちされた経済力によって大国に名を連ねる国である。かと言って武力に劣るかというとそうではない。資源として産出される様々な特性の魔力を帯びた「魔石」と、豊かさからくる余裕から充実している学習や鍛錬の手段、それを補佐する政策などによって育てられた有能な人材により、他の大国に引けを取らない武力をも有している。もし万が一、イリーニ共和国がどこかの国と戦端を開くことがあっても、どこが相手であろうと互角以上の戦いをするであろう、と言うのが定説であった。


クロノス達がたどり着いたのは、そんな平和な国にあって特にのどかな、アネメロス村という小さな村だった。道中、クロノスが山で狩り集めた食糧が尽きて困っていたところを、赤髪の少女ーーカロラ・ドルチェに発見され、そのままドルチェ家にお世話になることになった。ドルチェ家の主、アルド・ドルチェ(おう)は村で一番、国内でも有数の資産家であり、その妻ナトゥーラは自然と同調し魔石を使わずに様々な性質の魔力を使いこなすという特殊な力を持っていた。ナトゥーラの力は老齢に至ったことで失われたが、その力の一部は孫娘であるカロラに受け継がれており、特に"熱"を操る術に長けていた。カロラの両親は共にイリーニ共和国の国家警備隊として国に仕えており、カロラも同じ道を志し、今はクロノスが戦闘の稽古をつけている。クロノスの側としても、世話になっている恩を少しでも返すことと、自身の戦闘勘を損なわないようにする意味もあって、願っても無いことであった。彼女がクロノスを「師匠」と呼んで慕うのは、そんな事情があってのことである。


「しっかし、最初に師匠たちを見っけたときはビックリしたよなぁ。カタフィギオ帝国の現皇帝と、その懐刀(ふところがたな)で"軍神"と恐れられてた男が、やれ駆け落ちしたー! だの、やれ皇帝を(さら)ったー! だの噂が流れて来たところに、まさかの本人達が現れるんだもんなーっ」


しかも魔導防衛軍? だっけ? のリーダーまで付いて来てんだもん、流石のアタシも驚くぜ、とカロラが笑う。しかし実のところクロノス達にとっては笑い事でもなかった。


「アイオロスのやつ、結局まだ諦めてねぇんだよな……」

「うむ……。イアロスめ、クロノスに皇帝誘拐の罪を着せて国際指名手配するとは。いや、それ以上にわたしとクロノスの駆け落ち説の方が広まっていた方のが驚いたが」

「自分達が戦力を差し向ける余裕はない、あるいは割に合わない、との判断でしょうね。直接対決で敗北したわけですし、再び対決するよりは周りから追い詰めていく手を取った。……あの人らしいと言えば、らしいですが」

「駆け落ち説の方は、どうやらカタフィギオ帝国側でも意図せず広まった話のようだね。もっとも、そちらの方が君たちの真実に近いのだからある意味当然とも言えるが」

「実際にこの子達の様子を見ていると、疑う余地が無いものねぇ」


老夫婦ににこやかに言われ、クリスティアはまた少し、照れる。が、(なか)ばそれを誤魔化すようにして、アイオロスのスタンスを糾弾(きゅうだん)する。


「それはともかく、イアロスめ。わたしを誘拐した、としてクロノスを指名手配しておきながら、すかさず次の皇帝即位に向けて根回しをしておったとは。どういうつもりだというのだ」

「まぁそりゃ、皇帝不在の状態を続かせるワケにもいかねぇしな。……クリスを復帰させるつもりもねぇことは明らかだから、新皇帝の即位に関しちゃ以前から画策していた通りなんだろうが」


決戦後、皇帝クリスティアがクロノスと共に居なくなったことが明らかになってから程なくして、カタフィギオ帝国では新皇帝が即位したそうだ。後から聞いたその皇帝の名は、「クリスティア暗殺計画」の時にクロノスがアイオロスから聞いた男の名と一致していた。


