3 骸骨と狼の自己紹介
『そうそう、その骨だよ、骸骨だよ、俺。あんたが齧っている分にはまあいいけど、折られると困るんだよね、その骨。たぶん』
『……すまない。骨と会話ができるとは思わなかった。貴様はいったい何なんだ?』
『何、と言われると一言では表せない気がするなー。合体するからちょっと待ってくれよ』
『……合体?』
俺という骨と会話できるとわかると、灰狼は口にくわえていた俺の大腿骨をそっと地面に置いてくれた。なんだ、意外に紳士なやつみたいだ。……雄だよな?
狼が見守る中俺が気合を入れると、俺という骸骨を構成するパーツがカタカタと音を立てながら集まってくる。そうして少しずつ骨格標本のように俺が組み合わさった。
……普通にホラー映像だな、これ。
完成した俺は自分の意志で身体を動かしたりできるようだ。自分の腕を回してみたりして確認する。骨だけだから皮があったときには無茶な動きもできるようになっていて興奮する。
嬉しさのあまり飛び上ったら着地の衝撃で足の骨がバラバラになって崩れ落ちた。……折れてなくてよかった。
バラバラになった足をもう一度組み合わせて立ち上がると、狼が呆れたような目でこちらを見ていた。狼なのに感情表現が豊かそうなやつだな。少しだけ羨ましい。
『落ち着いたか、骸骨よ』
『骸骨……まあいいか、それで。昔の名前を言っても意味がないしな。それで、俺はあんたをなんて呼べばいい?』
『……我に名はない。我は世界獣。世界の終焉を告げるモノだ』
『うーん、世界獣、せかいじゅう……。ああもういいや、ここには俺とあんたしかいないし。狼で通じるだろ』
『構わん。さて、骸骨。貴様は何だ?』
『それがわかりゃ苦労しねーよ』
俺はここまでの経緯を狼に話していく。前世がこことは違うということも隠すことじゃないし、俺は骸骨でこいつは狼。いまさらそこに不思議要素のひとつやふたつ加わったところで今更だろ。
それにしても世界獣に、世界の終焉。ファンタジーで物騒な話題だ。
まあ明らかに人間とは敵対しているだろうな。狼のそういう場面も見たことがあるし。
もしかして俺は悪役側に転生したのか? とも思ったけど、俺が骸骨な時点でそれも今更だ。この狼はボス級だし、俺のこの見た目で人間と仲良くなれるとは思っていない。
そもそもこの謎会話が人間相手に伝わるかも怪しいんだ。俺が人間側に降るメリットがかけらもない。
まあとりあえず俺の状況は伝えたし、次はこっちが質問する番だ。