005
(追けられてるな。人数は......一人か。ギルドからずっとだから、あのジジイの差し金か、はたまた報酬の横取りか、ただの因縁をつけようとするバカか。わからないが、気配消す気ゼロの土素人か。ジジイの差し金ならこんな土素人使わねぇな。報酬の横取りにしても薬草の納品なんてガキでもできるレベルだからないだろう。ならーーーただのバカか)
そこまで考えると雄大は一本細い路地に入り、建物と建物の壁に手をついてそのまま5mほど登った。
数秒後、赤い髪のショートカットの少女が走ってきた。
「!?あれ!?確か、ここにーーー」
「入ったはずなのに、どこに行ったんだ?か?」
雄大は音もなく少女の後ろに降りていた。
「なっ!?いつのまに......」
「下手くそな尾行して、俺に何か用か?」
「ふ、ふん!わ、私は右も左も分からなそうな新人に手を貸してあげようと思ってーーー」
「必要ない。帰れ」
「な、何なのよ!私は一年も先輩なのよ!」
「ちなみにランクは?」
「Fランクのコハクよ!」
コハクは、ドーンとない胸を張った。
(Fだと!?一年も冒険者をやって、どうやったらFのままでいられるんだ?適当にこなせば少なくともEにはなるはずだぞ。こいつーーーなんか持ってるな)
雄大は、新しいおもちゃを見つけたように笑った。
「ふふふ、まだFだけどね、今、ギルドでEに近いのは私よ!つまり!私はあなたよりスゴいの!わかる?」
「あぁ。わかるよ」
(一年もFやってるなんてスゴい。Eなんて夢のまた夢なんだろうけどな)
「本当に!?」
「本当だ」
「ふふふ、私今日、とっても気分がいいわ。依頼を手伝ってあげるわ!何の依頼かしら?」
「薬草の納品だ」
「え?」
依頼の内容を言うと、コハクの顔が真っ青になった。
「どうした?問題があるのか?」
「や、薬草の納品ってあれよ!街を出るのよ!」
(何を言っているんだ?こいつは)
「何を当たり前のことを言っている」
「外にはね!魔物や獣が出るのよ!知らないの!」
「だからなんだ?」
「襲われたらどうするのよ!」
「返り討ちにするだけだ」
「そんな......そんなの危ないわよ!まだ引き返せるわ!止めなさい!」
(なんだこいつは。言ってることがおかしすぎる。まさか、こいつ.......)
「お前、外に出るのが怖いのか?」
「!!??そ、そんことないわよ!あなたが心配で言ってるだけよ!......私、用を思い出したわ。また今度、会えたら会いましょう」
そしてコハクは震えながら去っていった。
(なんだったんだ?まぁ、いい。あいつにはまたいずれ会うことになる。確実に、な)
そして雄大は街の外へと歩き始めた。
(さーて、気になることができたし、やるか)
「もし、ここで俺が火竜を狩ってきたらどうなるか、っな。報酬が貰えるか、貰えないか。気になるしな。......てか、その辺のことってギルドの規約の本を読めば分かったかもしれないな。だが、百聞は一見にしかず、って言うからいいか」
そして、四時間後
「......何でここに来たのかな」
「完了報告だ」
雄大は、ギルド長の部屋に来ていた。
「なんで私のところに来るかな?受付に行きなよ」
「俺に対応した受付嬢はギルドの者なら誰でも構わない、って言ったからな。試しに来てみた」
「...今回だけだよ。で、薬草の納品だったよね?」
「やっぱ依頼知ってるのか」
「まぁね。で、けっこう長かったね。何百束採ってきたんだい?」
「さすがにそこまで採ってない。50束だ」
雄大はバッグから薬草を取り出した。
「へぇ、よかった。君が常識的範囲でやってくーーー」
「あとついでに、火竜を狩ってきた」
「え?なんで?」
「なんで、って言われてもな。ついでに狩ったらどうなるか、気になったからだ」
「......規約読んでないのね」
「まぁな」
「一応、報酬は払えるよ。ただね、あまりやってほしくないかな。こっちにも準備があるからね」
「そうか、わかった。討伐の部位が分からなかったからとりあえず目立っていた角を折ってきた。あと、爪を剥いで、牙を抜いてきた」
「......討伐の部位は角だよ。一応、爪と牙も買い取りできるからするよ」
「頼む」
「あー、端数になってメンドクサイから切り上げで13万Gでいい?」
「相場がわからんから、とりあえずいいぞ」
「あと、君のランクのことなんだけど、Aまで一気に上がるけど、どうする?」
「なんでいきなりそんなに上がる?」
「君が倒した火竜、ていうか、竜種はね、Aランクの冒険者が6人パーティで倒すような相手」の。それを君は一人で、しかも無傷でたおーーー
「無傷じゃない。腕に炎がかすって火傷した」
「......それね、火竜相手だと無傷と同じだから。で、どうする?」
「いや、Fのままで頼む。上がるには数をこなす必要があるんだろ?」
「まぁ、例外があるけどね」
「じゃ、とりあえずそういうことで。じゃあな」
雄大は、そう言い残しギルド長の部屋を後にした。
~雄大の小学生の頃~
「先生ってさ、なんで結婚しないの?」
「うーんとね、まだいいかな?って思ってるからよ」 「30越えてしてないって......行き遅れてるよね」
「そんなことないわよ。先生だってまだまだこれからなのよ」
「先生ってさ、彼氏居ない歴=年齢の人だよね」
「......違うわよ。先生だって彼氏の一人や二人できたことあるわよ」
「嘘だよね。変な間があったし、嘘つくの下手だね」
「...先生はね、雄大くんくらいのころに大きくなったら結婚しよう、って言ってた人がいるの。その人を待ってるのよ」
「絶対忘れてるね。覚えてたとしても黒歴史で忘れたいだろうね」
「.........ぐすっ」
そして翌日から、その先生は学校に来なかったそうな...