「あの名高いイアロス騎士団の団長さんねぇ。師匠達の話を聞く限りじゃ、どうにもいけ好かねぇヤツには違いなさそうだな」


興味なさげにカロラが言った。しかしその後すぐにニィ、と笑みを作って一枚の紙をクロノス達の前でひらひらと振る。


「ところでさ、師匠。面白そうな話があるんだけど、聞かないか?」

「そりゃぁ話は聞くけどよ。……なんだそれ、『元首からのお知らせ』?」

「結論から言うと、イリーニ共和国への仕官のチャンスだ。アタシは目標そのものだからもちろんとして、師匠達も正式にイリーニに仕官できればカタフィギオから狙われにくくなるだろ?」

「まーー待て待てカロラよ。順を追って話してくれ。イリーニへの仕官のチャンスとは、どう言うことだ?」

「まぁ、とりあえずこれを見てみな」


カロラが手に持っていた『元首からのお知らせ』の紙をクロノスに渡す。そこにはこんな文字が書かれていた。


ーーシンパティア魔戦杯開催!!

ーーイリーニ共和国主催・アダゴニア王国協賛

ーー身分・経歴・年齢・国籍不問

ーー我こそはと思うものはその魔導の技を、己が武力を存分に示すべし

ーー開催地:イリーニ共和国・シンパティア島


そしてその後には、「魔戦杯」のルールが箇条書きにされており、最後に、


「ーー目立った戦功を見せた者には、主催国国家憲兵として仕官する権利を与える……」

「そういうコト! 身分も経歴も不問で国に迎えられることができるってワケだ!」

「イリーニ共和国はアダゴニア王国などの大国を含む多数の国家と同盟を結ぶ国……イアロス団長がアダゴニアと通じていることを考えても、仕官できれば手を出しにくくなるのは確かですが……」


要するに、クリスティアが皇帝時代にコロシアムでやっていたことと似たようなものである。身分の獲得を餌に、自国の力を示すとともに、紛れてくる不穏分子を始末する。

クリスティアがクロノスという武力をもって不穏分子の流入を防いでいたところを、イリーニ共和国はその国家背景と魔戦杯そのものの厳密なルール整備によって防ごうとしている、というところであろう。


「ふむ。少々キナ臭さは感じるが……チャンスと言えばチャンスなのであろうな」

「ん? キナ臭いって、どの辺が?」


頭にハテナを浮かべるカロラに、クロノスが口を挟む。


「条件が完璧すぎるってことだろ。今のオレたちを狙い澄ましたかのような好条件だしな」

「とは言え、イリーニ自体にもわたしたちを炙り出す利点はある。まず最大の利点として、大戦力であるクロノスを高確率で自国戦力として迎えられること。そして……これはあまり快くないが、わたしの存在に政治的利用価値がある可能性があること」


指名手配であるクロノスを迎えることに関する問題は、事前に身分経歴不問と銘打っておくことでギリギリ回避できようし、イリーニの国家背景を考えれば充分であろうな、とクリスティアは続ける。


「最後の懸念として……身分不問を良いことに、イアロス自らがわたしたちを潰しにくることだが」

「それは……ないでしょうね。あの人の思想なら新皇帝が立ったばかりの今は外のことより内堀を埋めることに専念するでしょうし、やるとしてもせいぜい騎士団員を派遣してくる程度でしょう」

「そもそも、あんたら一回ソイツを倒して国を出てきたんだろ? 組めば勝てるってのなら問題ない。ホラ、ルールのここんとこ、見てみろよ」


カロラが指差した部分を順に見ると、一回戦は四人一チームでのサバイバル戦。二回戦、および決勝トーナメントでは個人戦となるが、相手を殺すのは禁止な上に重い罰則が設けられている。


「あー。……こりゃ、本格的にオレたちを釣り上げたいだけのような気がしてきたな」

「仮にイアロスめが根回しをしていようとも、数多の同盟国を有するイリーニが対カタフィギオ間……広めに見積もってもカタフィギオ・アダゴニアの二国との間の関係のみをあまりに強化するような策を打つ可能性は低いしな」

