003
雄大はまたしても真っ白の空間で目を覚ました。
「...あなたね、城を出るまででいいからおとなしくしててって私言ったわよね?」
「暴れてはないだろ。一回目と比べると」なりおとなしい。つーか、気になったんだ。仕方ないだろ
「......ちなみにあの後だけど、あの美少女、もといお姫様が直々に言葉を教えるわ」
「お姫様だったのか。ふむ、俺のことだ。恐らくーーー」
「3ヵ月経ってもいっこうに変わらないあなた。お姫様は過労で倒れたわ。そこからはーーー、一回目とほぼ一緒よ」
「なるほど、やはりそうか
「......次で最後です。次に関しては連れ戻すこともできません。一回送るのに力をかなり使うのです。私はだまって見ることしかできなくなります。なので、少しでいいです。少しでいいので自重してください」
「そうだな、気が向いたらな」
雄大再び光に包み込まれて消えた。
「よくぞ来た、勇者達よ」
雄大が目を開けるとそこには豪華な服を来た若い男が偉そうに座っていた。
(ん?達?だと?)
雄大があたりを見渡すと困惑した表情の青年と、少女がたったいた。
青年の見た目は大学生くらいで上下ジャージの完全に部屋着のような格好をしていた。
少女よ方は、真っ白のワンピースを着ていてどこかのお嬢様に見える。
(なるほど、春子さん、やってくれたな。わざと複数召喚の所に送ってこいつらを使って抑止力にでもするつもりなんだろう。ん?そういえばテンプレで言うと、1、王が名乗る、2、こちらが名乗る、3、王から説明を受ける、4、こちらに判断を委ねる、と、いったところだろう。もし、1の段階から崩したら、王が名乗る前にこの場で立ち去ったらどうなる?......たぶん焦るだろうな。でも、情報は欲しいよな。ま、なんとかなるだろうしとりあえずどっか行くか)
そして雄大は回れ右をしてそのまま歩きだした。
「我はこの国の王、名はーーーって、少し待てそこの小僧。なぜ立ち去ろうとする。いくらなんでも早すぎるぞ。せめてこちらの情況を聞いてからだろ!」
「え?」
「え?」
雄大の予想外の反応に同じ言葉を返してしまった国王。
すると、一緒に召喚されたであろう青年が、
「えっと、情況くらい聞きません?てか、名前くらい聞きません?」
「なんで?」
「なんでって、これってあれですよね?いわゆるーー」
「だろうな。いやさ、めんどくさそうじゃん」
「せめて名前だけでもーーー」
「モブの名前聞いても意味ないな。俺さチュートリアル流すタイプなんだよ」
「......
「さらばだ」
そして雄大は意気揚々と城を後にした。
その場にいた全員がしばらく動けなかったという。
雄大は城下町を一人歩いていた。
周りには様々な店が並んでいた。みたことのない果物、や野菜。香ばしいいい臭いを漂わせている焼鳥風の店。剣や槍などが店頭に並んでいる武器屋。
(ふむ、こうしてみると異世界に来た、って感じがするな。ん?なんだ?あれは)
雄大が目を向けると中世の酒場のような場所があった。
「すまない、あの建物はなんだ?」
「あぁ、あれかい。お兄さんはこの国初めてなんだね。あれは冒険者ギルドだよ。冒険者は荒くれ者も多いけどね、ランク上位の奴らがまとまてくれてるからね。私もたまに依頼させてもらってるけど、いいところだよ」
「そうか。ありがとう」
雄大は近くにいたおばさんに話を聞き、そのまま建物に入っていった。
雄大は受付へと向かった。
「ようこそ、ギルド、サンドクレスト支部へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者の登録をしたい」
「新規登録の方ですね。では、さっそく登録試験がありますがよろしいですか?」
「具体的に試験は何をする?」
「試験管と模擬戦をしていただきます。武器はこちらが用意した刃のつぶれた物を使っていただきます。試験管に認められることができたら合格です。合格の基準等をお聞きしますか?」
「いや、いい」
「では、登録試験の会場にお連れします」
受付嬢は、雄大を地下へと案内した。
「へぇ、地下にあるのか」
「はい。ちなみに地下は本来訓練場として開放されています。冒険者の方なら自由化に使用できます」
「へぇ」
階段を降りきるとそこにはテニスコート4面分ほどの空間が広がっていた。
そこに5人ほどの男が待機していた。
「では、あそこでお並びになってお待ちください。もう少しで試験管が参りますので」
受付嬢は一礼すると、階段を上がっていった。
(とりあえず......言われた通りに並ぶのは癪だな。近くまで行って寝るか)
雄大は5人の近くまで行くと、横になった。
「「「「「!!!!????」」」」」
突然横になった雄大に5人は驚きを隠せなかった。
(もう少しでって言ってたけど、どのくらいなんだろうな。まぁ、いいか)
すると、身長2mほどの屈強な男が入ってきた。
「おう!待たせたな!今日の希望者は6人だってな!ん?おい!なに寝てんだよ!」
「試験管か?なんでって、言われてもな。寝るなとは言われてないし、おまえが遅いんだろ」
「ふはははは!!それを言われると弱いな!!」
すると男は、豪快に笑った。
「俺はBランク冒険者のストーだ!今回初めてだからよろしく!それじゃあ、一人目からかかってこい!」
「は、はい!」
一人目の男は剣を手に取った。それをみてストーも剣を手に取った。
「はぁぁー!!」
「振りがデカイ!もっとコンパクトにしろ!」
「はい!てりゃ!)」
「一撃が軽い!不合格だ!」
「くっ、ありがとうございました...」
一人目の男は剣を置いて立ち去った。
「不合格!」
「くそっ......」
そして五人目の男が不合格となった。今回、合格者はでていない。
「ラスト!......お前か、武器はなんだ?」
「おっさんの得意な武器でいいよ。合わせてやる」
「ふはははは!!そうか!!ならこいつでいかせて貰おうか!」
するとストーは拳を握りしめた。
「拳ね、おれは蹴りや体術も使うけどおっさんも使うよな?」
「当たり前だ!!いくぞ!」
そしてストーな走り出した。
(くくくく、初めてだな。ここまで差がある相手と戦うのは!)
ストーは本能的にわかっていた。どうあがいても雄大に勝てないことが。
「ふん、悪くないが良くもないな。もう少しでよく狙ってみろ」
「おら!」
はたから見るとすごいラッシュでも、雄大には、かすりもしていない。
「くそ!これでどーーー」
「もう疲れた
ストーの蹴りを雄大は軽くかわし、そして、右足の甲をストーの後ろ首にかけて、
「『獅子落とし』」
振り抜いた。
そしてストーの頭は地面にめり込んだ。
「まぁ、こんなもんでいいだろ」
そんな雄大の声はストーに聞こえていなかった。