「唯一、クリスちゃんの身柄の政治利用が懸念ですが……いざという時の保険のため、と考えた方がとりあえずはしっくり来そうですね。そもそも、すでに皇帝の座を手放した以上対カタフィギオくらいしか有効打にはならないですし。カタフィギオ、イリーニ両国とも現在は対外的には保守的なスタンスですし。……ここは"王道と和平の国"を信頼してみますか」


うーん、と唸りながらも結論を提示したイーを受けて、クロノスがよし、と頷いた。


「爺さんと婆さんにゃすげぇ世話になったが、そもそもオレたちだってずっとここで隠れてるワケにもいかねぇしな。色々考えはしたが、結局の所は堂々と出て行けるチャンスがあるってんなら出て行ってやろうじゃねぇか、って感じだな」

「うむ。クロノスがそう言うなら、わたしはクロノスの居場所として側にあるだけだ」

「そして私はそんなクリスちゃんと"共にあるもの"……なんだかんだで、この結論は最初から決まっていたのかもしれませんね」


それぞれが自分の在り方に基づいて改めて結論を出す。その結果を聴いて、カロラがパンッと手を打った。


「おっし! そう来なくちゃな。これで参加条件も整ったワケだ!」

「参加条件?」

「さっき見せただろ師匠。一回戦は四人一組で一チームだ。そもそも四人集めていかねぇと参加できねぇんだよ。現地調達って手もあるが、不安すぎるしな」


そう言って、カロラはもう一枚の紙を取り出す。紙には『シンパティア魔戦杯参加申込書』とある。必要事項はあらかた記入されているようで、あとは一番下にある四人分の署名欄にそれぞれの名前を書くだけのようだった。


「準備がいいこった」


やや呆れながら、クロノスが苦笑する。


「ーーシンパティア島。かつて、アダゴニア王国とイリーニ共和国の間で同盟国としての協定が結ばれた地。今の領有権こそイリーニ共和国になっているけど、実質はアダゴニア王国との共同管理になっている所だね。さして大きくないが、島全体がジャングルになっていて、その中心部にコロシアムが設立されていると聞く。……まさに、魔戦杯にうってつけの地というわけじゃな」


話がまとまったのを見て、それまで黙って見守っていたアルド翁が語り出す。そして、四人の顔を一人ずつじっくりと見つめた後、ただ一言だけ、その決意を確かめるように言った。


「……行くんだね?」

「ああ。爺さんと婆さんにはマジで助けられた。この恩はいつか返すから、待っていてくれ」


クロノス・アーレス。


「短い間ではあったが、ここで教わったこと、過ごした時間、わたしは決して忘れはせん。クロノス同様、時期が来たら恩返しに来ると約束しよう。……まことに、世話になった」


クリスティア・サンクトム。


「あなたがたは困っていた私たちに色んなものを与えてくださいました。感謝してもしきれないくらいです。必ずや、みなさんをお守りし……このご恩に報いることを誓います。本当に、ありがとうございました」


イー・スィクリターリ。


「んじゃまぁ、ちょっとブチかまして来る! アタシも早く父ちゃん母ちゃんに追いつかなきゃなんないからな。いい知らせ、待っててくれよな!」


カロラ・ドルチェ。


ここに、四人の戦士が集まった。カロラの持つ『シンパティア魔戦杯参加申込書』には四人分の名前が書かれている。参戦の条件は、整った。

と、そこに、先程からなにやら探し物をしていたらしいアルド翁の妻、ナトゥーラが、四つの小さな鉱石を一つずつ、クロノス達に差し出した。


「今の私じゃぁ大した応援は出来ないけどねぇ。せめてこれを持ってお行き。あなたたちに合わせて私が厳選した魔石だよ」


その鉱石は、一つ一つが淡い光を放っている。所有者の魔力を通すことで初めて力を発揮する通常の魔石とは違い、持ってるだけでもある程度の効果を発揮する、真の意味でお守りとしての力を持つ特別なものだ。


「クロノスさん。あなたには、"結界の魔石"だ。一度しか効果を発揮出来ないけれど、一度だけならどんな致命傷だってこの魔石が肩代わりしてくれる。あなたは攻撃のバリエーションは豊富だけど、防御が手薄だからねぇ」

「おおっと。こいつはありがたい。文字通りいざって時のお守りとして、肌身離さず持っておくぜ」


クロノスは白い光を淡く放つ鉱石を受け取り、(ふところ)に入れる。


「クロノスは"攻撃は最大の防御"を地で行くタイプだからな。私の"加護"もあるとはいえ、想定外の攻撃に対処できるのは安心だな」

「クリスティアちゃん。そんなあなたには、"放出の魔石"だよ。クリスティアちゃんはせっかく魔力が多いのに、瞬間の出力で損をしているからねぇ。これは、そんな魔力の出力をほんの少し、ブーストしてくれるものだ。そこまで大きな力は出ないけれど、持ってる限り効果があるからバカには出来ないよ」

「"ちりも積もれば"というヤツだな。ありがたく使わせてもらいたい」


クリスティアは、金色に淡く輝く魔石を受け取り、上着のポケットに仕舞う。


「イーちゃん。あなたにはコレだ。"反射の魔石"。防壁を貼った時、それ自体が崩されない限り、少しの割合で攻撃を反射する効果を付与するものだよ。これも力としては少ないものだけど、あなたの盾はとっても硬いから、きっと役に立つはずさ。防御展開時に作用しやすいよう、ブレスレット型にしておいたから、手首につけておくといいよ」

「ああ、本当に……重ね重ねありがとうございます。なんとお礼を言ってよいやら……」


頭を下げるイーに、ナトゥーラは気にしなくていいんだよ、と告げて、魔石を渡す。淡い青の光を放つそれを、イーは腕に取り付けた。


「ばーちゃん、アタシのはいつものか?」

「そうだねぇ。はい、新しい"炎熱の魔石"だよ。熱を炎に変換し、込めた魔力に応じて熱量を増加させるヤツだね。いつものことだけど、酷使するとあっという間に砕け散るから、配分は考えて使うんだよ」

「はーい! ありがとー!!」


カロラはペンダントになっている、赤い光を帯びた魔石を受け取ると、首からかけて服の内側に石を入れる。


「さーて、これでホントに準備万端だな! やるぞ、皆!」


テンションを上げているカロラに、三人も(うなず)きながら答える。条件は揃え、準備は万全に。

これから数日の後、改めて老夫婦に挨拶をした一行は、戦いの地・シンパティア島へと出発するのだった。

どうも、T-Mです。

第1話から読んで下さっている方は15度(正月特別編も入れると16度)もお付き合いいただきましてありがとうございます。

今回初めましての方は、ぜひ本編第1話から読んで頂けると幸いでございます。


というわけでChronuKrisークロノクリスー 本編終了後の後日談、第1話です。

国抜け後の一行のちょっとした日常やら説明回やらを兼ねた感じに。

というかなんか構想練ってるうちに無駄に膨らんで予想以上に長くなりそうで困惑してるよどうなってるの!!(僕の頭が)


この後日談第1話も想定の倍ほど長くなってるし、おかげで今回でたぶん無事に累計10万文字突破してるし、何かとやばい。

序盤の戦闘で無駄にテンション上げないようにしなきゃ……コンパクトに行かなきゃ、という謎の焦りに囚われております。

場合によっては後日談じゃなくて第二部にしたほうがいいんじゃ無いか……?


ともあれ、途中でヘタれることのないよう、無事完全完走出来るよう頑張りたいと思います。

よろしければ、最後までお付き合いいただけると幸いにございます。


さて、今週は例のチラ裏コーナーはナシです。

新キャラ出たけど戦ってないし、今回の話自体がほぼ設定説明回ですし。……なのに長いのは本当すみませんです。nana側の文字数も何気にギリギリに近いっぽいのもあるので、まぁ是非もなし、なのです。


それではまた次回、無事にお目にかけることが出来るよう願いつつ。

今回もお付き合い下さった皆様、本当にありがとうございました。


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